デスゲームⅤ ノラ、恥を知れ
パチンっとグリムが指を鳴らすと、再び椅子からベルトが延び、体の自由を奪ってくる。
ハートのマイクを掲げたグリムが口を開く。
「第二試合では、ルールが追加されるよ。それは、『挑戦者一人あたり、解答権は二回まで』、『挑戦者同士での会話禁止』それと『挑戦者のうち一人は一分以内に回答しなければならない』だよ♡」
解答権は二回まで。これって、なにか問題があるのか?
俺が小首を傾げていると、ニヤニヤと見つめてくる小悪魔と目があう。
「あれぇ~?お兄さん、もしかして......気づいてない?そっかぁ気づけないかぁ......うんうん、難ちいでちゅね~♡」
どうしよう、はしたない真似はしたくないが、体が動けないことをいいことに唾を吐きかけてやりたい。
そんな願望を理性で押しとどめ、思考を巡らせることにする。
二回しか答えられないってことは......うん、とにかく答えられる数が少ないってことだ。
慎重に解答しよう。
俺たちはどれか一問でも正解すれば試合には勝てるんだ。
そんなに大したことはない......ということにしておこう。
挑戦者同士の会話禁止。これは法則を見つけても、ノラに伝えられないということか。
…..なるほど、だから解答権二回が効いてくるというわけだ。
どっちかが法則を見抜いても、解答権が残ってなかったら答えられない。
最後の一分以内の回答は......シンプルに考える時間が短くてきついな。
でも、どっちみちグリムがすぐ解答するだろうし関係ないか.....?
そこまで考えて、ふとある疑問が浮かんできた。
「なぁ、間違えた場合の電撃って今回はないのか?」
「......くふふ、お兄さん気づいちゃった?今回も電撃が流れてリタイヤしちゃう場合、鬼のハードモードになるだろうね♡……でも安心して?グリムちゃんは慈悲深い少女!今回は電流は勘弁しといてあげる♡」
やけに良心的だな。
しかし、こいつのことだ。なにか裏があるに決まってる。
「おい、ノラ。わかってるな?」
俺が耳打ちすると、コクリと頷き小声で返すノラ。
「ああ、時計の時か分を見て考えればいい、だろう?これまでの法則からみて次は時。16か4をもとに考えれば勝てるだろう。......たぶん」
自信なさげなノラの表情に、こっちも自信がなくなってくる。
ここまでの推論はあくまで予想。間違っていれば一気に敗色が濃厚になる。
となれば、第二のプランを考えておくべきだろう。
そこで俺はふと、できればやりたくない最終手段を思いつく。
そして、ひそひそとノラに端的に伝え、あるものを手渡した。
そんな俺達の行動を見かねて、グリムが画面を切り替える。
「何コソコソ話してるか知らないけど、むーだ♡ささっとゲームスタートしちゃいまーす♡」
そうして、目の前の画面の中央に問題が映し出された。
画面左下には、俺とノラの名前の横に丸が二つ書かれている。これが解答権だろうか。
画面左上に時刻16:38、一分のタイマー、そして右下に右手を口にあてた少女のイラストが。
冷たい機械音が、再び部屋に響き渡る。
「問題です。『漆黒、武具、安全、硬い』これは何を表している?」
俺は、頭上にクエスチョンマークが浮かぶのを強く感じた。
落ち着け。冷静に、法則から見極めろ。
16か4に関連する答えになってるはずなんだ。
そう思い、16と4の読み方をこねくり回す。
あーでもないこーでもないと黒くて硬い武具を考えていると、隣で軽快な音が鳴った。
ギョッとしてそちらを見ると、したり顔のノラがボタンを押していた。
「ふふっ、私に掛かればこんな問題を解くなど造作ない!正解は『イムリンの箱舟』だろう?」
……なんだそれ。北の国の神話にはそんなものが出てくるのか?
南の国出身の俺にとって、初めて聞く単語だ。
北国出身のノラがいなければ、正解は不可能であっただろう。
おそらく、イムリンのイムが16から来ている。
やるじゃないか、ノラ。
ドヤ顔なのが少しだけうざいが、今回はちょっとくらい褒めてやっても......
「ブブー!!不正解!!」
「ええ!?」
画面のノラの横の丸の一つが消滅する。
予想外だったのか、ひどくショックを受けて俯くノラ。どうやら本気で間違えたらしい。
……俺のさっきまでの感心を返せ。
イムリンは何者なんだとか、箱舟は武具なのかとか、色々ツッコミたくなるが会話禁止なのでペナルティを恐れ、口を噤む。
頭にモヤモヤを残していると、何やら視線を感じた。
ふとそちらを見ると、ニヤニヤとこちらを見つめるグリムの姿が。




