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Apostles12~罪を背負いし少年の復讐譚~  作者: 尖閣諸島諸島警備隊第6小隊隊長代理
一章 対[火]の使徒
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"ハウザー" side:[火]の使徒

[火]の使徒視点です。

何で皆、僕を避けるんだろう?

ちょっと前まではたくさんのお菓子やおもちゃを貰ったりしてたのに、急に皆僕を避けるようになった。

僕は、理由が分からなかった。

だから、お母さんに聞いてみたんだ。

そしたら、お母さんは僕にこう言ったんだ。


――"化け物"!近づかないで!


僕は、また分からないことが増えた。



その翌日、僕は家族全員で散歩に行ったんだ。

たった一人だけ、今まで通り僕に優しくしてくれた兄さんと手をつないで、晴れた空の下を楽しく。

しばらく歩いていたら、火山が見えてきた。

ここまで来たのは初めてだったから、僕も少し嬉しくなったんだ。

だから、つい兄さんの手を離して、火口に向かって走っていたんだ。

その時だ。


――今だ!


――あの"化け物"を殺せ!!


――突き落とせ!!


僕は、お父さんに火口の中に突き落とされてしまった。

その時、同時に振り返ろうとしていたから、落ちる直前、見えてしまったんだ。

お父さんとお母さんの、まるでお化けでも見たような怖い顔。そして、いつの間にか二人の後ろにいたたくさんの村人。

僕は、分かったんだ。

皆が何で僕を避けるのか。"化け物"と呼ぶのか。


皆、僕に死んで欲しかったんだ。


そのことに気付いた僕は、マグマに落ちていく中で泣いたんだ。

兄さんも、僕に死んで欲しかったのかな…?


最後に、大好きな兄さんのことを考えて死のうと思っていた時だった。


まるで、体が内側から燃やされているような、耐え難い痛みに襲われたんだ。

本当に痛くて、苦しくて、いつ死ねるのかが待ち遠しかった。


でも、僕は死ねなかった。


マグマの熱で骨が露出しても、一瞬の内に元に戻ってしまう。

眼球が蒸発しても、四肢が溶け落ちても、瞬きする間に再生してしまう。


その時、どれが"痛み"なのか分からなくなってきた中でふと思ったんだ。


――僕は、"化け物"だったんだ……





どれくらい経っただろう。


痛みももはや苦にならなくなり、叫び声だけが他人事のように聞こえるようになってきた時、それは起こったんだ。


突如、僕の目の前は真っ白になった。


それからしばらくして、頭の中に直接声が聞こえてきたんだ。


【やあ、僕は星だよ。突然だけど君、僕の配下になってよ】


良く分からない。一体誰なんだろう?配下ってどういうこと?


【僕は星だって言ってるじゃないか。配下はそのままの意味だよ】


伝わってる?考えていることが分かるの?


【そうだよ。全て筒抜けさ】


分かるのか…いや、それよりも今は――


【君の聞きたいことは分かっているから、僕の話を聞いているだけでいいよ。一々会話するのも面倒だし】


……分かったよ。


【まず、ここは異空間でありマグマの中ではない。その証拠にほら、もう痛みは感じないだろう?】


ホントだ。気づかなかったよ。


【へぇ、痛みに気付かない程マグマに浸かってたんだ。で、君をそこに突き落としたのは君の両親、そして村人達だよね?どう?復讐したくない?自分に耐え難い苦痛をもたらした奴等を、絶望の底に突き落としたくない?】


それは…分からないんだ。僕は今怒ってるのか、どう思ってるのか、全然分からない。


【そう。でも、僕なら分かる。君は今、とっても怒ってる。それはもう自分を貶めた奴等を皆殺しにしたいと考える程。今は感情が麻痺していて良く分からないだろうけど、確かに君はそう思っている。そして、僕の目的は人間達を排除することだ。この意味を踏まえた上で、もう一度考えて欲しい。君、僕の配下になってよ】


僕、まだ小さいから良く分からないけど、お母さんが困っている人は助けなさいって言ってた。

いいよ。君の配下になる。


【ふ…ふっふふ…これで、あの人間共を抹殺することが出来る。簡単には死なせてやらないからな。じわじわと、ゆっくりと時間をかけて絶望の中でなぶり殺してやる】


あの、どうかした?


【いや、何でもないよ。じゃあ始めようか。あ、言い忘れてたけど、僕の配下になったら意思は無くなるから。これから宜しくね。[火]の使徒君】


…え?待ってよ。話が違――



僕の意識は、そこで途絶えた。









僕は…今…どうなってるんだろう?

体が動いている感覚はあるのに、何も見えないし聞こえない。

それに、何も覚えてない。僕は死んだんじゃなかったっけ?

暗いよ、怖いよ、助けて……兄さん……


その時、僕の右手が何かを掴むように動いたんだ。

それと同時に、不意に視界が開けた。

まるで灯り一つ無い洞窟で、出口に差し掛かってきた時、明かりが射し込んできた時のような。


――何だ…これ…何なんだよこれ!!


でも、僕の目に映ったのは、この世の地獄とも言えるような衝撃的な光景だった。


辺り一面に轟々と燃え盛る炎。抉れ、捲れ上がり、所々凍土と化している大地。


――何が…何が起きてるんだ…!?


