52 離れ離れ
「ありえない、ありえない、ありえない、ありえない〜〜〜っ!!」
「落ち着けって」
選択教室で当たり前のように同じ机を囲む直樹は頭を抱えている。
「なんで担任が『大迫』なんだよー!!」
2年3組担任大迫健一。担当科目『数学』。
去年からの直樹の天敵が担任になったことで始業式が終わるや否や、直樹が教室に飛び込んできた。
その流れで自然と昼食を囲むことになったのだ。
今日は始業式とはいえ今日は午後からテストがある。
しばらくじたばたしていた直樹はのっそりと顔を上げ
「そう言えば1組って那須と永田がいるんだって」
突然2人の名前が出てドキッとする。
「ああ」
なんでもないようにそう言うと
「大変そうだよな。那須はともかくいきなりめちゃくちゃ美人になった永田と同じクラスだし色々起こりそう...」
「色々ってなんだよ色々って」
教室ほど騒がしくはないにしても空き教室内は大小3、4くらいのグループで賑わっている。
弁当を食べながら、あるいは早々に食べ終わってテスト勉強する者もいた。
僕もパンを片手に国語の春期課題のページを捲っていると
「真面目だなー」
直樹が僕に視線を向ける。
「赤点は取りたくないからなー」
テストは全部で国語、数学、英語の3つ。
初日から結構なハードスケジュールだが、県内屈指の進学校だし仕方ないと諦めるほかない。
一方の直樹は国語と英語の課題だけ机に出し面倒くさそうにパラッと捲っていた。
「おーい、もう一科目忘れてませんかー」
わざとらしくそう言うと直樹はニッと笑みを浮かべ
「だいじょぶ!課題テストは赤点取ろうが学期末の成績に響かないしペナルティないから!」
「いや、響かないだろうけど教師に目をつけられるのもやだろ...」
まあ、既に目をつけられている直樹からしてみればそれも関係ない...のか?
「理系教科以外は良いのにな」
直樹は文系科目だけで言えば学年でもトップクラスだ。特に国語は毎回堅実に掲示される順位表に名前を載せている。
直樹は顔色を青くさせ
「あいつが...あいつが悪いんや...理系科目さえなければ総合順位結構いいのに...」
グワーッとまたもや机に突っ伏す直樹の姿がいたたまれずその肩を僕はポンと叩いた。




