第42話
冬に入ってから、政務室へ運ばれてくる紙の端が少し硬くなった。
紙そのものが変わったわけではない。外から持ち込まれた書類が冷えているだけだ。暖炉の近くへ積んでおけばすぐ同じになる。
その朝、商務を担当する官吏が持ってきたのは、レシア共和国と取引する商人たちからの申し立てだった。
「レシア側で負担が増えたため、こちらも同等の措置を取ってほしい、との要望です」
俺は最初の紙を読んだ。毛織物、金属製品、乾燥させた食品。荷はそれぞれ違うが、書いてある不満は似ている。
以前より余計な金を取られる。荷を止められる。倉へ入れさせられる。検査が増えた。そのせいで到着が遅れる。
途中には、はっきりとこう書いてあった。
レシアが関税を引き上げた。
「いつからだ?」
「早いものでは1か月ほど前からです。ただ、全ての商人が同じ日からと言っているわけではありません」
「場所は?」
官吏が少し間を置いた。
「そこが、揃っておりません」
もう1枚めくる。
国境を越えてから負担が増えた、とだけ書くもの。ある都市へ入る前から金を取られたというもの。倉へ入れた後に請求されたというもの。
確かに、これを全部まとめて関税と呼ぶのは早い。
「公館から何か来ているか」
「確認いたしました。中央政府による新たな全国関税は公布されていない、というのが直近の報告です」
俺は顔を上げた。
「では、商人が全員勘違いしている?」
「そこまでは申し上げられません。軍務側からも、問題のある経路では荷車の滞留が増えているとの報告がございます」
直近の公館報告では、全国関税の新たな公布は確認されていない。それでも商人は余計な金を取られ、荷車も止まっている。国境閉鎖でもないらしい。
嫌な種類の話だった。いや、面白いと言った方が俺らしいかもしれない。
国王になって間もない頃に外国の資料を集め始めたとき、同じ国の情報が公館にも軍務にも商人の手元にもばらばらにあるのを見て、どこに何があるかだけでも分かるようにしておけと命じた。あの一覧が、ようやく役に立つ。
「ケラーを呼んでくれ。それと、この件に関係する資料を、今の一覧から拾えるだけ拾わせろ」
「どこまで遡りますか」
「まず2か月。足りなければ広げる」
官吏が一礼して出ていった。
俺は商人たちの申し立てをもう一度見た。
報復しろ、とまでは書いていないものも多い。だが、レシアの商品だけこちらでも余計に取るべきだ、同じことをして分からせるべきだ、という言葉は何枚かにあった。
気持ちは分かる。自分だけ損をしているように見えるとき、相手にも同じだけ損をさせたくなる。問題は、その前に相手が本当に何をしたのかが分かっていないことだった。
***
エルンスト・ケラーが来たのは昼前だった。
以前なら、国王本人に呼ばれたときは扉をくぐるだけで肩が上がっていた。今でも礼は固いし、距離も近くはないが、少なくとも紙を持つ手まで固まることはなくなった。
机へ置かれた束は、思っていたより厚かった。
「2か月分です」
「もうこれだけ出たか」
「一覧がございますので、所在を探す時間は以前より短くなりました。ただ、内容は揃っておりません」
ケラーはそう言いながら、最初の紙ではなく束の上に置いた薄い一覧を俺の方へ向けた。
日付。作成者。対象地域。誰が何を見たか。どこから聞いたか。
数字より先に、そちらが並んでいる。
「公館報告は3週間前。レシア中央政府では、新たな全国関税の公布なし。こちらは公館員が政府側へ確認した内容です」
ケラーが指を少し下へ動かした。
「商人報告は最も新しいもので6日前です。追加負担があったという報告は11件。ただし、全て同じ場所ではありません」
「11件のうち、同じ経路は?」
「7件です。残り4件は別経路ですが、そのうち3件は『知人から聞いた』という記載で、本人が支払ったものではありません」
俺はその欄を見た。
「では、本人が実際に払ったと確認できるのは?」
