第20話
15歳になった俺は、王宮の鍛冶職人と木工職人をそろって困らせていた。
「この棒の両端に、重りを付け替えられるようにしたいんです。重りは1種類じゃなくて、何段階か。左右は必ず同じ重さにして、外れないように留めるものも必要です」
机に置いた紙へ、横長の棒と、その両端に重りをつけた形を描く。
前世なら、バーベルを1本買えば済んだ。重りだって穴の大きさは揃っているし、床へ置く台も、スクワット用のラックも、ベンチも売っている。自宅にパワーラックを置いた時は、床が抜けないかを先に気にしたくらいだ。
今は、その一式を説明するところから始めなければならない。
「棒を細くすると曲がります」
鍛冶職人が紙を指で押さえた。
「ですから、殿下がお示しになったものより太くしたいのです。端の重りも、こちらで穴を合わせます。ただ、何度も付け外しするなら、留め方は少し考えさせてください」
「太いのは構いません。握れればいいです。それより、落ちない方を優先してください」
見た目まで現代のバーベルにする必要はない。欲しいのは、決まった重量を安全に持ち上げられて、重さを変えられる道具だ。
木工職人には、肩の高さより少し下で棒を受ける丈夫な台と、仰向けになれる細長い台を頼んだ。棒を戻せなかった時に下で受ける位置も必要になる。絵だけでは伝わりにくく、俺が立ったり寝たりしながら高さを説明すると、途中からルーカスまで巻き込まれた。
「殿下、こちらで横になればよろしいですか」
「はい。ぼくがこの辺りで棒を持ちます。落とすつもりはありませんけど、戻せなくなった時に受けられるようにしたいんです」
「落とすつもりのある方は、普通はいらっしゃいません」
もっともだった。
出来上がった一式は、前世の記憶にある器具とはかなり違った。
棒は太い。握ってみると、やはり太い。表面も滑らかな工業製品とは違って、手の中に鉄の硬さがそのままある。左右につける重りも薄い円盤ではなく、厚みのある鉄の塊に近い。それでも重さごとに組み替えられ、楔と鉄具で固定できるようになっていた。
支持台は太い木材に鉄の補強が入り、ベンチも妙に頑丈だ。少なくとも、俺1人が使うには贅沢なくらい鉄を使っている。
完成したからといって、いきなり自分の身体で強度を確かめるほど馬鹿ではない。職人たちにも残ってもらい、まずは重りをつけた棒を受けへ置き、揺らし、さらに俺が当面扱うつもりの重量より重くして様子を見た。木材が大きくたわまないか。鉄の受けがずれないか。固定具が外れないか。
重りは現地の単位で作られているが、頭の中では使い慣れたkgに直して考える。細かな調整は前世ほどできない。それでも、最大重量を探して、その後の訓練負荷を決めるには十分だった。
王太子の趣味だからできる話ではある。
そこは少しだけ後ろめたいが、作らせてしまったものは使う。
というか、早く使いたい。
前世で最後にバーベルを握ってから、こっちの時間まで含めればずいぶん長い。馬には乗っているし、剣も振る。魔法で身体を強化する訓練もしてきた。けれど、それとこれは別だ。
重いものを持ち上げて、数字を記録して、前より少し重いものが上がる。
あれは楽しい。
理由はそれで十分だった。
「殿下、本当にこれを持ち上げるだけなんですか」
最初に器具を試す日、コンラートは太い棒を両手で持ち、端から端まで眺めていた。
「持ち上げるだけじゃないよ。持ち上げ方が3つある」
「3つ」
「まず、担いでしゃがむ」
「それは分かります」
「次に、寝て胸の上から押す」
「寝るんですか?」
「寝る」
そこで初めて、コンラートが明らかに怪しいものを見る顔になった。
「最後は床から引き上げる」
「最後が一番普通ですね」
「やれば全部普通になるよ」
「では、殿下が先にやってください」
そう言いながら、自分もやる気なのは顔を見れば分かった。
