表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/28

27.報告

 森を最速で抜けた俺たちはすぐさまゴドーセの町、冒険者ギルドへと向かった。

 影の長さをそろそろ感じてくるころだ。この時間に来る冒険者はあまりいない。

 予想通り受付はガラガラだった。


 この時間帯は受付としては暇なようで、窓口に座っている所謂受付嬢さんは誰もいなかった。その奥で事務作業を行っているようだった。

 俺たち三人が顔を出すとすぐに奥から人が出てきた。


「はいはい、今行きます…あら、ブレイドさん。皆さんも」


 やってきたのはサーヤさんだった。


「ずいぶんお早いお帰りですね。夕方に帰ってくるとばかり思っていたのですが」

「すまないがギルド長との面会を申し入れたい。至急だ。依頼の森の調査の事もある」


 リナさんのもの言いに不穏なものを感じたのか、サーヤさんはすぐさま動いてくれた。

 奥から戻ってきたサーヤさんは部屋まで案内します、と俺たちを奥に招き入れた。

 案内された部屋はこの間も使ったあの応接室だった。

 ギルド長はすでに部屋でスタンバっていた。

 椅子に腰かけてそわそわしている。

 入ってきた俺たちを見て立ち上がる。


「まあ、なんだ。座れ座れ」


 椅子をすすめられればすぐさま座りに行くのがシズネだ。

 俺はそれに続き、その後ろからリナさん。

 よって椅子には奥からシズネ、俺、リナさんの順で座ることになった。


「それで、要件っていうのは」


 ギルド長が全員座ったのを見届けて口を開く。


「ああ、本日、森の調査を行ったのだが――」


 ギルド長の顔は話を聞いていくうちに青くなっていき、最終的には青白くなっていた。

 話を聞いているときの表情も百面相だった。驚き、驚嘆、驚愕…まあどれも意味は一緒みたいなものだが。

 話を聞き終えたギルド長は額に手を当てうつむいてしまう。


「つまり、今日の森の探索で、森の中央まで行ったと」


 俺たちはいっせいに頷く。


「そこで魔人族(イビラ)に遭った」


 再び一斉に動く。


「そいつは魔王復活を目指していた」


 そうそう。


「で、森の異変はそいつが連れていたブラッドパンサーだと?」


 まあ、まとめれば4行だよな。


「これがそのブラッドパンサーのドロップよ」


 シズネがカバン(と見せかけアイテムボックス)からドロップ品を取り出す。

 毛皮…ですね。随分大きい。

 まあ元のサイズがあれだからそりゃ大きくもなるか。

 ギルド長はおずおずと受け取りまるであらでも探すようにじっと見つめる。


「確かに、この辺で出る毛皮じゃねえな。俺じゃどの魔獣のものかもわからねえがかなり強いやつだってことは分かる」


 ギルド長はため息を吐いた。この部屋に来てから何度目だろう。


「分かった。お前らのいう事は嘘じゃねえだろう。嘘つくにしてももう少し信憑性のある嘘を吐くもんだ」


 ギルド長は背中を背もたれに預ける。


「森の南側の調査もこちらでやる。とりあえず、魔王の対策に関してはギルド本部と打ち合わせだ。しかも早急に、だな」


 あー仕事が増える、と文句を言って締めくくる。


「他になんかあるか?」

「あ、今日の討伐分の買取はどうすればいいの」


 シズネがシュバッと手を上げる。


「…悪いがもう一度受付に言ってくれ。どうせ今は空いてんだろ」


 シズネの質問を最後に俺たちは応接室から退出した。

 出る直前のギルド長が完全に「燃え尽きちまったよ、真っ白にな」って感じだったんだけどあの人これからが仕事だよな。


 受付にいたサーヤさんにもう一度頼んで、今日の討伐分の買取をしてもらう。

 いつもの量の半分以下だった。シズネは不満げだったがサーヤさんは嬉しそうだった。


「これでも多いくらいですけど、まあたまにある大量発生時なら良くある量です」


 ほくほく笑顔で買取を済ませてくれたサーヤさんにお礼を言い、俺達は冒険者ギルドを後にした。

 そして再びあのレストランにいる。


「おいしー」


 頼んだ料理をパクパクと口に運ぶシズネ。

 全部が全部現実と同じではないんだけど、現実にある料理をこの世界で再現してみました!みたいな感じがするけどそれでもおいしい。

 むしろ微妙な違いがあっておいしいのかもしれない。


「お前たちはこの先、どうするつもりなんだ」


 メインデッシュの皿の半分、底が見えてきたころだった。

 リナさんは慣れた手つきでフォークとナイフを操り、肉を切りながら聞いてきた。

 シズネは俺を見て、任せたとばかりに頷く。そして手元のグラスに手を付ける。


「そうですね、ラゴイミ洞窟を目指したいと思います。ジェノスが言っていたことも気になりますし」


 俺は一度手を止めて答える。

 リナさんは食べやすい大きさに切った肉を一度フォークから外し俺たちのほうを見た。


「ジェノスを追いかけるのか」

「はい」 


 そうか、とつぶやきリナさんは一片の肉を口に運ぶ。

 洗練された動きだ。まるで一動作一動作が絵画のようだ。

 なお、シズネでは絵画にならない。なぜならこいつはテーブルマナーはなっているがとても嬉しそうかつ美味しそうに食べるからだ。

 食レポとかしたらきっと人気出るぞ。


「俺、ここに来るまでの記憶がないんです」


 リナさんの咀嚼が一瞬止まる。だがすぐに再開し口の中身を嚥下した。