「今の資料では8件です。ただし、8件とも同じ名目ではありません」
ケラーは別の紙を開いた。
ある商人は検査のための支払いと書いている。ある商人は倉へ入れられた費用。別の商人は計量のやり直しと荷扱いの料金。
一括して「関税」と書いていた申立書より、ずいぶん景色が違う。
ケラーは軍務側の欄へ指を移した。
「国境そのものを閉鎖した報告はありません。兵の大規模な増加も確認されておりません。ただ、同じ経路の2か所で荷車の滞留が増えています。理由までは確認しておらず、軍事上の通行障害ではない、とだけあります」
軍務側が見ているのは、軍が動いていないか、橋が落ちていないか、道が封鎖されていないかだ。商人が倉へ入れさせられて何ターラー余計に払ったかまでは、報告の中心ではない。
ケラーは続けて金融側の資料を示した。
「こちらは、レシア方面への送金を扱う複数の金融商から、商務側を通じて得た範囲です。個別の顧客帳簿は出させておりません。レシア全体との取引条件が悪化したという話ではありませんが、問題の経路を使う商人の短期手形では、以前より慎重に見る例が増えているとのことです。荷の到着が遅れれば、売上の回収も遅れますので」
「共和国全体の信用が落ちた、とまでは言えない?」
「はい。今の資料からは、そこまでは言えません」
ケラーは迷わず答えた。
昔なら、この言い方を聞くだけで少し嬉しくなったものだ。今はもうかなり慣れたが、ありがたいことに変わりはない。俺の予想に合わせて数字をきれいにしてくれる人間より、ここまでは分かる、ここからは分からない、と線を引いてくれる人間の方が使いやすい。
「4つとも、違うことを言っているようで、見ている場所が違うだけか」
「その可能性が高いと考えます」
ケラーはそこで一度止まった。
「ただし、それもまだ確定ではありません」
「何が足りない?」
俺が聞くと、彼は机の上の紙を3つに分けた。
「まず、公館報告の時点では、中央政府による新たな全国関税の公布は確認されていません。ただ、地方側に認められている徴収や取扱いまで最近変更されたかどうかは、公館報告だけでは分かりません」
1つ目の束。
「次に、商人が実際に余計な支払いをしたことも、8件については確認できます。ただ、その支払いが同じ制度によるものか、別々の費用なのかが分かりません」
2つ目。
「最後に、問題が広がっているのか、その経路だけなのか。別経路の本人確認情報が少なすぎます」
3つ目。
俺は3つの束を見た。
「それで、次に取る情報は?」
「公館には、中央政府の全国措置だけでなく、該当する地方で最近変更された徴収・検査・倉庫利用の規則があるかを確認していただきたいです。商務側には、商人から『余計に払った』ではなく、場所、日付、相手、名目、金額を分けて取り直していただきたいです」
ケラーは残りの資料にも目を落とした。
「軍務側は、軍事上の異常がないなら今以上に詳しく調べる必要は薄いと思います。ただ、別経路でも荷車の滞留が起き始めた場合は知らせてもらう方がよいでしょう。金融側は継続して見ます。問題地域だけでなくレシア全体の条件まで悪化するようなら、別の問題が起きている可能性があります」
俺は椅子へ背を預けた。同じ机の上にある4種類の報告は、互いに矛盾しているというより、別の場所を見ていたらしい。公館は全国関税の新たな公布を確認しておらず、商人は実際に負担増を訴え、軍務側では国境閉鎖を確認していない。それでも一部の取引条件には悪化が出ている。
地方で何が変わったのかは、まだ分からない。
「商人側から、こちらも同じだけ取れという要望が来ている」
ケラーは少しだけ顔を上げた。
「現時点では、何に対する対抗措置なのかを特定できません」
「俺もそう思う」
もし本当にレシア中央政府がファルケンマルク商人だけを狙って新しい関税を掛けたなら、話は別だ。
