55.5 生徒会
「那須くん」
放課後の委員会の集まりが終わった後、そう呼び止められました。
プリントにメモする手を止めペンを置き立ち上がります。
「ちょっといいかい?」
そう言う彼女は八戸咲華生徒会長。
キリッとした目元とショートポニーが特徴的。いつも校則を完全に守ったキッチリした制服の着こなしをしているがダサさは感じられず会長が着るだけで品を感じます。
そんな周りとは一線を画しているカリスマ生徒会長が目の前にいました。
「大丈夫ですよ」
緊張で震えそうになる声を抑えてそう言うと
「那須くんの噂はよく耳にしている。積極的に色々してくれているし委員会も真面目にやってくれているそうだね」
「それは...」
やりたくてやっている訳ではないんです。
やらざるを得ないからしているだけで。
そんな本心はもちろん言えません。
クラスが変わっても学年を超えた場であっても私はみんなの望む『那須祈』であることを求められます。
自分の限界を超えて、足りない分は補って、頑張ってきました。
努力さえすれば、私はみんなの望む『那須祈』でいることが出来るから。
今ここにいるのもそう。
元々委員長なんて器じゃない。
やりたくなんてなかった。
人前に立つことも本当は苦手なんです。
だけどクラスメイトに推薦されたら断れるわけないんです。
見栄を張ってここまでやってきました。辞めたくても辞められない所まで。
「当然です。私もお役に立てて嬉しいですから」
結果、また心にも思っていないことを言ってしまいます。
「そうか。そう言って貰えて私も嬉しいよ」
私の本心など知りもしない生徒会長はそんな風に能天気に笑った。
「あ、そうだ。そろそろ生徒会長選挙があるのは知ってるよね?」
会長は自席に戻り何やらプリントを取って戻ってきます。
とてつもなく嫌な予感がしました。
「那須くんさえ良ければ会長戦、立候補しないか?」
嫌です。
絶対に。
「いやー、実はそろそろ候補者の受付締切日なのに誰も会長に立候補してこなくて。困ってたんだ」
私はそんな器じゃないですから。クラス委員さえいっぱいいっぱいなんですよ。
「那須くんなら学校の人気者だし、何より真面目で仕事もすぐに覚えてくれる」
違います。
元々私は要領が悪い方です。
すぐに覚えられるように見せるために家で猛勉強して流れを頭に入れているだけで。
「1度考えて見てくれないかな?」
会長が、あの学校中から一目置かれたカリスマが頭を下げる。
やめてください、やめてください、やめてください。
「...そうですね。考えて、みます」
そんな言葉が口を出た。
「本当かい!?ありがとう!」
会長はそう言い私の手を握りました。
まだ『考える』と言っただけで別に『引き受ける』だなんて言っていないのに。




