デスゲームⅥ 閃き
「何見てんだよ、うちのノラは見せもんじゃねえぞ!」
ビクッと体を震わせ、こちらを向いてくるノラを無視してグリムに続ける。
「お前は挑戦者じゃねえから会話しても問題ないよな?......っていうか、気が散るからこっち見んなよ!随分余裕そうにしてるが、先に俺に答えられても知らねーぞ!?」
とりあえず挑発ついでに牽制するも、特に気にする様子も見せず、たえず蠱惑的な笑みを浮かべるグリム。
「いや~私のことはお構いなく♡じっくり考えてね、おにーさん♡……でも気を付けてね?あと、十五秒だよ?」
何!?と画面のタイマーを見ると、残り15秒をちょうど切るところであった。
しまった!ノラの珍解答とグリムの視線に時間を奪われてしまっていた!
なにか答えないとまずい、と思考を巡らせるも16か4に関連するワードが思いつかない。
「あっ、言い忘れてたけど、一分以内に答えられなかったら解答権一つ剝奪するから♡」
「お前その大事なこと言い忘れる癖なんとかしろよ!上司とかに言われたことねえか!?社会人失格だって!!」
「私子供だからわかんなーい♡」
くそっ!そういえばこいつメスガキだった!
いや、そんなことよりあと五秒しかない!
なにかないか!?なにか!!
「......はーい時間切れ♡お兄さんの解答権、残り一つでーす!」
ちくしょう、何も思いつかねえ!
こうなったら、次の問題に賭けるしか......!!
画面に映し出された、俺の名前の横の丸が一つ消滅するのを横目にグリムへ視線を向ける。
非常に癪だが、グリムに一旦正解を譲ろう。法則の確信が得たい。
くやしげな視線を感じたのか、グリムの紫紺の瞳が細まった。
「なにジロジロ見てるの?......そんなに私の顔がタイプだった?♡」
「違うわ!いいからさっさと答えろよ。......慈悲はいらねえ」
俺の言葉にケラケラと笑い。
「わ~お兄さんカッコいい♡私に答えさせて、次の問題に行きたいっていうのがバレバレじゃなかったら、もっと良かったけど♡」
どうやら、俺の考えなどお見通しらしい。
「うーん、まぁいいよ?あっさり終わっちゃってもつまんないし。それに......くふふ♡すっかり術中にハマって醜態さらしたお姉さん(笑)をもっと見てたいし♡」
「な!?」
何か言いたげだが、大人しくグリムを睨みつけているノラ。
事実なので何も言い返すことができないのだろう。
貴重な解答権をドブに捨てた後ろめたさを感じているのかもしれない。
そんなことを考えていると、軽快な音が鳴り響いた。
「正解は、『鞘』だよね♡」
「「!?」」
「ピンポーン、正解です。」
どういうことだ!?
俺とノラは顔を見合わせ、先の時刻と照らし合わせる。
問題が提示されたのは16:38、答えは鞘。
となると、時ではなく分を参考にしたと考えるのが自然だろう。
しかし。
「今回は時のはずだろ......?」
これまでの傾向からいくと、時である16をもとにした答えになる、はずだった。
しかし今回は分をもとにした答えであった。
くそっ予想が外れた!!
交互じゃなくて、なにかそれを決める決定打が他にあるのか!?
ニヤニヤと見つめてくるグリムを脳内で殴りながら、これまでのことを振り返る。
なにか、なにか見落としてることはないか!?
......ああ、くそっ、イライラして集中できねえ......!
必死にこれまでのことを脳内再生するも、生意気な少女がちらつき思考を乱してくる。
こういう娘はわからせないといけないって相場が決まってんだ。
このゲームが終わったら森中に悲鳴を響かせてやる......!!
そんなことを考えているとなにか引っかかりを覚えた。
この感覚、どこか覚えがある。
グリムに似た生意気な女の子に、挑発されて苛立ったことがあったはずだ。
それも直近で。
それは何だったかとあたりを見渡すと、前の問題同様、右手を口にあてた少女のイラストが目に入ってきた。
「……右手」
ポツリと一言、口から洩れた。
「!?」
なんとなくいったそれに、ビクリと反応した影が。
その影に視線を向けると、正面を向いて微動だにしないグリムの姿があった。
そのまま見つめていると、すぐにこちらを向き直し。
「さぁ!第二問、行ってみよっか!」
「おい、ちょっと待てよ。今なんかおかし.......」
「問題です『冷たい態度、食べ物、顔、お祓い』、これは何を表している?」
俺の質問を無視し、強引に問題を出題するグリム。
画面中央には問題文。
時刻は16:40を示している。
そして少女のイラストは......右手を口に当てていた。
俺、そしてノラの解答権は残り一つずつ。
相談も禁止された状態では、迂闊に解答することはできない。
誤答はこのゲームにおける敗北を意味するだろう。
しかし、俺はある一つの法則に気づきかけていた。
ちらとグリムを見ると、一見平静を装っているようにピンと姿勢を正し、正面を向いている。
しかしよくよく見ると、首を一筋の汗が伝っているのが見えた。
……ふむ。
「......なぁ、申し訳ないんだが、あの生意気な少女のイラストを消してくれないか?どうにも集中力がそがれちまってよ。......別にいいよな?『ゲームに関係ない』だろ?」
そんな俺の要求にグリムはゆっくりと首を向けると。
「ええ~?私が書いたぁ可愛いグリムちゃんのイラストなんだけど?......消しちゃうなんてもったいなくない?それに、ルールだから消すことはできないの♡イライラしちゃうだろうけど、ごめーんね?♡」
「......そうか。ルールなら、しょうがないよな。ああ、仕方ない」
俺は要求を断られたことを気にも留めず、スッとグリムから視線を外す。
そして慎重に、しかし確実に、机に鎮座する赤いボタンに手を伸ばし、触れた。
「まっ......!」
それはだれの声であったか。そんなことはどうでもいい。
俺は静止を聞かず、思い切り力を込める。
聞きなれた軽快な音が響き渡り、それがどこか心地いい。
俺は口をゆっくりと開け、声帯を震わせた。
「正解は......」