だが、地方の倉庫費用が上がったのか、検査が厳しくなったのか、取扱いが変わったのかも分からないうちに、こちらでレシア商品へ一律に金を掛ければ、自分から問題を国家間の争いへ大きくすることになる。
「報復措置は出さない。公館から正式な抗議もまだしない」
ケラーが頷いた。
「商務側には、問題の経路を使う商人へ今分かっている範囲を伝えさせる。別経路を使える者に、王命で変えろとは言わない。ただ、今どこで遅れているかは共有していい」
「承知しました」
「それから、公館への照会文には、こちらが関税引上げと断定しているような書き方をさせないでくれ。まず何が起きているか知りたい」
ケラーは紙へ短く書き込んだ。
そこで俺は、机の端に置かれていた最初の一覧をもう一度手に取った。
国王になって間もない頃に作らせたものは、資料の所在を探すための一覧だった。今、ケラーが持ってきた紙は少し違う。どこにあるかではなく、何が分かり、何が分からないかまで整理されている。
「ケラー」
「はい」
「今後、国外の同じ案件で報告が食い違ったら、今日みたいにまとめてくれ」
彼の手が止まった。
「私のところで、判断まで行うのでしょうか」
「いや。決めるのは俺と、その案件を持っている担当だ」
そこは分けた方がいい。
「お前には、食い違っている理由を探してほしい。どこまで分かっているか、何が足りないか、次に何を聞けばいいか。そこまでだ」
ケラーはすぐには返事をしなかった。
紙へ目を落とし、次に俺を見た。
「複数の部署へ、私から資料を求めてもよろしいのでしょうか」
「勝手に命令する権限は付けない。必要な資料は担当を通せ。ただ、今日みたいに俺が見たい案件なら、必要なものを遠慮なく挙げろ」
「分かりました」
「正式な部署を新しく作る話でもない。今ある一覧と、今いる人間でまず回せるか見たい」
「その方が助かります」
少し意外な返事だった。
「新しい部署が欲しくないのか」
「部署ができれば、人員と帳簿と報告先を決めるところから始まりますので」
俺は笑いそうになった。なるほど。細かい男は、新しい仕組みを喜ぶとは限らない。細かいからこそ、新しい仕組みを作ると新しい仕事が増えることも分かっている。
「では、当分は増やさない」
「ありがとうございます」
今度は、少しだけ返事が早かった。
***
午後の政務が一段落したところで、机の上から国の書類を下げさせた。
入れ替わりに持ち込まれたのは、俺個人の財産帳簿だった。
国王になってから、この切替えには少し気を使う。同じ部屋で同じ机を使っていても、今から見る金は国庫でも王家資産でもない。俺個人の金だ。
婚姻前後の整理で、自由に処分できる私産がだいたい2万ターラーあることは確認した。王家からヘルツナー商会へ投じた2万ターラーと、自分の財布の全部がほぼ同じ桁だったと知ったときは、妙な気分になった。
国の金なら2万ターラーを動かす話をするが、自分の金なら2万ターラーでほぼ全部だ。当たり前だが、財布が違えば重さも違う。
婚姻前後の財産整理にも関わった私産管理人が帳簿を開いた。
「以前お話のあった積極運用分ですが、6000ターラーまでなら、手元流動性を大きく落とさず動かせます」
「6000全部を一度に同じところへ入れるのは?」
「お勧めいたしません。もっとも、私は投資先の良否を判断する立場ではございません」
彼が持ってきたのは投資先の推薦ではなく、俺が動かせる金の範囲と、候補ごとに必要になる支払時期を整理した紙だった。
別に、俺が突然商売の天才になったわけではない。前世でも金融史や企業の話を読む機会はあったが、だからといって、この世界でどの商会の手形が安全かを見抜けるわけがない。
むしろ、さっきのレシアの件を見た直後だとよく分かる。知らないものは、知らない。
「ロートマンから聞いた条件は?」
「通常の顧客として提示された範囲をまとめております。特別な条件は受けておりません」
紙の横に、別の一覧が置かれた。