その時、やっと気付いたんだ。

自分が掴んでいるものに。


――兄さん……


良かった。生きていたんだ。ずっと、会いたかった。

また、あの時のように、兄さんと手を繋いで散歩がしたいな――


この時の僕は、気付いてなかったんだ。

自分の手が、もう人間のそれじゃなくなってることに。

右手で、兄さんを掴んでいることの異常性に。

もう、自分の意思は無くなっていることに。



――あ…れ…?おかしいな…何で僕は…兄さんを掴んでいるんだろう…これは僕なの…?


気付いた時には、遅かったんだ。


体を動かすことが出来ない。


僕の右手は、僕の意思に反してピクリとも動かない。


嫌な予感がしたんだ。


何で、そう思ったのかは分からないけど、"これ"が自分の体がであることに変わりはないから、本能的に理解したんだと思う。


僕は…僕はもしかしたら…


――兄さんを…殺そうとしている


止めて…ダメだよ…そんなことは絶対にダメだよ!!

何で僕が兄さんを殺さなきゃいけないんだ!!

たった一人だけ、ずっと僕に優しくしてくれた兄さんを、何で殺すんだよ!!?

止まってよ!!何で止まらないの!?僕の体じゃないの!?ねえ――


その時、兄さんの口が、何か言葉を紡ぐように動いたんだ。


――ご…め…ん…な…?


次の瞬間、僕は、兄さんを殺していた。


僕の願いは…思いは届かなかったんだ。


――うわああああああああああ!!!


思わず、叫んでしまった。


――あ、ああ、う、ああああああああ!!!


僕は叫んでいる。叫んでいるのに、耳に入ってくるのは自分の声じゃなくて、変な鐘の音。


――兄さん!!兄さん!!うあああああ!!


僕は泣いている。泣いているのに、落ちてくるのは大きな炎の柱。


何で…何でこんなことに…何で僕は"化け物"なんかに…誰か…誰か僕を――


――殺してくれ…


【あーあ、意思が漏れてるじゃん。こんなんじゃ駄目だよ。君にはもっと殺して貰わないと困るんだからさ】


その時、僕の頭の中に、声が響いたんだ。

同時に、思い出したんだ。


"星"と名乗る人物に、配下に変えられてしまったこと。


――お前の…仕業か…?この状況は…お前が作り出したのか…?


【いやいや、僕がそんな悪いことするわけないじゃないか。紛れもなく君がやったんだよ、ハウザー君】


――ふざけるな…僕はこんなことは望んでいなかった。兄さんを殺したくなかった…


【おかしいな。何でこんなに意思が漏れてるんだろう?何があったのかな?まあいいや。君の言い分なんてどうでもいいし。じゃあ、もう一回意思を消すからね】


――待て…話はまだ――


そこで、僕の意識は闇に呑まれていったんだ。









視界が開けていく。

あれからどれくらい時間が経ったのかは分からない。

数分かもしれないし、数百年かもしれない。

でも、一つだけ、さっきと違うことがあった。

僕の手が、人間のものになっていたんだ。

つまり、そういうことだろう。

良かった。本当に誰かは分からないけど――


――僕を殺してくれて、ありがとう


でも、僕のやったことは許されない。

絶対に。


もう一度、兄さんと手を繋いで散歩がしたかった。


兄さんは天国に行くだろうから、もう会うことは出来ないよね。


当然僕は地獄行きだ。人を、殺したんだから。


その時、突然目の前に文字が現れたんだ。


《"煉獄の罪(クトゥグア)"を"罪を背負いし者(シン・グレン)"に委譲しますか?》


良く分からない。分からないけど、


――あの"星"を、倒してくれる。


そう、確信していたんだ。


――うん…するよ。


《確認しました。速やかに委譲を実行します》


その瞬間、体から一気に力が抜けてきたんだ。

何となく分かるよ。僕はもうすぐ地獄に行く。

たった一人で、今まで通り。


「ハウザー、こんなところに居たのか。あの時は本当にごめんな」


僕の耳に入ってきた声。

優しい、まるで包み込んでくれるような暖かい声。


振り返ると、微笑みを浮かべながら立っている兄さんが居た。

僕は無性に兄さんへ向かって駆け出したくなった。

でも、それは出来ないよね。

だって僕は地獄に行くんだから。


「兄さん。今までありがとう。僕は地獄に行くから、ここでお別れだね」


もっと一緒に居たい。

もっと話していたい。

もっと、もっともっともっと。


「何言ってるんだよ。俺はお前と一緒なら地獄でも何でも一緒に行ってやるよ」


――え?


「お前は昔から、一人で居る時はずっと泣いていただろ?そんなの見てられないよ。ほら、手を出せ」


僕は、兄さんに飛び付いていた。


「うわああああん!!ごめんなさい!ごめんなさい!兄さんごめんなさい!」


「泣くなって。俺の方こそ、悪かったな」


「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめ…ん…なさい!ごめん……な……さい!ご……め…ん…な…さい……………………………」




そして僕は、業火に飲み込まれた。













少しでも、

『面白いかも!』

『続きが気になる!』

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