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不滅のリーパーキング~死体の山で梯子を作れ。あなたに届く、その日まで~  作者: 柳原ミツキ
第一章

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空に浮かぶ白い影

「コホン......では、第一回作戦会議を始める!」


交代交代で見張りをし、仮眠をとりながら迎えた朝。

朝食の硬いパンを齧りながら、ダインは口を開いた。


「俺たちの目標はゴールにたどり着きここから脱出することだ。しかし....」

「ゴールの場所がわからない、ですよね」

ルイの言葉に、コクリと首を縦に振る。


「地下にあるくせにバカでかい、森と草原を闇雲に探すのは現実的じゃねえ。リーパーと接敵する回数も増えるだろうしな」


「そこで、だ。スタート地点に書いていたヒントとやらを、今日は探そうと思う」

おそらく、そこにゴールの居場所がわかる手がかりが書かれているのだろう。

しかし、

「そのヒントの場所もわかんねぇんだよな。......どうすっかな」


リーパーとの接敵を減らすため最短距離でゴールへ向かいたいのに、そのヒントを探すため歩き回っては本末転倒というものだろう。


「なぁ、ルイ。前のパーティの話をするのは心苦しいんだけどさ、なんかヒントについての手がかりを話してたりしてなかったか?」

トラウマを承知の上で、ルイへ尋ねる。彼の持つ情報だけが頼りなのだ。

四の五の言ってられない。


「ダイン君、お気になさらず。いつまでも引きずるような男では、あなたを守れませんから」

と言い、力強くうなずく。

うん、それでこそ俺のパーティメンバーだ。頼りにしてるぜ相棒。


「うーん、ヒント、ヒント......あっそういえば」

「お!何か思い出したか!?」


「いえ、少し変な建造物を思い出しまして。無数の人骨で構成された、かまくらのようなものを見かけたことがあるんですよ」

ルイはダインの目を見つめ、低く呟いた。


「人骨でできた建造物......か。穏やかじゃねえな」

ルイの発言に思わず息を呑む。

死んでいった被験者たちのものだろうか。真偽はともかく、嫌悪感を抱かずにはいられない。


「それを見かけたとき、パーティメンバーの一人がこういったんですよ」

一拍置き、中性的な顔を渋く歪めながらルイは口を開いた。


「おいルイ、中に入って確認して来いよ。...まあ無駄『骨』かもしれねえけどな!ギャハハ!!、と」

「いやうまくねぇし酷いな!?......そいつ、今度会ったら思いっきり冷笑してやろうぜ」

どうやら、想像以上に元メンバーは人の心もギャグセンスもないようだ。

陰湿には陰湿で返すのが常套手段。湧いてる頭を冷やしてやろう。


ルイはダインの言葉に苦笑しつつ、言葉を続けた。

「それで、背中を押されるまま少し中を覗いてみたんです。するとそこには、地下へつながる大

きな階段がありました」


ダインは顔をしかめ、顎に手を置いた。

「すげぇ怪しい感じしかしねぇな......中には入ってみたのか?」

「いえ、リーダーに呼び止められまして。結局中の様子は確認しなかったんですよ」

申し訳なさそうにルイは肩をすくませた。


……怪しい建造物に怪しい地下、か。

ダインは腕を組み、しばらく考えこむ。


「あからさまにヒントはここにあるって言ってるようなもんだよな...場所はわかるか?」

「だいたいですけど、わかると思います!ちょっと地図書いてみますね」

と言ってルイは自前のメモ帳にスラスラと書き始めた。


ルイの記憶力に感心しつつ、その間何をしていようかと周りを見渡してみる。

すると、散らばった野営道具たちが目に入った。

「俺は片づけでもしとくかな」


ダインはルイの背負っていたリュックを借り、道具たちのもとへ駆け寄った。

火の消えた焚火に掛けられたままの鍋や薄い毛布などをリュックへと詰め込む。

ルイが背負っていた標準サイズのリュック。しかしただのリュックと侮ってはいけない。


「このリュック、まじでなんでも入るな」

ルイが持たされていたリュックはいわゆる魔道具、というものでたいていの体積、重量を無視し

て入れることができる。


いれてもいれてもパンパンにならないリュックの中身をジーっと見て、ふと口を開く。

「なぁ、このリュックの中身って腐んないって言ってたよな?時間流れてねえのかな」

「さぁ......魔道具は謎が多いですからねぇ」


地図を描きながら反射で答えるルイを横目に、小さく呟く。

「......生きてる動物入れたらどうなんだろ」