一覧には、短期の商業手形、複数の交易への出資、貨物が失われた場合の損失を複数の出資者で分担する仕組みが並んでいた。なにか一発で大金を稼げる新たな仕組みがあればいいのだが、いかんせん現代の金融知識など素人当然だ。インデックス投資くらいしか、思い浮かばない。
考えている上限は6000ターラーほどだった。3000ターラーを満期の違う複数の商業手形と短期信用へ、2000ターラーほどを複数の交易案件へ、残り1000ターラーほどを貨物損失を分担する既存の取引へ回す。
俺の財産の3割だ。国の政策なら6000ターラーは大事ではあっても国家を揺らす額ではないが、自分の金となると急に生々しい。
「こちらの交易案件は、レシア経由です」
管理人が1枚の紙を示した。
俺は手を止めた。
今日の午前に見た経路と完全に同じではない。ただ、近い。
今はまだ公表していない情報を俺は知っている。特定地域で荷が止まり、追加負担が出ている可能性が高い。公館へ追加照会を出すことも知っている。他の出資者は知らないかもしれない。
「これは外す」
管理人が紙を見た。
「条件そのものに問題がございましたか」
「いや。国王として今日知った情報が、この交易に影響するかもしれない」
説明すると、彼はすぐに紙を裏返した。
「では、個人投資の候補から除外いたします」
「今後も、戦争、条約、関税、道路、鉱山みたいに、俺が先に国家の決定を知っていることで値段が動きそうなものは分けてくれ」
「私の側で内容を知る必要はございますか」
「ない。禁止対象だと伝えるだけでいい」
国家機密を個人投資のために私産管理側へ流す、多分将来的には悪手な気がする。何が起きるかは教えず、今は買うなとだけ線を引く。
管理人は別の候補へ指を移した。
「それでは、こちらの短期手形と、こちらの交易案件で組み直せます。ただし、6000ターラーを全て今週中に動かす必要はございません」
「いい案件がなければ待つ?」
「はい。現金で残っていること自体は損失ではございません」
その言い方は、俺を気遣ったというより、この人なりの会計上の判断なのだろう。守る側としては正しい。
将来、もっと積極的に投資先を探す人間が必要になることはあるかもしれない。だが、今はまだ俺自身が学ぶ段階だ。
「まず半分くらいから始める」
「3000ターラー前後でしょうか」
「そうしよう。手形をいくつか。交易は条件をもう一度見たい」
「承知しました。最終承認が必要なものだけ、改めてお持ちします」
帳簿へ記録する手が動いた。俺はその横で候補一覧をもう一度見た。レシア経由の1件は、裏返されたまま残っていた。
***
数日後、レシアから追加の報告が届いた。
ケラーは前回より薄い束を持ってきた。
「公館からです」
追加報告でも、中央政府による新たな全国関税の公布は確認されなかった。その代わり、問題になっている地方で、荷の検査と保管に関する運用が最近変わった可能性が出てきた。
まだ法令の全文は手に入っていない。だが、少なくとも「共和国政府がファルケンマルクに新関税を掛けた」という最初の理解は違っていた。
商務側が取り直した報告も来ていた。
実際に追加料金を払った商人の多くが同じ地域を通っており、別経路では今のところ同じ規模の負担増は確認されていない。
「これなら、かなり絞れたな」
「はい。ただ、地方側の変更が一時的なものか、恒常的なものかはまだ分かりません」
「十分だ」
全部分からなくても、当面の判断はできる。報復関税は掛けず、国家間抗議にも上げない。問題の地域については公館から確認を続け、商人にはどの経路で何が起きているかだけを共有する。
「最初の申立書だけで決めていたら、共和国全体へやり返すところだった」
ケラーは返事をせず、手元の報告へ視線を戻した。
「今後のまとめ方を決めよう」
俺は前回の一覧を机に置いた。
「全部の外国情報を毎日ここへ集める必要はない」
「量が多すぎます」
「だろうな」
