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不滅のリーパーキング~死体の山で梯子を作れ。あなたに届く、その日まで~  作者: 柳原ミツキ
第一章

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グリム・ホッブス⑤

「オラァァ!!!」

「......っ!甘いわ!!」


勢いよく放たれた拳をひらりと躱した父は台所の方へ距離を取り、なにやら詠唱を唱え始めた。

すると父の背後から淡い光が立ちのぼり、無数の銀剣が姿を現した。

そして...


「セイクリッド・シルバリオンッ!」

「ちょっ!!......家の中でそんな攻撃魔法打つ奴があるか!?グリムにあたったらどうするんだ!!」


唱え終わると、それらは兄へ向かって勢いよく発射された。

狭いリビングを必死に走り回り、なんとか攻撃をかわしていく。

しかし、放たれた銀剣はなにかにぶつかるまで自動追尾するものであり、兄の体を切り裂くのは時間の問題であった。


「この罰当たりが....!!これは神聖な祈りの力だ!邪悪な魔法なんぞと一緒にするんじゃねえ!」

「ってぇ!!......だから、何度も言ってるだろう!過去の文献を漁った限り、祈祷と魔法は同じく魔力を行使しているんだ!俺たちのような聖職者は、『ソーサラー』なんだよ!!!」


リビングにあってた鉢植えや椅子を盾にして逃げ回っていた兄だったが、捌ききれなかった数本の刃が両腕、左大腿筋を切り裂き苦悶の表情を浮かべる。


「ぐぁぁぁ......!」

「お兄!!!」


私が悲痛な叫びをあげ近づくと。

「.....大丈夫だ、グリム。離れてろよ?絶対お前を傷つけさせはしないから」

ちらとこちらを振り向き、離れるよう手を振り微笑する兄。

いつだってそうだ。兄は私のことを大事にしてくれる。守ってくれる。


兄がいれば、私は絶対大丈夫。

兄の広い背中に少し安堵を感じるも、流れ落ちる流血に少しばかりの邪念がよぎる。


おそらく、兄がやられれば次は私が殺されるのだろう。

先ほどまでの悲しみが、いつしか恐怖へ塗り替えられていた。


(......お、お兄なら大丈夫だよね!だって、学校でも一番の成績だし!上級生相手にも勝ったって聞いたし!)

と無理矢理安心材料を引っ張り出し、震える手でペンダントを握りしめる。


(神様.....!!どうか、どうか兄に勝利を......)

神に祈るしかない自分が情けないが、ソーサラー同士の戦いに一般人が割り込んでも犬死にするのがオチだろう。

ならば私にできることは祈ることだけ、と必死に懇願する。


しばらく後手に回っていた兄だったが、剣撃が止んだその一瞬を見逃さず片手を突き出すと。

「セイクリッド・アイスプリズンッ!!」

「ぐあああああ!!う、腕がああ!!」


父の悲痛な叫びが部屋に響き渡った。

みれば調理場と父の右腕が、分厚い氷ででくっついている。


「くそっ!くそっ!......と、取れねえ!!」

「やめておいたほうがいい......無理に動かすと、腕が千切れるよ」

言うと、兄はゆっくりと父の元へ歩いていく。


「悪いけど、教会へ報告して聖騎士団を呼ばせてもらう。力を使った時点で、父さんは犯罪者だ」

冷たく言い放つ兄に、ハッと鼻で笑った父は。

「何が犯罪だ。おまえも祈祷使ってんじゃねえか......それに、無詠唱で放つ方がよっぽど犯罪だろ」


そう言う父の首元にナイフを当てると。

「だまれ。こちらは自己防衛目的だから罰されはしない。......父さんだってよく知ってるだろう?むやみに街中で力を使ってはいけない、とね」


……終わった?

状況を見れば、兄の勝利は確定と言っていいだろう。


「こ、こわかったぁ.....」

緊張がふっと解け、ぺたんとお尻を床につける。


「怪我はない?グリム。.......悪いんだけど、聖騎士の人を呼んできてくれないか?俺は、父さんを見張っとくから」


そう言ってこちらを振り返り、ニコリと笑いかける兄。その刹那、

「あ.....だめっ!!」

彼の背後に、凍ってないほうの手で空の酒瓶を手に持つ男が見えた。


「......う゛っ!!」

「まぬけ!!お前は昔からそうだ!詰めが甘いんだよ!このアホがぁ!!」

「お兄!!!!」


後頭部に強烈な衝撃が襲い、兄はドサッと床に伏してしまった。

頭には割れたガラスの破片がちらほら刺さっており、ドクドクと赤い液体を流し続けている。


「そ、そんな.....」

頼りにしていた、兄が敗れてしまった。

兄への心配とともに、強烈な絶望感が襲ってくる。


視線の先には割れて鋭利にとがった瓶を持ち、こちらをニヤニヤと凝視してくる父の姿が。

瓶からは赤い液体が滴り落ちており、兄に致命傷を負わせたことを象徴するかのように、こちらを威圧してくる。


こ、怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。

実の父に、ここまで恐怖を抱いたのは今日が初めてだろう。

ぶるぶると体は震え、嫌な汗が止まらない。


そんな様子を満足げに眺めていた父であったが、私から兄へ視線を移すと雰囲気が変わった。

兄のあまりの出血量に、動揺を見せ始めたのだ。

ご愛読ありがとうございます。

前回次でラストと言ったんですけど、嘘になっちゃいました。すみません(_ _)

たぶん、次でラストにできる....といいなあ。

面白かったら、星押してください!

では、また明日!

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