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Apostles12~罪を背負いし少年の復讐譚~  作者: 尖閣諸島諸島警備隊第6小隊隊長代理
一章 対[火]の使徒
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不死身の使徒

楽しんでお読み頂けたら幸いです。

先程、男が両断した火の使徒は、太陽の光に包まれ微動だにしない。

シンは既に火の使徒を撃滅したものと思っていた。

だが、男は「あいつを倒すぞ」と言った。


まだ、油断出来ない。

奴はまだ、死んではいない。

それに、この程度で死なれては十分に怒りを晴らすことが出来ない。


――ゴーン


その時、何処かのお寺の巨大な鐘が鳴ったような音が、辺りに反響した。


――ゴーン、ゴーン


何の音だ、と考える間も無く、シンは男に地面に押さえ付けられていた。


「…伏せろ…!」


直後、轟音と共に、無数の巨大な炎柱が天と地に橋を掛けるように顕現する。

炎柱が地面に触れていた部分は一瞬にして融解し、地面に無数の穴を開けていた。


炎柱は次第に一点に向かって集束していき、それが消失したとき、


「…なるほど…無傷…か…」


中心に、無傷の火の使徒が居た。


さっきは無かった光で編まれた巨大な八対の翼が、一層神々しさを際立てている。

"神の裁き"という言葉が、シンの頭に浮かんだ。


男が動く。

怒りを解放し、氷で地面に開いた穴を塞ぎ、右手に持った氷剣を構えた。


ただそれだけで、使徒に数え切れない程の斬撃が刻まれる。


――見えない。


シンが視認出来たのは、男が"構えた"ということのみだった。


そして、一瞬の内に使徒は切り刻まれ、地面に崩れ落ちる。

圧倒的。

それほどまでに、男は強かった。

使徒の中でも特に強いとされる火の使徒を仮にも圧倒するなど、人の成せる御技ではない。

尤も、人ではないのだが。


その時、男が静かに呟く。

「…やはり…か…」


使徒の体は再び太陽の光に包まれている。


――ゴーン、ゴーン


鐘の音。


――ゴーン


伏せる!


三度目の鐘の音を聞いたシンは、再び地に伏せる。

その瞬間、巨大な炎柱が顕現し、先程の映像を再生させたように、同じ光景を辿っていく。


炎柱が集束し、消失した後、そこには鎧に刻まれた金線がさらに複雑になった使徒が佇んでいた。


「…不死身の…再生力…か…しかも…斬る度に…強くなって…いる…」

男が何かを確信したように呟く。

――ハウザーで、間違いないようだな…


「こんなやつ…どう倒せば…」

隣で、使徒の再生を目にしたシンが、怯えたように溢す。


「…案ずる…な…。…倒し方…は…必ず…ある…。…これから…それを探す…」

本当は倒し方があるのかも見当が付かないが、今は行動の見通しを立ててやった方が恐怖も和らぐ。

それに、奴は必ず俺が倒さなければならないからな…。


「…行くぞ…訓練を…思い出せ…そうすれば…お前は…負けない…」


その言葉に、シンは恐怖に冷めた心が、再び火を灯すのを感じる。

この人は俺を認めてくれた。

負けない、と言ってくれた。

もう、俺は折れない。


「はい!」

「…よし…ではまず…首を…切り落とす…」


二人は左右に分かれ、使徒に向かって行った。



◇  ◇  ◇



対使徒撃滅連合ディザスターレジスタンスエクスカリバー戦隊隊長のクリス・エルロードは、目の前の光景に動揺を隠せずにいた。

クリスには実績があった。

多くの使徒の配下や怪物を倒し、遂には組織の中でも最も秀でた者達が配属されるエクスカリバー戦隊で隊長を務めるまでに至った。

そのクリスでも、いや、実績を重ねてきたクリスだからこそか、目の前の光景を認めたくはなかった。


目の前には、凄絶な威圧を放ち浮遊する巨大な深紅の鎧。

実力があるからこそ、クリスには分かってしまった。

――勝てない、と。

そして、その化け物を相手にたった二人で戦っている存在に、羨望と怨念の入り交じった視線を送る。

あそこは自分の場所なのに。あんなどこの誰とも知れぬ奴らの場所ではないのに。


だが、今優先するべきは使徒の撃滅。

不本意ながらも、クリスは隊員に指令を出し、使徒に大砲を浴びせた。



◇  ◇  ◇




「…あの~…ステにゃん?何でこんなところに転移したにゃ?」

【敵に気付かれずに攻撃するため】

――ゴーン

「確かに!ここから攻撃すれば絶対気付かれないわね!それより何かしらさっきの音…ギャー!熱!今何かが前髪をかすったわ!何よさっきの!気付かれてるの!?ってそこかしこに何か火の柱が…ギャー!熱!」