公館には公館の仕事があり、軍務には軍務の仕事がある。商人も金融家も、それぞれ別の目的で情報を持っている。全部を王宮の1部屋へ吸い上げたら、今度はそこが詰まる。
「重要案件で、情報が食い違ったときだけ横断する。まずはそれでいい」
「対象にする条件は、どのようにいたしますか」
「外交判断が必要なもの。通商措置を変えるもの。軍を動かす可能性があるもの。あとは……」
口にしてから止まる。
条件を増やしすぎると、結局何でも重要案件になる。
「最初から全部決めない。しばらくは俺かカスパルが指定する」
「承知しました」
「その代わり、お前が見ていて、これは複数資料を合わせないと危ないと思ったら上げてくれ」
ケラーの灰色がかった目が少し細くなった。
「私の判断で、案件そのものを増やしてよろしいのですか」
「分析を始める前に上げろ。見る価値があるかはこちらで決める」
「分かりました」
ケラーは今決めた条件を紙へ書き留めた。当面は新しい人員も部署名も増やさず、指定した重要案件でこのやり方を続けることになった。
***
その日の夕食後、私室へ戻ると手紙が2通届いていた。
1通は王都の通常報告だったので翌朝に回す。
もう1通の封蝋を見て、先に開いた。
アマーリエからだった。
最近はちょっとした雑談のような話も増えてきた。同年代の同じ立場の人間ということもあり、不思議な親近感を覚える。
前半には、宮廷で冬の催しが増えて面倒だという話や、父マクシミリアンの政務へ同席する機会が以前より増え、読む書類まで増えたという話が書いてある。
そのあとに、最近父からやらされていることが続いていた。いくつかの地方から届く請願や報告を先に自分で読み、その後で実際の担当者や代表者の話を聞く。書類だけで考えていた時には簡単に見えた案件が、人の話を聞くと急に難しくなるらしい。
ある側の言い分を聞けばもっともに思え、反対側の話を聞けばそちらにも理由がある。父に何を決めるか聞かれ、自分なりに答えたあとで、今度は「まだ聞いていない相手は誰だ」と聞かれた、とあった。
そこまで読んで、俺は少し手を止めた。
マクシミリアンらしいのかどうか、俺には分からない。
皇帝として何度か会い、話したことはある。老練で、人の間をまとめるのがうまい男だとは思う。
だが、娘へどう物を教えているかまでは知らなかった。
手紙の続きには、アマーリエ自身の愚痴があった。
全員の話を聞いていたら決められないのではないか、と父に言ったら、それならどこまで聞けば決められるかを考えろと言われたらしい。
大変ですね、と最後に書いてある。
その一文だけ、少し投げやりだった。俺は思わず口元を緩めた。王位継承者の教育といっても、宿題を増やされて嫌になるところは変わらないらしい。
俺にも覚えがある。父上に「では、お前ならどうする」と返され続けた頃のことを思い出した。
アマーリエは、人の顔や以前の会話をよく覚え、相手へ自然に近づける。それだけでは足りないからこそ、マクシミリアンは実際の請願や利害の違う相手を前にした判断を経験させているのかもしれない。
手紙の中のアマーリエは、答えを覚えるより、簡単に決められない案件を増やされているように見えた。大変ですね、と書きたくなる気持ちは少し分かる。
返事を書くために紙を出した。
最初に何を書くか少し迷ってから、冬の王都は相変わらず寒い、と書いた。
政治の話から始める必要はない。
次に、俺も最近、最初の報告だけで決めていたら見誤りかけた、とだけ書く。レシアの具体的な内容は書かない。国家の未確定情報を私信へ流す理由もない。
そして最後に、
父親というのは、どうも答えをそのまま教えてくれないものらしい。
そこまで書いて、手を止めた。
父上なら、今の俺を見て何と言うだろう。
少し考えたが、答えは出ない。
続きを書く。
アマーリエへの返事は、まだ半分も終わっていない。
暖炉の薪が崩れた。
外では雪が降り始めていた。




