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不滅のリーパーキング~死体の山で梯子を作れ。あなたに届く、その日まで~  作者: 柳原ミツキ
第一章

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グリム・ホッブス 完

「.....い、......おい!大丈夫か!?」

「う、うぅ.....」


深い意識の底から、誰かの呼ぶ声がして目が覚める。

ぼやけた視界に映ったのは白馬の王子様......ではなく、パッとしない黒髪の青年だった。


「......なんだ。お兄さんか」

「そんなにがっかりする!?」


彼の大声が頭に響き、ぐわんぐわんと頭が揺れる。

寝起きなんだから、もう少し配慮願いたい。


そんなことを思いながら、ぼーっと意識を漂わせる。

なんだか、懐かしい夢を見ていたような......


「おい、急に倒れてどうしたんだよ?......いや、別に心配はしてないが」

彼の言葉に意識が少しはっきりとして、現実に引き戻された。

見れば、チラチラとこちらを心配そうに伺ってくるダインの顔が。


「......お兄さん、実は私のこと好きなの?」

「なわけねえだろ!どんだけ痛い思いしたと思ってんだ!それに、うちの連れを痛めつけたお前を憎むことはあっても、好意を寄せることは百パーねえよ!」

言って、横たわる私の頭を片手で支えながら舌を出す。


「......ねえ、一つ聞いていい?」

「なんだ?聞きたいことがあるのはこっちの方なんだが」

しかめっ面で答えながらも、ノーと言わないダインに苦笑しつつ。


「あの聖騎士はさ、なんで祈祷使わなかったの?あいつが本気を出せば、私なんて一瞬で消し炭にできるのに」

言いながら、机に突っ伏して寝息を立てるノラへ視線を送る。

正確には、彼女のすぐ下にある血だまりだ。


彼女の奇行のせいで気付かなかったが、その血からはありえんばかりの魔力が感じられる。

魔力量だけで言えば、相当な実力者であることは間違いないだろう。


釣られるようにダインもそちらを見やると、やれやれと肩をすくめた。

「はぁ......なんでも、フレイヤ教徒は一日三回までしか祈っちゃいけないらしい。神へお願いする立場だから分を弁えろとかなんとか。だから今日は使えないんだとよ」


おかげで熊に殺されかけたんだぞ、とかぶつぶつ言っているダインに。

「そんな制限ないはずだけど...?」

「あれぇ!?」


彼にとって寝耳に水。

信じられないといった顔をしたダインに、大きくため息をつく。


私は負けたのだ。

会ったばかりの他人を信じ、あまつさえ命を預けあった、このパーティに。


「......はぁ、もういいわ。どっちみち私は負けたんだから」

そういうと、ポケットからあるものを取り出しダインへ手渡した。


「これ......魔道具か?」

それは小さな円盤の上に、赤色と白色が半分ずつ塗られた針が乗ったものだった。


「そう。これは強い魔力に反応する魔道具なの。.....お兄さんが目指す場所には、強力な魔力をもつ存在があるから迷うことはないと思うよ」


ダインはそれをまじまじと見つめると、

「ヒントっつーかゴールの場所教えるようなもんじゃねえか。こんなもん貰っていいのか......?あ、そうだ。これなんだけどよ」

ごそごそと鞄をあさり、彼が取り出したものは。


「......!!それをどこで.......ってそっか。部屋入ったんだもんね」

「ああ。ちょっと気になってよ。これに映ってるのお前...だよな?」


それは、私の家族の集合写真であった。

楽しそうに笑う私が兄に飛び掛かり、父が母に手を回して微笑んでいる。そんなありふれた家族写真。

この時はまだ、ペンダントを付けていた。


「......お前、フレイヤ教徒だったのか」

「もうやめたけどね。親が教徒だったってだけ」


「そっか。......なあ。お前、なんでこんなことしてんだ?写真見る限り、普通の女の子じゃねえか」

「今は違うみたいな言い方だねお兄さん?......別に、私には選べなかったってだけだよ。仕方がなかったの」


脳裏に、下卑た笑みを浮かべる父が脳裏に映る。

......いや、どっちみちダメだっただろうか。

蛙の子は蛙なのだ。


「自分の置かれた立場を理由に、私はたくさんの人を殺してきた。全部自分で背負うと言いながら、やっていたのは父と変わらない。父のせいだから仕方ないと、どこかで自分の行いを正当化していたの」


