デスゲームⅫ 憎悪
「な...ななななんでお前がここにぃ!?確かに、確かに私はお前を殺した!この目で確認したんだ!間違いない!それが、どうして......!?」
両目を見開きわなわなと震えるグリムを横目に、静かにノラの傍へよる。
彼女は口からかすれた息をもらし、ぐったりと椅子に寄りかかっていた。
目の焦点が合っているのかいないのか、いままでに見たことのないほど衰弱していることが見て取れる。
彼女の容体は、一言でいえば重症であった。
顔から視線を下へずらすと、無数の赤黒い痣が飛び込んできた。
身にまとっていた黒い衣服のあちこちが、衝撃によってビリビリに破けている。
その中でも一際痛ましい部位が、机にだらんと伸びている左手であった。
その掌には短剣が突き刺さっており、よほど力を込めてえぐったのだろうか。
鋭い刃で抉られてできた裂傷から、今なお血液が流れ出ており、机から落ちて血だまりを作っている。
「......」
わかってはいた。わかってはいたが......
彼女が負った代償の大きさに言葉を失っていると。
「......ふっ。なんて陰気臭い面をしている。......せっかくの勝利が、台無しではないか」
ボロボロの体で虚勢を張り、口をほころばせるノラ。
「おま、しゃべっても大丈夫なのかよ!?......後のことは俺に任せて、少し休んでろ」
ノラの傍に担いでいたルイを横たわらせ、鞄を下す。
そして鞄の中から鎮痛剤らしきものを取り出し......使い方がわからんな。とりあえず左腕に刺しておくか。
「いつもなら、受け入れ難い申し出だな......。しかし、今回ばかりは...そう、させてもらう......」
言い返す気力も残っていないのか、すんなり申し出を聞き入れ、ドサッと机に倒れこむノラ。
あいつ、死んだわけじゃないよな!?......薬が効いた...のか?
と、若干焦燥感に駆られていると。
「答えてよ...っ!!なんであんた生きてるわけ!?生き返るなんてありえない、あっちゃいけないのよ!そんなこと!」
キッとにらみつけ、うっすら涙を浮かべる少女。
ま、そりゃそうなるよな......
ポリポリと頬を掻きながら、申し訳なさそうに口を開く。
「悪いが俺は特殊体質らしくてな......実質不死身なんだわ。制限付きだけどな」
なっ......!と驚いたまま表情が戻らないグリムに続ける。
「ノラが手に短剣刺してたろ?......お前には何のことかさっぱりだったろうが、あれが鍵なんだぜ?」
意識を失ったノラの手を取り、丁寧に短剣を引き抜く。
「これが血、厳密には魔力を吸うと俺の体が再生する。...剣が魔力を吸う限り、俺は不死身ってわけだ」
トントン、と指で剣を小突いて、グリムに見せつける。
「......彼の首輪...どうやって取ったの」
顔を曇らせた彼女の先には、すでに首輪がとれており綺麗な寝顔を見せるルイの姿が。
「ああ、あれか。......いや~大変だったぜ?というか、あの首輪を取るためのカギを探すのに、一番時間かけたんだからな?......お前、鍵の置き場所、肝が据わりすぎだろ。まさか...」
「まさか、お兄さんの枕の下とは思わなかった?」
彼女の冷徹とも諦めともとれるトーンの言葉に被せられ、少し緊張が走る。
「......ああ。俺の奇襲を予想してたってことはないだろ?......万一ルイが目覚めたとき、どうするつもりだったんだ?真っ先に見つけられて、外されてたらお前の不利になるだけだったぞ?」
そう、ルイの首輪の隠し場所は、寝かされていた寝台の枕の下だった。
木を隠すなら森の中、というやつだろうか。
「まぁ、なにはともあれ。......人質は取り返した。形勢逆転ってやつだな。お前とボタンの距離はせいぜい5m。一方俺はボタンにすぐ触れられる位置にいる。......この意味が分かるか?」
今なお暗い表情で俯く彼女に、まっすぐ人差し指を指しながら。
「詰み、ってやつだ。うちの仲間を傷つけた代償はでかいぜ?......持ってる情報、全部よこしやがれ」
俺は堂々と、勝利宣言をかましたのだった。
・・・・・・
不敵に笑う黒髪を、満足げに倒れた金髪を、心の底から憎悪する。
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで
なんで、あんただけ。
あいつと私、何が違うの?
私だって信じていた。私だって祈っていた。
毎日毎日毎日毎日毎日、頑張って。
……報われないのは、私だけ。
心を押しつぶさんとする負の感情に吐き気がする。
だんだん呼吸が浅くなり、視界が白く染まっていく。
膝が震え始め、耐え切れなくなった両足がぺたんと地面に寄りかかる。
私は意識が遠のいていくのを感じながら、ただ一つ、ただ一つだけ切実に願った。
それは、
「どうか、あの女も地獄に落ちますように......」
あまりにも醜い、呪いの言葉であった。
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次回グリムちゃんの過去が明らかに......!!
どうか、次回もお楽しみに!




