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Apostles12~罪を背負いし少年の復讐譚~  作者: 尖閣諸島諸島警備隊第6小隊隊長代理
一章 対[火]の使徒
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エピローグ~エレンの末路~

影の薄いエレン君の話です。


その少年は、何かから逃げるように組織の建物の地下へ地下へと、降りていく。

実際、逃げていた。

使徒という存在の強大さに気付き、組織を裏切って地下へと逃げていた。



本当に馬鹿馬鹿しい。

あんなヤバい奴と戦うだなんて聞いてないぞ。勝てるわけがない。


年齢の割に聡いエレンにはそれが分かっていた。

この組織の戦力でなぞ到底太刀打ち出来る相手ではない。

そう分析していた。


だが、悪いことばかりではない。

この戦いで兄が死ねば、エルロード家の次期当主は僕になる。

嫌いな兄の言いなりにならなくて済む。

そして貴族の爵位も継ぐことが出来る。

正に一石二鳥だ。

……待てよ。

そう言えば、あのいけ好かないシンとかいう奴も戦闘に参加するのか。

それで奴も死ねば…一石三鳥じゃないか!

よし。戦闘が収まればこんなところ出ていって家に帰ろう。

あぁ、さっさと死んで終わってくれないかなぁ。


溢れでる笑いをこらえて、エレンはさらに地下へ降りていく。

そして、遂に最下層までたどり着いた。


ここまでくれば一先ず安心だな。

戦いが終わるまでここで寝てるか。いや、こんなゴツゴツの床では眠れないか。


最下層の近くの階層は、全く整備されておらず、岩石が剥き出しの洞窟のような空間だった。



その時、本来なら有り得ない子供のような幼い声が、エレンに語りかけてきた。


【やあ、こんにちは】


直接頭の中に響くような声。

奇妙な感覚にエレンは眉根を寄せながらも、気のせいだと切り捨てる。


【ねえ。聞いてるの?そこの君だよ】


その言葉を聞くと同時、エレンは背後に気配を感じて、警戒するように振り返った。


「誰だ!!」


そこには、まだ10歳にも満たないような、幼い少年が立っていた。


【僕は星。突然だけど、君、僕の配下になってよ】


威圧のつもりで大声を出したにも関わらず、目の前の幼い少年は変わらぬ調子で語り続ける。

だが、次に発した言葉が、少しエレンの怒りを刺激した。


「おいお前。この僕にその口の聞き方はないだろう。俺はお前よりも年上だ。もっと敬え」

その言葉にも、幼い少年は臆することなく口を開く。


【さっきの君の心。見てたよ。君みたいなクズがまだ居てくれて助かったよ。ある意味これが一番酷い罪だからね。探すのにひどく苦労したよ】


その瞬間、エレンは自分の怒りが爆発したのが分かった。

このガキは今何て言った?

許さない。殺してやる。


「おいガキ。良いことを教えてやろう」


エレンは、腰にかけた剣を鞘から抜きながら言う。


【何?】


「この場所にはな、人が一切出入りしない。誰もここで起きたことには気付かない。この意味が分かるか?」


【全然。ていうかそんなことどうでもいいからさ、君、僕の配下になってよ】


「ふっ、無知な貴様に教えてやろう。ここに人が一切出入りしないってことはなぁ!お前がここで死んでも誰も気付かないってことだよぉ!」


そう言って、エレンは幼い少年に斬りかかった。


幼い少年は避けなかった。命中したはずだ。

なのに、手応えが全く無い。

肉を裂く感覚も、骨を断つ感覚も一切感じない。


【一応言っとくけど、僕は思念体だから攻撃できないよ?馬鹿なのかな?】


降り下ろした剣は、幼い少年をすり抜けていた。


「黙れ!黙れ黙れ黙れ!それはお前も同じことだ!お前も俺に触れること出来ないなら同じ――ぐああああ!!!」


だが、次の瞬間、叫びを上げながらエレンは頭を押さえて地面を転がり回った。


幼い少年は、ため息を吐きながら言った。


【君は触れることが出来ないからといって攻撃が出来ないとでも言うのかな?無知なのは君の方だよ】


パチンッ、と幼い少年は指を鳴らすと、エレンの叫びも収まった。

攻撃を解除したようだ。


【で、どうするの?これを後一週間ぐらい続けて精神崩壊させてあげることも出来るけど、配下になる?ならない?】


その言葉に、エレンは顔を青ざめさせ、矢継ぎ早に答えた。


「な、なります!何でもします!」


【そうかそうか。ふふっ、クズで助かったよ】


幼い少年は笑みを溢し、言葉を紡ぐ。


【じゃあ、君には"裏切り"になってもらおうかな。君みたいなクズにピッタリだよ。使徒達の中で唯一自我を保つことが出来る"裏切り"は貴重だよ】


「あの、僕が使徒ってどういうこと…ですか?」


【ああ、それはね。使徒が司る罪に対応した罪を犯した人間と使徒を合成することによってさらに強くなれるってことだよ。君は組織を裏切った。だから君は"裏切り"の使徒になってもらう。それじゃあ行くよ?】


言い終わると同時に、パチンッ、と幼い少年は指を鳴らした。


それと同時に、エレンは体の内側から何かに浸食されていくのを感じる。

漆黒の霧のようなものが体から滲み出てきて、それが体を形作っていく。


しばらくして現れたのは、三日月型に細められた目と口の仮面を着け、黒い床に届きそうな程長いローブを纏った人のような生物。


[裏切り]の使徒だ。


【これからよろしくね。ああ、一応まだ人間には見つからないでね。それ以外なら自由にしてていいから】


そして、幼い少年は消えていった。




力が溢れてくるのを感じる。

今なら何もかも滅ぼせそうな気がする。

俺は[裏切り]の使徒。


エレン・ヴィトレイアー。


次からは、第二章の執筆に入ります。

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