現在、バステト、ステラ、ライトネルの三人は、空中をフリーフォール中である。

というのも、上空から使徒に攻撃を加えるため、ここに転移したのだが。


「熱い!熱いわ!あの鉄屑、許さない!神聖な私の髪を焼くなんて信じられない!」


謎の炎柱によってライトネルの前髪が焼かれ、プチパニックに陥っていた。


「ライトにゃん、静かにするにゃ。そんな大声出したらあいつに気付かれるにゃ」

【同意】

バステトがげんなりとした表情で言い、ステラは地上を眺めながらピンクの看板を上げる。


「何よ!二人ともそんなこと言って!もう知らない!」

プイッと、ライトネルは空中で器用にそっぽを向いてしまった。


バステトはその様子を見て、静かにため息を吐く。

その時、下を観察していたステラが、何か怪訝な表情で看板を上げる。


【何か変】

直後、使徒の体がバラバラになり、地に崩れ落ちる。


「何にゃ!?もう倒しちゃったにゃ!?だとしたら誰が…」

「誰か分かんないけど良くやったわ!お詫びとして今度何か奢らしてあげる!」

――いやそこは奢るところじゃないんかにゃ

と、言いかけたバステトは、耳に入った何とも場違いな音に、眉根を寄せる。

――ゴーン、ゴーン

鐘の音?何で今…あにゃ?何にゃこの感じ?身体中が焼けるような…っっ!!


