デスゲームⅧ 偽りの勝利
「正解は、『塩』だろ?」
「ピンポーン!正解です。よって第二試合の勝者は被験者チーム」
「「うそ!?」」
今、何と言った?塩、だと?
真横に座る黒髪の青年へ視線を送ると、その青年はこのデスゲームの支配人である少女、グリムへ指を突きつけていた。
「グリム、悪いが勝敗は決したぜ?なぜなら......言わなくてもわかるだろ?見つけちまったのさ、正解へたどり着く道しるべをなぁ!!」
ダインに正解を当てられ、動揺を隠しきれずにいるグリムは。
「ふ、ふーん?カッコよく決めちゃってるとこ悪いんだけど、盛大な勘違いだよ?運よくあたったのがよっぽど嬉しかったみたいだね?......第3試合はもっと厳しい条件にするから。じゃ、少し待っててね」
そう吐き捨て、そうそうに部屋を出ようとするも、ダインに呼び止められる。
「おいおい待てよ。俺の言ってること、伝わんなかったか?......これ以上やる意味ねーから降参しろって言ってんだ。さっさとルイを返して、ヒントを渡しやがれ。このしなしなメスガキが」
ダインの挑発にピタリと足を止め、振り返らずにグリムは問うた。
「......これは警告よ。あんまり舐めた口きかないほうがいい。私がその気になれば、連れてった仲間を即座に殺すことだってできるんだから。その上で質問するよ?......何を根拠にそんな妄言をたれてるの?」
先ほどまでとは打って変わって、冷たく重いグリムの声が部屋に木霊する。
「......ダイン。間違えた私がいうのもなんだが、ここは大人しくしておけ。ルイの身の安全は私たちにかかっている」
ルイの身を案じた私の言葉にフンっと鼻を鳴らし、スタスタ歩き去ろうとするグリムを、またもやダインが止めた。
「だから待てって......ったく。しょうがねえ、そこまで言うなら教えてやるよ。このゲームの必勝法ってやつをな」
「「!?」」
椅子に拘束されたままのダインは、言葉を続けた。
「ノラ、俺たちの予想に足りなかったのは何だと思う?」
ふいに質問され、心臓が跳ねた。
こいつ、いきなり何を言い出すかと思えば。
仲間の命がかかっているのだぞ!?
しかし、さすがのダインもノープランではないだろう。
とりあえず合わせておくか。
ええ~と、確か、正解は時計の時か分を参考にしていると予想していたな。
さらに、参考にするのは交互だと。
しかし、交互ではないことが一問目で判明した。つまり......
「時と分、どちらを参考にするか、その指針が必要だったな。もちろんわかっているさ。しかし......そんなもの、どこに......」
とダインの方を見ると、彼の指は、目の前の画面を指していた。いや、正確には......
「あの少女のイラスト......?」
私の言葉にコクリと頷くと。
「ああ。頭の中で思考を乱してくるこいつが、実は正解への糸口だったってわけだ。見てみろよ、こいつの口にあててる手」
言われるがままに視線を移すと。
「手......右手だな]
右手になにか仕掛けが.......いや、手というより、右が重要?
……まさか。
あることに気づき、バッとダインの方をみると、満足そうに頷いていた。
「気づいたみたいだな。口にあてた手が右か左か。それが時か分、どっちを参考にすればいいかを表してたんだよ」
......確かに、先ほどの時刻は16:40。右手を口に当てていたから参考にするのは40。
40だから塩、という結論に至ったわけか。
「なるほど......しかし、もし違っていたらどうするつもりだったのだ?ダインの残り解答権は一個だったし、間違えれば勝利は絶望的だったぞ?」
そんな私の問いに、ダインはグリムの方へ顎をしゃくると。
「正直分の悪い賭けじゃなかったぜ?明らかに、俺が『右手』って呟いたときのあいつの反応がおかしかったからな。......おかげで確信が持てたぜー!ありがとなーグリム!」
爽やかに手を振り、煽り散らかすダインに少し呆れる。
同時に、何もできやしないと決めつけていた、この男に助けられたという事実に強い苛立ちも感じていた。
自分一人で生きていく、すべて一人で解決していくと。
そう決めて生きていたが、なんという屈辱だろう。
「......礼はいわんぞ」
「急にご機嫌斜めだな!?お前の周り地雷原かよ!?」
ダインがなにか言っているが、そんなことよりも注意すべき人物が。
視線の先では、煽られたグリムがゆっくりと振り返り、こちらへ歩いてきていた。
俯いていたので表情は読み取れないが、放つ威圧感が増している。
「おっかねえなぁ、おい。で、でも、いくら威圧したって無駄だぜ?もう種は割れてんだ。お前の勝ちはもうねーよ」
ダインが少しビビりながらも、勝ち誇った顔で言い放つ。
確かに、もうこちらの勝ちは決まっているように思える。
……しかし、妙な胸騒ぎがするのはなぜだろう。
私の勘、特に悪いものを察知する勘は、なぜか当たってしまうことが多いのだ。
勘違いで合ってくれと固唾をのみこんでいると、グリムが顔を上げた。
それは、今まで感じたどの冷徹なものだった。
こんな顔に見覚えがある。
任務で何度も出会い、そして殺してきた。
......人を殺すと、決めたやつの顔だ。




