消えたグリム
ドカンッ!という轟音により、ダインの意識は覚醒した。
「......!!なんだ!?敵襲か!?」
バクつく心臓の鼓動を感じながら勢いよく飛び起きる。
若干焦点の合わない眼に映ったのは見知った空間で、
「ここは祠の中......だよな。俺、いつの間に眠って...くっ...」
急に起き上がったことによる立ち眩みに悩まされつつ、状況を整理する。
「俺はグリムと話してて.......そうだ。グリムは!?」
「なになに?そんなに私が恋しかったの?」という生意気な声を期待し周囲を見渡すも、それらしき人影は見当たらない。
この目に映るのは見知ったクイズ部屋と、横たわる二人の寝顔だけだ。
二人にはところどころ包帯が巻かれており、毛布の下で寝息を立てている。
「グリムがやってくれたのか......礼を言いたいところだが」
肝心の本人はどこへ行ったのだろうか。
重い体に鞭を打ち、グリムの部屋へと足を運ぶが、
「おーい。グリムー!どこ行ったんだよー!まだ返事聞いてねえぞー!!」
自分たちと共にここから出ようと持ち掛けた答えを、まだ聞いていない。
ベッドの下やクローゼットの中。はたまたトイレに至るまで。いくら探せど気配一つ感じなかった。
「.....まさか、博士か?」
ありえない話ではない。もしこの部屋が監視されていたとしたら。会話を聞かれていたのなら。
「.....そういえば、あの音」
自分の目覚めの起因となった、嫌な暴力的な音を思い出し嫌な予感が脳をよぎる。
「くそっ......!!思い違いであってくれ......!!」
頭を覆いつくさんとする不安感に駆られ、部屋から飛び出し二人のいる大広間へ。
そして、
「......!!あの扉、今まであったか....?」
ここへ入るときに使った通路とは反対方向。大きなモニターのすぐ横に、石の扉を発見した。
「間違いねえ。グリムはここから出ていったんだ」
扉の先には石の階段が伸びており、先は遠いのか出口は見えない。
はぁっ、はぁっと息を切らし、長い階段を上っていく。
まだ体調が万全でないことも重なり、息も絶え絶え。不格好なフォームで歩を進める。
「......!!」
しばらく進むと光が差し込み、出口が近いことを知らせてきた。
「......グリム!」
無意識に歩を早め、光に焦点を合わせ上っていく。
出口まであと5段といった所だろうか。
この時点で、妙な違和感を感じていた。
「......なんか、寒い?それに、なんか変な音が......」
ブルッと身震いし、視線を足元へ這わせると。
「......なんで、こんなところに...?」
この目に映ったのは、階段を覆いつくさんとする霜だった。
それに、出口から吹き込む風はダインの体を冷たく蝕んでいく。
「暖かい気温だったはずだ。これは明らかにおかしい....まさか、魔法か?」
一気に背筋に嫌なものが走り、滑る危険を顧みず駆け上がる。
「グリム!グリムー!!はぁっはぁっ......あ?」
一気に駆け上がり祠の外へ出たダインを出迎えたのは、望んだものではなく。
「なん、だよ。これ......」
ダインの眼下に広がるのは、大地を覆いつくさんとする霜。
地面に突き刺さった2m以上ある氷塊。凍った大樹。そして......
「あ、か...?」
真っ白な世界を汚す微量の赤。その付近には、複数の足跡が奥へ奥へと続いていた。
それが何を意味するか、考えるまでもないだろう。
「まずいまずいまずいまずい。は、はやく助けに行かねえと......は?」
目の前の光景にパンクしながらも、残った手がかりに縋りつき、捜索に向かおうとしたその刹那。
空から眩い光が差し込んだ。
否、光が差したのではない。空に、巨大な扉が現れたのだ。
「なん、だ......あれ」
超常的な光景に立ち尽くすダインの視線の先では、重厚な扉が開かれていく。そして、
「あれは......聖騎士....か?」
翼の生えた馬に乗った甲冑が、次から次へと飛び出してきた。
それらはざっと100機以上いるだろうか。ほとんど同じ色形をしていて、見分けがつきそうにない。
しかし、一つだけ目を引く存在が。
群れの先頭に、黄金の甲冑を纏った隊長らしき人物を視認した。
彼の指示に従い聖騎士の軍団は列を成し、指示を待っているようだ。
空に浮かんだ異物に目を奪われていると、先頭にいた聖騎士と目が合ったような気がした。
しかしそれは気のせいではなかったようで、先頭の騎士とその他2体の騎士がこちらへ方向転換し、勢いよく向かってきた。
バサッバサッと風を吹かせ、三体の騎馬が目の前に着地する。
リーダーらしき男は「とうっ!」と馬から降り、ダインの目の前まで歩を進めると。
「やぁやぁ、君も災難だったね。こんなところに攫われるなんて。......でも、大丈夫!」
前髪をかき上げ、きらりと輝く歯を見せながら、
「なぜかって?.....決まっているだろう。この俺っ!が来たから......だっ!!」
キランッ!という効果音が付きそうなほどの陽のオーラを放ち、決め顔でこちらを見てきた。
……なんだろう、全然頼もしそうに見えないんだが。
ダインはめまいを覚えながら、とりあえず敵ではなさそうなことに安堵しつつ、口を開く。
「えーっと。......とりあえず、あんた誰よ?」
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