「シズネだって本当のところは血のつながりがあるのか、そうでないのかもわからない。でも、あいつを…ジェノスを追いかけなければいけない。そんな気がするんです」


 そうか、とリナさんが再び手を動かし始める。


「大丈夫よリナさん。私はいつでもブレイド君の傍にいるんだから。なんて言ったってお姉ちゃんだもの!」


 ドン、と胸を張るシズネに俺もリナさんも苦笑いだ。

 シズネはそのままグラスの中身を飲み干した。

 いや確かに頼りにはなるんだけどさ。


「リナさんはこの先どうされるのですか」

「私か?私は一度、都に戻るよ。拠点がそちらだし、今回この町に来たのはちょっとした旅行のつもりだったんだ」


 リナさんはサイドのスープに手を付けた。


「では、この町でお別れですね」

「なに、生きていればまた会えるさ」


 おどけて見せるリナさんに俺もフッと口元が緩んだ。


「なによ、しんみりしちゃって!いくらリナさんでもブレイド君は渡さないんだから!すみませーん!」


 妙に上機嫌で店員を呼ぶシズネ。ここは居酒屋じゃないんだぞ。

 やってきた店員に飲み物を注文するシズネ。

 慇懃に頭を下げて下がっていく店員。

 再びやってきた店員はお盆の上にグラスを3つ載せていた。


「せっかくおいしモノ食べているんだからしんみりしたらもったいない!パーッと行きましょ、パーッと!」


 シズネが頼んだ飲み物を三人で持つ。


「音頭は誰がとる?」

「そこはブレイド君でしょ」

「いや、俺こういうの苦手で…」

「えーいもういい私がやる」


 シズネがぐっとグラスを上に上げた。


「私たちのチームの新たなる門出に!」

「「「乾杯!」」」


 ぐっとグラスを口に運び傾ける。

 うん、果汁特有のすこしドロッとした感じと甘み。そしてその中に含む酸味と苦みは…。


「これ酒じゃねえか!」


 思わずグラスを見て叫んでしまった。


「うん?酒はダメだったか?先ほどからシズネが頼んでいるからてっきり大丈夫なのかと思っていたが」


 リナさんは平然とした顔で飲んでいる。確かにお酒というよりジュースに近いが…。ん?さっきから頼んでいる?


「何よ、私が頼んだ酒が飲めないっていうの?」


 シズネが半目で俺を睨んでくる。


「お前!いつから酒を!」

「だって飲んでみたかったんだもん。いいじゃんゲームなんだし」

「だからと言って飲み続ける奴があるか」

「なによブレイド君のケチ。でも、私の酒を飲みなさーい!」


 シズネが俺のグラスをひったくって口に近づけてくる。

 逃げようにも狭い席だ、逃げる場所などない。


「うわやめうぷ」


 確かにまずくはないんだが、こいつこんなにめんどくさいやつだったか?

 酒のせいか…。

 リナさんは微笑んでいるだけで止めようとしない。

 俺はおとなしくシズネの手ずからの酒を空にするのだった。

 それから間もなくして俺たちは解散した。


 すでにメインデッシュを空にしていたシズネのためにデザートを頼み、その間に俺たちの料理も食べ終わる。

 最後は酒の魔力によりタガを飛ばしたシズネにひたすら付きまとわれながら店を後にした。

 リナさんとの別れももっといいものにしたかったのだが仕方がない。

 最後にお礼を言ってリナさんとも別れた。


 シズネは俺の背中にべったりくっつきながら始終嬉しそうにしていた。

 シズネの飲んだ量は分からないがこいつは酒にやられすぎだ。俺もあのコップ一杯分は飲んだが何ともない。

 歩かせるとふらふらとどこか行きそうだったので俺が背負って宿まで連れて行った。

 外はようやく夕方になってきたところでまだ明るく、衆目にさらされて非常に恥ずかしい思いをした。

 いつもならようやく森から戻ってくるような時間だがシズネがこれでは仕方がない。

 部屋のベッドにシズネを投げ出し即座に命令する。


「寝ろ!」

「はぁい」


 俺もすぐ自分のベッドに入る。

 と背中のあたりでごそごそと動きが。


「お姉ちゃんなので添い寝します」

「一人で寝ろ!」

「おやすみなさい」


 寝る意思はあるようなので好きにさせた

 すぐさま意識が落ちるような感覚になる。どうやらシズネは本当に寝る気があったようだった。

 そこには深く感謝することにしよう。




 朝になった。

 目が覚めると俺の背中にシズネが張り付いていた。

 幸せそうな笑顔で寝てる。…寝てる?

 そっとベットから降りようとすると腕が伸びてくる。


「シズネ、起きているんならさっさとベットから降りて」

「お姉ちゃんはまだ寝ています」


 俺は追いかけてくるシズネの腕を避けてさっとベットから降りた。

 こちらを不満げににらんでくるシズネと目が合う。


「昨日の夜のことは」

「よく覚えてます」

「じゃあもう二度とするなよ」


 俺の一言にさっと目をそらすシズネ。ため息だぜ。

 シズネはベットから降りた。軽く身だしなみを整えると俺へと笑いかけてくる。


「おはよう」

「現実では夜だけどな」

「ブレイド君と初めての朝チュン…」

「誤解しか生まない言い方をするのはやめろ」


 ふざけたやり取りもたいがいにして俺たちはログアウトするのだった。

 区切りがいいからね。明日も学校だし。


次で二章が終わるといったな。アレは嘘だ


お読みいただきありがとうございます

もう一話分2章が続きます。

3章が始まるのまでに時間がかかるかもしれません

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