「何か来るにゃ!」

違和感を感じ、叫ぶと同時、バステトはステラとライトネルを強引に引き寄せ、そのまま前方の空中を蹴って後方に退避する。


その瞬間、さっきまで自分達が居たところに巨大な炎柱が顕現する。

ゾッとする間もなく、それと同じ炎柱が襲い掛かって来る。

バステトは、それらを空中を蹴って回避し、先程退避した瞬間手を放してしまった二人を探す。


「ステにゃん!ライトにゃん!無事かにゃ!?」


必死に叫ぶバステトだったが、返事はすぐに返ってきた。


【問題無い】

と、目の前に突如現れたステラに、

「ギャー!熱いわ!あの鉄屑!また私の前髪を!もう絶対に許さないから!」

叫びを上げる前髪を焼かれたライトネル。

二人とも無事なようだ。

良かった、と息を吐き、バステトは下を眺める。

そこには、さっきバラバラになって崩れ落ちた筈の使徒が無傷で佇んでいる。

地面も迫ってきている。

攻撃を加えるならば、今だ。


「ステにゃん、ライトにゃん!」

「分かってるわ!ぶっ放せばいいのよね!」


【いや、攻撃は中止】

だが、ステラは反対の意見を示す。


【誰か、戦ってる】

下を指差すステラに釣られて、下を見ると、そこには――


「あれは…シン君にゃ!?」

「本当だわ!シンさんが居るじゃない!」

【だが、今降りるのは危険】

ステラの看板を見た二人は、冷静さを取り戻す。

「でも、どうしたらいいにゃ?下手に降りたらあいつにやられるにゃ」

「殺られる前に殺ればいいのね!」

【違う。別の場所に転移する】

「じゃあ、どこに転移するにゃ?」


バステトの問いに、ステラはそこを指差しながら看板を上げた。


【大砲部隊】




◇  ◇  ◇



使徒が動き始める。

巨大な翼を羽ばたかせ、こちらに向かって高速飛翔してくる。

男は気配を消しているため、こちらに向かって来たのだろう。

だが、大丈夫だ。

もう恐怖は感じない。

体も動く。


シンは、男に渡された氷剣を持つ右手に力を込め、真横の空中を蹴って移動する。

あの巨体から降り下ろされる大剣を受け止めようなどとは端から考えていない。

回避に専念し、男が攻撃を加えた後に、怯んだところをシンが攻撃する。

つまりシンは囮で、弱点を探すのは男だ。


極高速で降り下ろされた大剣は、地面を斬り砕くに終わり、回避出来た事に安堵するシン。

だが、その攻撃の余波の事には、考えが至っていなかった。

大剣が降り下ろされた地面が爆散し、放射状に無数の岩石が飛び散る。


――ヤバい!避けきれ…


その瞬間、岩石の全てが凍り付き、まるで時間が停止したようにその場で岩石が停止する。

シンの目の前にまで迫っていた岩石も、氷塊となって停止している。


「…油断…する…な…」

声のした方向を見ると、男が地面ごと氷で覆い尽くしていた。


「ありがとうございます!助かりました!」

「…行け…」

そう言って、男は再び気配を消し去る。


――あの攻撃を全て避けきるには、大剣を回避した後、空中へ退避する必要があるな。

そう考えていると、何かが使徒に直撃し、爆発する。

飛んできた方向に目を向けると、大砲を打ったと思われる一団が居た。

組織の戦隊が到着したか。心強い。


だが、砲撃など意に介さずに、使徒はこちらに向かって来る。


未来視によると、今度も大剣を降り下ろしてくるようだ。

未来視の通り、斬撃の繰り出される場所から回避し、そのまま全力で空中へと退避した。


――轟音


再び地面を斬り砕くに終わった使徒は、岩石を巻き散らかしながら停止する。


[火]の使徒の行動は、その配下と同様に単純だ。

狡猾な手段や搦め手などは一切使用せず、炎柱と斬撃のみ使用する。

それだけでも十分な脅威なのだが、[火]の使徒には特異な能力がある。


使徒が停止した隙に、男が氷剣で斬撃を繰り出す。

同時に、使徒の四肢が切断され、最後に首が落とされる。

普通ならば、ここで勝負ありだ。

普通ならば――


太陽から光が放たれ、その光が使徒を包み込む。

三度の鐘の音を経て、炎柱が顕現する。

ギリギリ、大砲を打った戦隊は範囲外だったようだ。

全てを焼き尽くす炎柱が、中心に集束していき、現れたのは――

頭部が三つに増え、腕が四本になった[火]の使徒。

四本の手には、それぞれ大剣が握られている。


これが、[火]の使徒の特異点。

弱点を攻撃しない限り無制限に復活し、復活するごとに、その強さを増していく。

特異点であり、[火]の使徒が強力であると言わしめる所以。

そして、三回目の復活時、[火]の使徒の強さは大幅に跳ね上がる。


シンは油断なく、未来視を使用して使徒の動きを見る。

――何だ…おかしいぞ

だが、未来視の中に使徒は居なかった。

――まさか!まさかまさか!!


突如、シンのすぐ目の前に使徒が現れる。

そして、赤熱した四本の大剣を同時に降り下ろしてきた。


――これは、避けきれない…終わりだ…

スローモーションに時間が感じられる中で、シンは立ち尽くす。

――今…そっちへ行くよミーリア…って、ん?スローモーション?そうだ!まだ終わりじゃない!


シンは"停止世界"を発動する。

すぐそこまで迫っていた大剣が、急激に速度を落とす。

停止世界は一日に一度しか使用出来ないシンの奥義の一つ。

それでも、使徒の剣は停止しない。

停止世界とは、外界には全く影響が無い技だ。

思考加速の境地。それが停止世界。

端から見れば、シンの動きは突然消えたように見えるだろう。

その極限の思考加速の中でも、使徒の剣は、二度目の復活時程度の剣速を保っている。

だが、シンには十分な時間だった。


停止世界に未来視を並列使用し、攻撃の範囲外へと回避。

つまり、使徒の背後に移動する。

シンは全力で後方の空中を蹴り、使徒の足の間を抜け、背後に回避した。

直後、後方で地が爆ぜる。

爆ぜた岩石が全方位に吹き飛ぶが、使徒の体を盾に、シンは攻撃を凌ぎきった。


ゆっくりと、使徒が振り向く。


次にあの攻撃が来たら、避けきれない。確実に死ぬ。

弱点はまだ見つかっていないのか?

シンが焦燥に駆られていると、突如、使徒の翼が一つ消し飛んだ。

鎧の一部分が凍り付いている事から、男の攻撃だということが分かる。


翼の一つを消滅された使徒は一瞬硬直し、四本の大剣を滅茶苦茶に振り回し始めた。

――ゴーン、ゴーン、ゴーン、ゴーン

さらに鐘の音が鳴り、絶え間なく炎柱が乱立する。


しばらくして攻撃が止んだ後、翼を再生させた使徒がそこに居た。

――もしか…して


「…シン…」

背後から男の声が聞こえ、振り返る。


「…奴を…倒す…方法…を…見つ…けた…」





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