コンラートは以前より、俺と同じ時間にいることが減っている。家の軍務に関わる見学や、軍事方面の教育で予定が合わない日も珍しくなくなった。それでも会えば張り合うところは変わっていない。
これを見せたのも、たぶん間違いなく正解だ。
「1つだけ。今日は身体強化魔法は禁止」
「使わない方がいいんですか」
「素の力を測りたいから。魔法を使ったら別の記録になる」
コンラートは少し考え、すぐに頷いた。
「では、使ったら負けですね」
「そういうこと」
話が早い。
最初から最大重量へ行く気はなかった。身体は十分に動かしてから始める。棒だけ、軽い重り、その次と段階を踏んで、動きがおかしくないかを見る。
俺には前世の経験がある。
ただし、経験があるのは頭の中だけだ。
今の身体でバーベルを担ぐのは初めてだった。
まずはスクワットから。
支持台から棒を外し、背中へ乗せる。足の位置を決め、息を入れる。
しゃがむ。
立つ。
軽い。
動きは覚えている。どこへ力を入れるかも分かる。ただ、棒の太さも、床の感触も、前世とは違う。何より15歳の身体がどのくらい持ち上げられるのかは、やってみるまで分からない。
「今のは?」
「まだ練習。次を重くする」
「その次は?」
「また重くする」
「分かりました。なら僕も同じところからやります」
説明を聞き終わる前から競争になっていた。
コンラートは初めてのわりに動きがきれいだった。膝や腰の位置を1度直すと、次にはかなり修正してくる。馬上での細かな姿勢の取り方でもそうだが、身体を思った位置へ動かすのが上手い。
腹立たしいくらい上手い。
けれど、重くなるほど、それだけでは済まなくなった。
俺は60kgを挙げ、次に65kgへ進んだ。
棒を外した時点で、さっきまでとは明らかに違う。背中へ食い込む重さがある。しゃがんで、一番きついところから立ち上がる。
脚が震えかけた。
それでも上がる。
棒を支持台へ戻した瞬間、息が一気に出た。
「65」
記録係を頼んだルーカスが、紙へ数字を書いた。
俺の体重がだいたい60kgだから、初日なら悪くない。
いや、悪くないどころか、嬉しい。
前世の自分と比べれば軽い。当たり前だ。あの頃まで積み上げた筋肉がこの身体へ転生してきたわけではない。
それでも、自分の体重より重いものを担いでしゃがみ、立てた。
楽しい。
「次、僕です」
コンラートがすぐ前へ出た。
「休んでからでいいよ」
「殿下が休んでいる間にやります」
「そういう意味じゃない」
結局、コンラートも必要な間は空けた。
60kgは上がった。65kgは、下から立ち上がる途中で止まった。
左右についた補助役がすぐ棒へ手を添え、受けへ戻す。無理に潰れるまで粘らせるつもりはない。
コンラートは棒が戻った後もしばらくその場に立っていた。
「……もう1回なら上がる気がします」
「今日はやめよう」
「殿下は上がったんですよね」
「上がった」
「65」
「65」
「覚えておきます」
すごく悔しそうだ。
運動系のものだとコンラートに負けることが多い分、勝てると気持ちが良い。
ベンチプレスでは、2人とも扱う重量が少し下がった。
仰向けになって棒を受け、胸まで下ろして押し返す。支持台の左右には人を置いた。最初に俺が動きを見せ、コンラートにも軽い重さで何度かやらせる。
「腕で押すだけではないんですね」
「腕だけでも上がる重さはあるけど、全身を崩さない方がいい」
「殿下はこれも前から知っていたみたいですね」
「考えてたから」
嘘ではない。
全部を今考えたとは言っていない。
40kg。
胸へ下ろした棒を押し返す。途中で速度が落ちたが、止まらず上まで戻った。
次は上がらなかったので、俺の最初の記録は40kgになった。
コンラートは35kgを成功させ、40kgで止まった。
