一夜の休息 中編
魔法。物理法則からはみだし、この世ならざる能力を発揮することの総称である。
魔法を使えるものは『ソーサラー』と呼ばれ、先天的に成るケースしか確認されていない。
彼らは極めて希少な存在であり、その数は1000にも満たないと言われている。
しかし、ソーサラーでない一般人でも魔法を使う手段は存在する。それが
「こういう武器、魔装ってわけだ」
どうやって作られたのかは知らないが、ソーサラーでなくとも魔装を使用することで魔法を行使することができるのだ。
しかし、
「この武器、武器庫に置かれてたものなんだよなぁ。魔装なんていう貴重なもの、奴らが渡してくれるとは思わないんだが.......って、まさか」
ダインは言い終わる前に気づき、ルイもコクリと首を振る
「魔物は魔力のこもった攻撃でないと殺せない......ただ一方的に殺されると実験にならないから魔装を我々に持たせたのでしょうね」
おそらく僕の大弓も...と、ルイは立てかけていた弓へ目を配らせる。
魔装はソーサラーほど稀少ではないが、それでも一本数百万は下らない代物だ。
費用を考えると、この実験の本気度が伺える。
「......でもよ、この実験って目的はなんなんだろうな?俺たち、今のところサバイバルゲームさせられてるだけなんだけど」
この実験が何を目的になされているのか博士から説明がない以上、彼の意図を知るすべは今のところ思いつかない。......ゴールとやらにたどり着けばわかるのだろうか。
この暗闇に等しい状況にダインが頭を悩ませていると、ルイは思い出したかのように焚火へ駆け寄り、料理を皿に盛り始めた。
「ひとまず、食事にしませんか?僕お手製のナポリタンができてますよ!」
そういって、満面の笑みで料理を手渡してくるルイ。
渡された木製の器からは湯気が立ち上がっており、香ばしい匂いが食欲を刺激してくる。
「最近まともな飯食ってなかったから助かるぜ......ていうか、よくこんなに食材集められたなぁ」
感心したダインはふとそんなことを口走り、「うめ、うめ」 と料理に舌鼓をうっていると、
「実は僕、食料などの物資の荷物係だったので食料だけは結構持ってるんですよね......まぁ囮にされて見捨てられてしまったのですが」
さきほどまでの笑顔はどこへやら、遠い目をしモソモソと料理を口に運ぶルイが視界に入りこんできた。
「ゲホッ...ゴホッゴホッ......ええっと、その、なんだ?結果的に生き延びられたわけだし、その...元気出せよ?」
意図せずルイの地雷を踏んでしまい、盛大にむせるダイン。
しまったやっちまった、と己の軽い口を脳内ではたきつつ、しどろもどろに慰めの言葉を紡ぐ。するとルイはとたんに頬を紅潮させ、距離を詰めてきた。
「ええ、ええ!そうですとも!それもこれも全て、ダイン君のおかげです!ダイン君が私の命であり、私の命がダイン君なのです!!モーディアス家の名に懸けて、あなたに生涯尽くすことを誓いましょう!!」
「いや重いわ!!家名をそう軽々と使うもんじゃねぇよ!......それに、お互いさまって言ったろ?俺もルイに助けられたんだ。だから普通に、対等でいこうぜ?」
狂気的な目を輝かせ、途中から何言ってるかわからないルイに気圧されながらもその場をしのぐダイン。
普通の好青年かと思ってたのに、もしかしてこいつやばい奴なんじゃ......。
「ダイン君!ダイン君!」と鼻息を荒くするルイを横目に、なにか話題をそらそうと思考を巡らせる。あやうくルイが家来になるところだった。
数少ない友達候補を、家来にするわけにはいかない。
「そ、そうだ!とりあえず、お互いの身の上話でもしようぜ?ほら、これから俺たちはパーティになるわけだし」
とダインは少し強引に、ここに連れてこられるまでの経緯を話し始めた。
「ほんとうに、救われたんですよ」と小さく呟かれた言の葉は、焚火の音でかき消されダインに届くことはなかった。