「その魔道具はせめてもの罪滅ぼしだと思って?......じゃあ私、もう行くから」

そう言い放つと、彼に背を向けて歩き出す。つい余計なことを言ってしまったと後悔していると。


「.....俺は、幼い頃に両親がどっか行っちまったけど、優しかったのは覚えてる。だからお前に言えることなんてないかもしれないけどよ」


「誰だって間違うことくらいあんだろ。人間は完璧じゃねえんだから。......大事なのは、自分の罪を認められるかどうかだと、俺は思う」


彼の言葉に、ピタリと足が止まる。

「......私は人を殺してきたんだよ?ただただ自分が楽になりたいがために、何人も」

「それを言える奴は悪を知覚できてる奴だよ」

「......私はお兄さんの仲間をたくさん傷つけた。お兄さんのことだって......!!」

「ああ。なんなら一回殺されたしな」

「じゃあなんで!......なんで私に、優しくするの?」


体を後方へ回し、手を差し伸べてくる彼に鋭い視線を向ける。

彼の真意を探るように、深く深く抉るように。


「うーん......お前が純度百パーセントの悪だと思えないから、かな」

「なにを...っ根拠に...!!」

「それだよ」

彼の指差す先、自分の頬に言われるがまま触れてみると、冷たい感触がした。


「お前だって、必死だったんだろ。俺より年下で、身寄りもいなくて。きっと博士ってやつに脅されでもしてたんだろ?......そんな重荷、背負う道理なんてねえよ」

「......!!」

「神が許さなくってもよ、その重荷を一緒に背負ってやるくらい、罰は当たんねえだろ?」


彼は目がくらむほど明るい笑みを見せ、こう言い放った。

「一緒に来いよ、グリム。ここから抜け出して、ちょっとずつ荷物を返していこう」


それはあまりにも眩しく、きらめいて見える提案だった。

しかし、


「......ほんとに、いいの?私は人殺しだよ?」

「ああ、大丈夫だ。お前は自分の罪に涙を流せる、根はいい奴だ」

「でも、でも仲間の人がなんていうか....」

「それなら......おい、ノラ起きてんだろ?」


ダインの声に体をビクっと跳ねさせ、気まずそうにノラがこちらを見てきた。

「.......フレイヤ様のご慈悲だ。どうしようもなくなったらフレイヤ教会へ来い。......食事くらい恵んでやる」


どこから聞いていたのだろうか。いつの間にか目を覚ましたノラが私を受け入れてきた。

「な?大丈夫だって。これまで下り坂だったんだから、後は上がるだけだ。知ってるか?」


そういうと彼は右手の親指をグッと上に向けると、

「確率は収束するんだぜ?......だから、絶対上手くいく。な?」

「なにそれ......ふふっ......」


彼の発言になんの科学的根拠もない。

しかし、そんな薄い論理に笑いがこみ上げ止まらなかった。

彼の言葉に、少し救われた気がした。


「よし!決まりだな!じゃあさっそく、魔道具の指す先へ出発~...ってあれ?」

「え?お兄さん!?ちょっと、お姉さんまで!」


彼は言い終わるや否や、その場に倒れこんでしまった。

同様に、ノラも机に突っ伏してしまう。


当然だ。方や重症、方や得体の知れぬ蘇り。

倒れてしまっても不思議ではない。


「仕方ないな~。『仲間』として、助けてあげますか」

そういうと、救急セットを取り出し二人へ処置を施す。

そして床へ三人川の字に寝かせ、毛布を掛けてやった。


「......私、これからやり直せるかな......お兄」

ダインが持ってきた写真に呟いて、裏口から外へ出る。

ここは地下であるというのを忘れさせるほど青々とした空の元、大きく深呼吸をする。


「とりあえず、退職届でもだそうかな~......って、はぁ。そうだよね。そううまくはいかないか」

後方の木の陰に気配を感じ、振り返る。

そこには、鬼の仮面をかぶった長身の男が立っていた。


男はゆっくりと近づいてくると、

「ああ。お前のような人間に、そううまい話はないぞ?......グリム・ホッブス」

仮面を外し、口から吐く冷気で刀を作り出す。


「モテ期ってやつ?今日はやたら男に言い寄られるのよね......フロスト」

「規約違反を犯したものを、博士は許さない。......その罪、お前の死をもって償え」

私の軽口を無視し淡々と、ただ冷たく罪状を述べてくる。


「悪いけど、死ぬわけにはいかなくなったの。......私のこれからを邪魔するやつは、死ね!」

私はチョーカーとステッキを取り出し、フロストに向かって飛び掛かった!

お久しぶりです!

お待たせしてしまいごめんなさい!

また高頻度で投稿していくので、よかったら星とコメント、よろしくお願いします!

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