56 図書委員
委員会とは何故強制参加なのか。
去年通り美化委員にしようかと思ったが思ったより希望者が多かったため今年は人気のない図書委員に入った。
4月中旬には委員会を決め月1で委員会の集まりが行われる。
その他、図書委員は持ち回りで昼休みの貸し出し当番が言いつけられた。
当番の日は早めに図書室に行ってカウンターに座っていなければならないので当番の人は特別に図書室の司書室で昼食を食べることが許されている。
気温は寒くもなく暑くもなくとちょうど良く、開けられた窓からは穏やかな風が吹き込んでいた。
同じ学校内とは言ってもいつも騒がしい教室棟とは別空間のようだ。
司書室には教師が3人程在籍しているがそちらにはほとんど意識が向かない。
それよりも
「......」
目の前でゆっくりと箸を動かす『もう1人』の同じクラスの図書委員を盗み見る。
静かすぎる空間で箸を動かしたりコップを置いたりという普段なら気にもしない小さな音がやけに気になってしょうがない。
ぶっちゃけ超気まずい!!
何か話した方がいいのか。
だがここには教師もいるし普通に話すだけでもし難い。
小さな声で話しかけたとしても会話は筒抜けだ。こんな静かな空間では聞きたくなくても聞こえてしまう。だから教師陣も会話1つないのかもしれない。
そうこうしているうちに目の前では弁当を食べ終えたらしく片付けが行われそのまま荷物を手に司書室から出ていった。
気まずい。
とりあえず1年同じ委員会である以上会話ゼロという訳にも行かない。元々の気まずさはあったにしろ『彼女』との関係をここで再度繋ぎ合わせなければ。
※
「......」
図書カウンターに2人並んで座る。
弁当を食べた後だからか妙に眠い。
手にした英語の単語帳から目を離し僕はちらりと隣を見る。
いい加減どうにかしないとな。
なんか喧嘩した訳じゃないのに喧嘩したみたいな空気あるし。
「なあ...」
そう話しかけると僅かに長い髪が揺れ、髪で覆われていた顔が顕になる。そしてやっとその目がこちらに向けられた。
だがその目はすぐ逸らされる。
「な、何...」
淡々とした声でそう言われた。
「いや、あのさ......」
何を話そう。
新しい距離感に戸惑って恥ずかしがっているうちに離れてしまっていた2人の距離。
もう彼女と―――詠子とは1ヶ月近く話をしていない。
「最近...どうだ?」
「どうって...まあぼちぼち...かな」
「おう、そうか」
......
会話終了!
まさか僕嫌われてる?
なんか嫌われるようなことしたっけ。
必死に最後に話してから後の記憶を思い出しているとクスッと急に詠子が笑いだした。
「な、なんだよ」
「いや...ごめ......なんかおかしくて」
詠子は笑いを堪えて
「ごめん。最近あんま話せなくて。教室で話すと変な噂されちゃうしやめようって思ったんだけどそしたら思ってたより接点なくて」
「そんなの、気にしなくていいのに...」
詠子は首を振り
「私浮いてるから」
詠子は膝に置いていた本をパタリと閉じて続ける。
「話さないうちに話し方すら分からなくなっちゃって。それにまだ変な感じがするんだ。今までは放課後くらいしか、透に会う機会がなかったのにそれが1日の大半を過ごす場所で会えるなんて」
「まあ、それはな」
長く時間を共にするほど相手の事が見えてくる。
席が離れていても、話せなくてもそれは同じだった。
本を沢山読んでいること。指名されれば直ぐに答えられること。テストでは相変わらず良い点で先生に褒められると顔を赤らめること。
僕以外にもきちんと人と付き合って行けること。
「ねぇ、今度の中間テストまた勉強会、どうかな?」
視線を逸らしたまま詠子はそう提案した。
「え、いいのか。そりゃ、僕としては願ったり叶ったりっていうか...」
コクコクと詠子は首を振る。
「私も、2人の方がいいし...」
ドキンと胸が高鳴った。
その勘違いを否定するように詠子は顔を瞬時に真っ赤に染めて否定する。
「あ、ほら!監視の目があると集中しやすいっていうか...」
「わ、分かってるって」
昼休みももう終わり。
カウンターにぼちぼち貸出の生徒が来出した事で会話は途切れる。
詠子が本を受け取ってパソコンで貸出処理、僕が返された本を所定の位置に戻していく。
途中そのやり取りの中少し手が触れ2人して慌てて大袈裟に飛び退く、なんてこともしながら時間は流れ昼休み終わりのチャイムが鳴り響いた。