「急にマッドサイエンティストにならないでください!?......まぁダイン君がやれというならやりますけど!」


マジにやりそうな目で小動物を探し出そうとするルイを引き留め、丸太へ座らせる。

ふと手に持ったメモ帳に目をやると、すでに地図は出来上がっていたようだ。

現在地と目的地、そして周辺の目印になるものが書かれている。


「なるほど......ここから北東に進めばいいんだな?」

「ダイン君ダイン君、ここでは方角を知るすべはないので普通に右斜め前ですよ」

「......北東に、進めばいいんだな?」

「その通りですダイン君。北東へ進みましょう。あの大きな木が目印ですよ」


ルイを圧で従わせ、言われた目印を頼りに北東もとい右斜め前方向に歩き出したダイン。

後ろをふと振り返ると、荷物を詰め終わったリュックを背負い、駆け足で後を追ってきたルイが追い付いていた。


「こっからは気を引き締めていくぞ。いつ魔物に襲われるかわからんからな」

「はい、ダイン君!僕に任せてくださ......って、え゛?」

満面の笑みで返事をしていたルイの顔が急に引きつった。


「なんだよ、ルイ。俺の顔に何かついてるか?」

「ち、ちが...だ、ダイン君......!!うし、後ろを見てください!!」

震える指に導かれ、ルイの方を向いていた顔を「なんだよ...」と正面に向ける。


次の瞬間、自分の目に映ったものを信じることができず、小さく言葉が溢れた。

「......は?」

ダイン達の目的地の方角、大きな木がそびえたつ森の上空に、それは出現した。


眩い光を放つ、巨大な槍。

空を貫くような異様な存在感に森が騒ぎ、飛び立つ鳥の群れが黒い影となり空を覆う。

その隙間から、白い光が漏れ出ていた。


100mは超えているだろうか。かなり離れた距離にあるのに、その大きさが嫌なほど伝わってくる。

その槍の矛先は出現した地点の少し先を捕らえていて、ほぼ垂直に浮かんでいた。


「おいおい、なんの冗談だよ......!!」

「魔法、でしょうか。でも、こんな規模の魔法、いったい誰が扱えるというんです?A級ソーサラーでもこの規模は不可能ですよ!?」


ダイン達がこのありえない光景に凍り付いていると、槍はゆっくりと上昇し、ぴたっと静止した。

空が、低く唸った。


槍の周囲の光が薄っすら歪み、空気が振動しているのを感じる。

……嫌な予感がする。冷や汗が頬を伝い、静かに息を飲む。


「ダイン君!!伏せてください!!」

「......!!」


ルイが忠告したその瞬間。空中で静止した槍が、急速に地面へ衝突した。

すさまじい轟音と衝撃波が襲い、立つこともかなわず吹き飛ばされる。


「うおぉぉ!!!.....っぐ!!!」

「ダイン君!!しっかり捕まっててください!!」


近くにあった岩に手をかけ、もう片方の手でダインの手を間一髪つかんだルイ。

しばらく暴風に襲われたが、やがて収まりぐったりと地面へ崩れ落ちるダイン。


「な、なんだってんだ......?槍が空に....?」

すでに槍は消失しており、辺りは異様な静けさに包まれている。


ダインはよろめきながら立ち上がり、森の奥を睨んだ。

衝突した場所から、まだ煙が立ち上っている。

遠くで逃げ遅れた鳥が一羽だけ鳴いた。


「なぁルイ」

「ええ、ダイン君。あそこ、やはり『何か』があるみたいですね」

二人は顔を見合わせ、コクリと頷いた。


先の槍はおそらく何者かが戦闘していたのだろう。

使い手は相当の実力者だ。そして、強力な技を使わざるを得ないってことは...

「相当強い魔物を相手にしてるってことだ」

「人間相手にあの技はオーバーキルすぎますからね......」


この二日間、遭遇したリーパーはせいぜいオオカミ型やサル型ばかりで、一番強い個体がクマ型であった。つまり、


「特別な個体ってことだろうな。ヒント、またはそれに準ずる『何か』を守る魔物がいてもおかしくねえ」

「野良の魔物がただただ強かったって可能性もありますが、考えても仕方ないですよね」

結局のところ、自分の目で確認するしかないのだという結論にたどり着く。


深く息を吐き、ダインは口を開いた。

「とりあえず予定通りに向かうぞ。......もしかしたら、ヒントを持つ被験者と会えるかもしれない」

「被験者同士で争うメリットはあまりないですし、できれば仲良くしたいところですねぇ」

ダインの言葉に賛成の意を示し、ルイも立ち上がる。


これから待ち受けるであろう未知に不安と期待を抱きながら、二人は静かな森に足を踏み入れた。


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