メスガキ少女、グリムちゃん
ダイン達は晴天の青空の下、迫りくる魔物から全力で逃走していた。
「貴様...!!フレイヤ様を愚弄したな!?......おい、この手を放せ!魔物の前に貴様を葬ってくれる!」
「うるせえ頭ダイヤモンド聖騎士!てめえが下らねえポリシー掲げてるせいで壊滅寸前ってこと、忘れんな!!」
「言い争ってる場合ですか!このままだと追いつかれます!なんとかしないと......あっ」
ぎゃあぎゃあ争う二人を尻目に周囲を観察していたルイは、あるものを見つけた。
「ダイン君、見てください!あれ、僕が言っていた骸骨の建物です!」
エレオノーラの髪の毛を引っ張りながら目を配らせると、数十メートル先に気味の悪い建造物を視認した。
多数の人骨が固められたような角ばった建造物。そして、それにはかまくらのように入り口が一つ存在している。
「......!よし、あそこに逃げ込むぞ!...って痛、痛いって!お前、脛を蹴るのは反則だろ!?」
「ふん、あれが貴様らの言っていた目的地とやらか。いいだろう、あの魔物をこの手で葬り去ってやりたかったが、祈りはもう使えんしな」
不機嫌に鼻を鳴らし、ダインの脛を蹴るエレオノーラ。
こいつ、まじで覚えてろよ......!!
意外な脚力から放たれる蹴りに涙を浮かべ、全力で入口へ走るダイン。
魔物の足音がすぐそばまで迫ってきている。
息を荒げながら必死で走るも、距離は縮まるばかりだ。
「くそっ、このままだと...ひっ!!」
「グオオオオオ!!」
雄叫びとともに魔物が爪を振り、ダインの服を掠める。
布の裂ける嫌な音が耳元で弾け、背中に冷たいものが走った。
次の攻撃は避けられない。そう感じた刹那、横からエレオノーラがダインの背を思いっきり蹴り飛ばした。
「なっーーーぶっ!?」
「こっちの方が早いだろう!!フレイヤ様の慈悲に感謝するんだな!!」
容赦ない衝撃に体が前方へと吹き飛ばされる。
背後では、ダインのいた付近に魔物の深い爪痕が残されていた。
ダインは勢いのまま入口へと体を滑らせ、窮地を脱する。
遅れて、ルイの首根っこを掴んだエレオノーラが入り込んできた。
「おい、ぼーっとするな!さっさと階段を下りるぞ」
エレオノーラが顎をしゃくった先を見ると、地下へつながる階段が目に入ってきた。
明かりはなく、ただ暗闇のみがダイン達を待ち構えている。
「ゴアアアアア!!」
魔物は怒号を室内に反響させ、入り口を鋭利な爪で斬りつける。
カラカラと骨の破片が周囲に飛び散り、建物全体が大きく揺れる。
「迷ってる暇はねえようだな」
「先頭は僕が行きます。ダイン君は、その後を付いてきてください」
ルイに導かれ、ダインは壁に手を添えながらゆっくりと階段を下りて行った。
そんな様子を見たエレオノーラは、
「なさけない男だな......もじもじしてないで、さっさと降りろ!」
「ちょっ、お前!押すなって......っておわああああ!!」
「ちょっ、ダインく....わあああああああああ!!」
エレオノーラに背を押され、バランスを崩したダインの体が前方へ倒れる。
ドミノのようにダインに押されたルイもバランスを失い、二人そろって階段を転げ落ちていく。
角ばった階段に体を打たれながら転がり続けると、硬い地面へ放り出された。
「ぐっ!!......痛てて....!!」
「うう.......だ、大丈夫ですか、ダイン君...」
「あ、ああ。......おいエレオノーラ!何しやがんだ!」
コツコツ、という音を響かせ、階段から優雅に下りてくるエレオノーラ。
「あまりに遅かったものだから、ついな。......すまない、私はせっかちなんだ」
「......ったく 。お前、もう少し協調性をだな」
「そうですよ、僕たちはパーティなんですから。......というか、ダイン君に怪我をさせるとは、いい度胸ですね??」
エレオノーラに不平不満をこぼし、ルイが危ない目つきで睨んでいると、突然暗闇に明かりが灯った。
急に視界が明るくなり、眩しさから目を細める。
「気を付けろ!!敵襲かもしんねえ!って.....え?」
警戒するダインから気の抜けた声が漏れた。
三人の視線の先には、複数の机と椅子が置かれている。
それぞれの机には赤いボタンが置かれていて、壁には大きなモニターが張られていた。
モニターには、デカデカと「問題です♡」と、表示されている。
「うそ、だろ?」
「これって、あれですよね」
「......はぁ。ここの開発者はバカなのか?」
ダインの気の抜けた声が、小さな空間に木霊した。
