君は脇が甘い
次のご挨拶。『JA青年部の会合』に向かう車中である。
先生はJAの作業服に着替え、ネクタイを直しながら、
先生「君は脇が甘いねえ・・・」
恋三「ハ?」
先生「映画か何かの見過ぎじゃないの?」
恋三「はあ」
先生「先が読めんのかね」
恋三「はあ・・・」
先生「いちいち私の指図を受けるなと言ってるんだ。自分で考えなさい」
恋三「はい。・・・あの~」
先生「何だ!」
恋三「先生のおっしゃってる言葉の意味が分かりません」
先生「要領が悪いと言ってるんだ。バカ者が」
恋三「え? あッ、ハイ! すいません」
先生「で。次の会場で私は何を喋れば良いの?」
恋三「は? いや、それは~・・・」
先生「ソレは何だ!」
恋三「はい! それは、JAの青年部会ですから・・・」
先生「ですから?」
恋三「希望の持てるような・・・補助金なんか」
先生「補助金? 何の」
恋三「・・・分かりません」
先生「バカッ! 君はそれで私の秘書を務めると云うか!」
恋三「あッ、ハイ! すいません」
先生「今、世間で一番問題に成ってるのは何だ!」
恋三「え?・・・JA・・・あッ、米と消費税だッ!」
先生「そうッ! そこに農家に対しての補助金を絡める! 俺は今、財務だ。そう云う所に目を付けてこそ、魚(票)は売れるんだ」
恋三「あ~あ、なるほど」
先生「ナルホド?」
恋三「あ、いや、勉強に成ります」
恋三は落ち着いて運転出来ない。
すると先生が。
先生「そこの路地を右に曲がりなさい。近道だ」
恋三「はい」
恋三はハンドルを右に切り、路地へと入る。
そこは侵入禁止(一方通行)であった。
恋三は緊張した声で、
恋三「先生、一通です・・・」
先生「大丈夫だ。行け」
強気な先生の一言。
恋三「エッ! いや、違反・・・」
先生「イハン? 君は度胸が無いねえ」
恋三「いや、そんな・・・」
先生「バカ者ッ! また私に運転させたいのか」
恋三「あ、ハイッ! すいません」
目の前に目的地の『勤労会館』が見えて来る。
恋三「あ、本当だ。随分、近いですねえ」
先生「近いですねえ? 誰に向かってモノを言ってるんだ! バカ者が」
先生がJAの『ご挨拶』が終わって会館から出て来る。
恋三は急いで車を玄関に着け、後部ドアーを開ける。
先生が座席に飛び込む。
先生「早くしろ!」
恋三「ハイ!」
先生は車内で、次の予定(梶原淳子夫妻の結婚披露パーティー)の礼服に着替えながら一言。
先生「君はあそこで、お茶を飲む必要はないんだからね」
恋三「エ? あ、はい。申し訳ありません」
先生「君が大臣じゃないんだから・・・」
恋三「すいません」
先生「それから、あそこで名刺交換してたでしょう」
恋三「は?」
先生「アレは共産党の秘書だぞ」
恋三「えッ! そうだったんですか?」
先生「何だ、その答え方はッ!」
恋三「あッ、失礼しました!」
先生「・・・もっとスピードが出ないの? 間に合わないぞ」
恋三「ハイッ!」
梶原淳子夫妻の結婚披露パーティーも何とかこなし、関越道を超快調に飛ばす漆黒の公用車。
午前中の予定が終わり、事務所に戻る途中である。
先生は新聞を顔に載せて眠っている。
突然、道路正面、頭上の速度探知器が光る。
恋三「あ、光ったッ!」
恋三はスピードを落とす。
先生が顔にのせた新聞をずらし片眼を開ける。
先生「どうした?」
恋三「光りました」
先生「ほ~らね。だから君は『脇が甘い』と言ってるんだ」
つづく




