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不滅のリーパーキング~死体の山で梯子を作れ。あなたに届く、その日まで~  作者: 柳原ミツキ
第一章

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一夜の休息 後編

「......なるほどぉ。ダイン君は『レナ』っていう幼馴染を探してるわけですか」

ダインのこれまで話を聞き、「南...金髪...」と呟き形のいい眉をひそめるルイ。


「ああ。なにか知らないか?金髪で、顔はいいが生意気な女の子なんだが」

「いえ、僕は会ったことはありませんね。しかし......心当たりがないでもないです」

と、神妙な顔つきで口をひらいた。


「最近、王都である噂が流れていたんですよ。なんでも、今年世界が滅亡するらしいです」

「なわけねぇだろ」

都市伝説というやつだろうか。北でもそういう話題は尽きないらしい。


「ここからが本題ですよ」と苦笑し、ルイは発言を続ける。

「噂によると世界を滅亡から救う救世主、巫女という存在がいるそうです。そしてなんと、最近その巫女が見つかり王国に保護されたらしいんです」


巫女、ねぇ。

「その巫女とやらがどう関係してるんだ?レナとは小さい頃から遊んできたが、巫女だとか救世主だとか、そんな特別な存在だと感じたことはないぞ?」


怪訝な目でルイを見やると、「しかし噂によるとですね?」と柔らかな唇を震わせた。


「その巫女は南からやってきた、金髪碧眼、白い装束の少女だそうです」

「ほなレナやないかい」


レナは連れ去られた日、白いワンピースを着ていた。ここ最近で北へ連れてこられた、金髪碧眼の女の子ということならレナである可能性はかなり高い。


「思わぬ収穫だぞ、これは。その少女が巫女であるという点を除けば間違いなくレナだ」

「そこが問題ですよねえ......まぁ噂なので、冗談半分に聞き流してください」


肩をすくめ、バツが悪そうにしているルイ。信憑性の薄い話でぬか喜びさせてしまったと思っているようだ。


「いや、俺がこの北の大地に連れてこられた以上、レナも北の王国にいる可能性は高い。それに俺が知らなかっただけでレナは巫女なのかもしれないしな」

得体のしれない木の実を代々守ってきたとか言ってたし、なにか特別な家系なのかもしれない。


「とにかく、お手柄だぜルイ!これからの目標が決まったな!さっさとこの実験所から脱出して王城へ向かう。そんで、レナを連れ戻す!......お前も一緒に来るだろ?」

目標がはっきりとし、霧掛かった頭が晴れた気がする。

ダインが当然のごとくルイを誘うと、ルイの両の目から涙が伝った。


「......!!もちろんですダイン君!たとえ火の中水の中!王城だろうと龍の巣穴だろうと!お供させてください!殿!!」

「殿はやめて!?あと、泣くほどなの!?」


ゴシゴシと両目をこすり、潤んだ視界を明瞭にしていく。今だ涙があふれ、ぼやけた視界の中で忠義を誓った相手の顔を、目に焼き付ける。


王城に乗り込んだら捕まる、とか。もしかしたら巫女は人違いかもしれない、とか。そんなことはどうでもいい。ただ、こんな自分を仲間だと、一緒に来いと、そういってくれるダインへの深い感謝と、命に代えてもお守りしなければという決意を胸に、ルイは涙を流し続けたのだった。




「......落ち着いたか?」

泣き続けるルイの背をしばらく撫でていると、

「ず、ずびばぜん......ズビッ......つい......」

鼻をすすり、鼻声で答えるルイ。


彼にもなにかつらい過去があったのだろうか。家名があるくらいだし、所作といいどこかの貴族を彷彿とさせる。権力争い、親からの期待など貴族ならではの苦労があったのだろう。


こんな場所へ連れてこられ、その上仲間に裏切られたのだから涙線が緩んでしまっても不思議ではない。


「......お前も大変だったんだな。よかったら聞かせてくれよ。これまでの話」

そう優しく問いかけると、ルイは少し間をあけて口を開いた。


「......僕はニブルヘイムにある名家の一つ、モーディアス家の三男として生を受けました。何不自由なく平和に過ごしてきたのですが、ある日を境にその平穏は崩れました。......すみません、詳しくは話せないのですが現当主、つまり僕の父がやらかしてしまってモーディアス家はその地位を追いやられたのです」


いわゆる、没落貴族というやつだろうか。その後もルイは没落した後、金に困った父に売り飛ばされたこと。実験場で組んだパーティ内でのひどい扱いなど、聞くに堪えない転落秘話を話してくれた。


「とまあそんなわけで、今に至るって感じですね。王国ではモーディアス家と名乗るだけで皆から後ろ指を刺されることでしょう。まったく、父様もやってくれますね」


と話すわりには、父のことを嫌っている風には見えなかった。そういえば俺に名を名乗るときも家名を隠さなかったな。

これも話せない事情とやらが関係しているかわからないが、彼はモーディアス家に誇りをもっているようだ。


「ノータス国民だから知らなかったというのもありますが、それでも僕の家名を聞いても嫌悪感を抱かなかったダイン君は特別なんです。......前のパーティでは、こうはいきませんでしたよ?」

と、嬉しそうに笑顔を弾けさせるルイ。しかしどこか寂しそうな目をしていると、そう感じた。


「ルイ、よかったらなんだけど、ここから出たら一緒にノータスに来ないか?俺はレナを取り戻したらノータスに帰るし、一緒にさ。......ニブルヘイムだと居心地悪いんだろ?田舎っちゃ田舎だけど、そんなに悪いところじゃないぜ?」


ルイは一瞬キョトンとし、すぐに顔を綻ばせた。

「ふふっお気遣いありがとうございます。......非常に魅力的な提案なんですが僕は父の、いや、モーディアス家の汚名を晴らさなければならないので、お断りさせてもらいます」

と寂しそうに、しかし決意の籠った返事をした。


ダインの中でルイのイメージが静かに崩れ、思わず視線を逸らした。

自分が思っているよりも、彼は弱くも頼りなくもなかったのだ。


蔑まれても、裏切られても、それでも一族の汚名を晴らさんと前を向いている。

逃げ道を提案した俺の発言は、彼に対する侮辱のように思えた。


「悪い、変なこと聞いちまったな。......さ、明日に備えてもう寝ようぜ?明日はゴール探しに行かなきゃだからな!お互いの目標のために!」

と、残った料理をかっ込み、ルイに背を向け横になるダイン。


ルイはそんな様子を見て目を細めると、

「そうですね。お互いの目標のために、もう寝ましょうか。おやすみなさい......殿」

「だから殿はやめろって!」


焚火が消えた暗い空間にしばらく笑い声が響き、やがてかすかな寝息だけが残った。


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