「クイズ番組じゃねえか」
・・・・・・
とりあえず、席へ座る三人。
すると前方に備えられたモニターの画面が移り変わり、部屋の扉から一人の少女が出てきた。
「ようこそ!グリムちゃんの~ボーンテッドダンジョンへ!」
そういって皆の前に躍り出る黒髪の少女。
紫紺の瞳を輝かせ、ツインテールがぴょこぴょこと跳ねる。
「みんなにはクイズに答えてもらいまーす!私が先に答えたら、みんなの首が閉まっちゃう!」
そう言うと、天井からアームが出現し、あっという間に三人の首にチョーカーが付けられた。
椅子からはベルトが出現し、体を拘束してくる。
「え、ちょっ.......!!お前、急に何つけやがった!」
ダインが問うと、いたずらな笑みを浮かべるグリム。
「おにーさん達の首には~特製チョーカーを付けちゃいました!さっきも言った通り、私に先を越されちゃうと首が閉まっちゃうの!」
グリムは軽快なステップでダインの前に立ち、チョーカーをツンツンと指でつついた。
「ワンちゃんみたいで似合ってるよ~お・に・い・さ・ん?♡……あっ、ちなみに三回間違えたらチョーカーが完全に閉まって死んじゃうから。せいぜい頑張ってね~♡」
「ちょ、ちょっと待ってください!僕たち、まだ参加するとは......ぐっ!」
ルイが抗議しようとすると、グリムが指をパチンと鳴らした。
すると、三人の椅子からベルトが飛び出て、拘束する。
「あ~だめだめ。イケメンなお兄さん♡ここに入ってきた時点で、参加は確定。脱出する手段は、私にクイズで勝つしかないんだよ~?」
勝ち誇った顔でルイに近づき、鼻をデコピンするグリム。
「......おい、小娘。お前は何者だ。まさか博士の助手、などとは言わないだろうな?」
エレオノーラがグリムを睨みつけると、むむむ~?と凝視し、ぷふっと噴き出した。
「ちょ、ちょっと待って~!笑笑。被験者さんたちは~素敵な『おにいさん』しかいないって聞いてたのに........プークスクス!お、おばさんが混じってるんだけど~!!アハハハハ!!」
「貴様ぁ!!殺す!絶対殺す!!......くっ!!くそっ!!このベルト、なかなかの強度を...!!」
グリムの挑発に青筋を立て、ベルトを外そうとじたばたするエレオノーラ。
グリムはそんな彼女の前に立つと、エレオノーラの豊満な胸をビシバシ叩いた。
「ねぇねぇ!このッ!大きくて邪魔くさい『脂肪』!!どうした...ッの!......おばさん、体脂肪率いくら?ねえいくらなのか教えてよぉ!お・で・ぶ・さ・ん!♡」
「くっ......貴様ぁ!!ぶっ殺......!!」
グリムの辱めに顔を歪ませ屈辱に耐えていたエレオノーラだったが、急に不敵な笑みを浮かべた。
「......!!ふふ、なんだ。貴様、胸がコンプレックスなのか?可哀そうに......いや、いっそ羨ましいともいえる。『貧乳』の貴様は感じたことがないだろう?......男の獣のようないやらしい視線をな!!そうだろう?ダイン!」
「急に俺に振るなよ!!......だがまあ、胸は大きいに越したことはない!!」
ダインの性癖開示とともに、グリムへ反撃の一手を刺すエレオノーラ。
グリムは頬を赤らめこちらを睨みつけると、懐からボタンを取り出した。
「......!!ふーんだ。おばさんの負け惜しみとか、ちっとも効かないんだけど。けどま、今の状況わかってないみたいだし、『わからせ』てあげる」
そう言ってグリムがボタンを押した瞬間、三人に強力な電流が走った。
「ぐああああああああああ!!!!」
全身が硬直し、強烈な痛みから意識が一瞬飛びかける。
鼓動が早くなり、どくんどくんと、全身が脈打つのを感じる。
「どお?今の状況、わかった?あなたたちは私より、下の立場なの。......そのすっかすかの脳みそに行っても分かんないだろうから、『痛み』で覚えさせるね?♡」
目の前がチカチカする。体はしびれ、思うように動かない。
......くそっ、生意気なメスガキの声が脳内で響いて煩わしい。
いまだ痛む体をなんとかずらし、ほかの二人を視界に収める。
二人ともぐったりしているが、どうやら意識はあるようだ。
「......おい、お前ら。無事か......?」
「え、ええ。なんとか......」
「......くっ。生意気な小娘め......後で後悔させてやる......」
ボロボロになった三人を横目に、上機嫌で席に着くグリム。
「さ、始めよっか」といって、グリムもチョーカーとベルトを締める。
「ルール説明、はじめまーす♡」




