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努力する彼女と努力をやめた僕  作者: 成浅 シナ
2年生編
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53 視線

変だ。


そう気づいたのは2年生になって1ヶ月経ったときだった。



既に新学期が始まって1週間が経過した水曜日の3限目英語の授業。

僕はワークブックの問題を解きながら教師の目を盗んで視線を後ろに投げかけた。


視線の先には2人のクラスメイト。



まず詠子。


新クラスになり初めはクラスメイトの明らかな好意の視線に常に晒されてはいるものの持ち前のコミュ力不足からかなんとなく『観賞用美少女』的位置に収まっていた。

詠子自身、初めは居心地悪そうにしている様子もあったが少しして慣れたのか今は休み時間も1人席に座って読書をしていることが多い。


この1ヶ月、クラスメイトになったものの教室での会話はなかった。

注目の的の『1つ』になっていて堂々と会話出来るほど僕も詠子も神経は図太くない。


というか教室どころか始業式の日以外携帯含め何の会話もしていなかった。

何となく続けていた放課後勉強会も元から約束して会っていた訳では無いため僕のわがままでテスト期間以外に付き合って貰うのも悪い気がして誘えない。


1度距離が開けば何となく話しかけずらくなる。

普通の話をしようにもそう言えばわざわざ携帯使って勉強や会う約束の打ち合わせ以外での連絡を詠子とはしたことがなかったことに気がついた。

結果書いては消し、書いては消しを繰り返してという何とも乙女チックな行動を取って「何やってんだ僕は」と虚無感に襲われるという行動を起こしてしまう。




そして、もう1つの違和感は言わずもがな、クラスの中心人物である那須祈だ。


祈の口調もガラッと変わったやたらテンション高めの学校バージョンにも少しずつ慣れてきたが当然、学校では接点があることを隠しているため会話なし!

それどころか始業式以来全く連絡もしないという詠子以上に溝が深まっていた。


毎日顔を見ることが出来るという幸福感以上にそれまで割と頻繁に連絡を取っていたのにそれがバッサリ無くなった反動が辛い。


「え?もしかして僕何かした?」と心の中で何度不安になったものか...




練習問題を解く時間が終わり教師が手持ちのくじでランダムに生徒を指名し答えさせていく。


名前を呼ばれ生徒が立って回答する。当然その間他の生徒は当てられた生徒に注目する。


問題数も多いしクラスのほとんどが当たりそうだ。


「永田さん、ここの答えは?」


と詠子が指名され難なく正答を口にする。



ん...?



詠子の席は窓側後方。僕の位置からだとほぼ正反対の位置になる。


でも。


今詠子が座る際一瞬こっちを見たような。



勘違いかもしれない。

いや、恐らくそうだ。



そう思って詠子から視線を逸らそうとした瞬間、また目が合う。

今度は、ハッキリと。



いちいち顔を向けるのは面倒だと教室の端にいる生徒は大体が体の向きを横にして椅子に座っていた。

だから特別目立つことでは無い。


が、クラスメイト達がいる中これ以上目を合わせ続けるのも変だ。それに気恥しい。



詠子はいつも通りの表情で何ともなかったように次に指名された生徒へ顔を向けた。



3秒程の視線の交差。


普段は何とも思わない僅かな時間がこんなに長いと思ったのは初めてだった。

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