62.5 物語の主人公
本が好き。
ミステリー、ホラー、コメディ、SF、ファンタジー、そして恋愛。
乱読派でジャンルを問わず色々読んできた。本を読むという行為は私の精神安定剤。学校に馴染むことが出来なかった私の唯一の救い。
知識を増やすという利点はあくまでおまけ。
学校での休み時間というものはとにかく長い。その長い時間を埋めるのに勉強をするのは周りに「ガリ勉」という認識を植え付け、目を付けられるもの、ということを身を持って知った過去の私は暇な時間に読書をするようになった。
これならただ勉強するより変な印象を持たれずらいし人から話しかけられることもない。
なにより、読書に没頭する間は周りの視線が気にならなくなる。
だからこそ、『物語と現実は違う』という事実を誰よりも理解しているつもりだ。
大概の恋愛小説では序盤に登場する2人が結ばれたり、近しい関係の2人が付き合う、という展開が多い。それぞれの運命的な出会いがあって、小さなイベントを積み重ねていく。そして互いに惹かれていく。
王道の展開だと思う。
私は友達がいない。同性とさえそうなのだから異性との関係などあるわけがなかった。
その人の人生ではその人が主人公。
そんな1文を読んで私は心の中で反論した。
だったら、私の物語は何なの?
何をしても恵まれず、結果を出せず、両親を悲しませ、失望させるだけ。
努力しただけ結果になる?
誰が言ったの、そんなデマ。
この世界は実力至上主義だ。
過程はどうあれ結果を出した者のみが主人公となれる。
私はそんな権利すら貰えなかった負け犬。
そんな私のつまらない物語で高校1年の秋。
やっと、運命に出会う。
初めはただの友人として見ていたその人に、私はいつの間にかそれ以上の何か特別な情を抱くようになっていた。
傍にいるだけで鼓動が早くなる。いつもその人の姿を探してしまう。これまでの思い出を思い出して心が温かくなる。
あるわけない、『未来』を想像してしまう。
視線を斜め前方に向ける。
どこか退屈そうな、眠そうな顔で黒板を見る彼。1番前の席だから寝る訳にいかないという心が透けて見える。
...あ、欠伸した。
昼休み終わりの5限目だから余程眠いのかな。
眠気を飛ばそうと首を左右に振る彼を見て口元が緩みそうになる。だが、この場で1人笑って周りに変な人認定されては堪らないので唇を噛んでやり過ごした。
気がつけばいつも視線の先には彼がいる。
だけど、ずっと見ているからこそ気がついた。
彼の視線の先にいる彼女のこと。
物語では、主人公とその相手は結ばれる。
選ばれた登場人物だけは。
じゃあ選ばれなかった人は?
主人公さえ良ければ物語はハッピーエンド?
そんなこと考えても無意味だ。
物語は大抵ご都合主義なのだから。
だから。
どんなに願っても、願っても。
私は物語の主人公にはなれない。