また俺が勝った。
かなり気分がいい。
「2つですね」
起き上がったコンラートが言った。
「2つだね」
「まだ1つあります」
「あるね」
「最後は僕が勝ちます」
「勝ってから言って」
デッドリフトは床から引く。
前の2つより単純に見えるせいか、コンラートは最初から気に入ったらしい。腰を丸めないこと、棒を身体から離しすぎないことを伝えると、数回でかなりそれらしい動きになった。
俺も重量を上げていく。
70kg。
まだいける。
75kg。
重い。でも上がる。
80kg。
握った瞬間から、棒が床へ貼り付いているみたいだった。
力を入れる。
鉄が床から離れる。
膝を越えるあたりで一瞬止まりそうになったが、そのまま身体を起こした。
立った。
「80」
ルーカスの声を聞いてから下ろす。
手のひらがじんじんする。太い棒のせいで、握るだけでも前世よりやりにくい。
それも含めて、笑いたくなるくらい楽しかった。
コンラートは75kgを引いた。
80kgは床から少し浮いたところで止まり、すぐ下ろした。
「3つ」
俺が言うと、コンラートは床の棒を見たまま答えた。
「聞こえています」
「3つとも、ぼくの勝ち」
「聞こえています」
「記録、残ってるよ」
「殿下。次は勝ちます」
やっぱり、誘ってよかった。
初日の記録は、スクワット65kg、ベンチプレス40kg、デッドリフト80kg。
コンラートは60kg、35kg、75kg。
全部、身体強化魔法なし。棒そのものの重さも含めた数字だ。途中で魔法を使って助けた試行が1つでもあれば、それは別記録にするつもりだったが、この日は必要なかった。
数字が並ぶだけで、次に何をしたいかが分かりやすい。
もっと上げたい。
ただし、最大重量を毎回持つのは違う。
翌日、そのことを身体に教えられた。
朝、起き上がろうとして腹と脚が重い。立てば腿と尻が痛い。腕も胸も背中も、昨日使った場所がだいたい自己主張している。
知っていた。
知ってはいた。
久しぶりすぎて、忘れていただけだ。
「殿下、歩き方が少し……」
支度をしていたルーカスが言いかけた。
「分かってる」
「本日は馬術もございますが」
「分かってる」
階段が嫌だった。
それでも、嫌だからやめようとは全く思わなかった。
次からは最大重量よりかなり落とし、何回か続けて持ち上げられる重さで数組ずつ行った。毎回、種目、重さ、回数を残す。予定通り全部できたら、次は少し重くする。できなければ同じ重さを続ける。
最初のうちは、その加減を今の身体に合わせ直す必要があった。前世で「このくらいならいける」と思っていた感覚は、今の俺にはそのまま使えない。呼吸が乱れる早さも、握力が先に疲れる感じも違う。知識だけで身体まで経験者にはならない。
逆に、動きそのものは思い出せるから、何が変なのかは比較的分かりやすかった。深くしゃがみすぎて姿勢が崩れた。胸から押す時に片側が遅れた。床から引く時に棒が身体から離れた。そういうものを1つずつ直す。
毎日はやらない。
休まないと回復しないことは前世で嫌というほど知っている。若い身体だからといって、そこを雑にする気にはならなかった。
食事の量も増えた。
訓練した日はとにかく腹が減る。普段から不足しているわけではないが、肉などを意識して食べ、食事を減らすようなことはしない。身体を大きくしたいのに材料を入れないのは意味がない。
夕食でいつもより早く皿が空になり、まだ腹が減っていることに気づく日もあった。そういう時は素直に追加を頼んだ。王太子として食事の心配をしなくていいのは、この趣味に関してはかなり恵まれている。
あとは寝る。
前世でも、調子に乗って回数を増やすより、食べて寝た方が次に動けることは何度も経験した。15歳の身体だから回復が早い気はするが、だからといって休養を削る理由にはならない。
コンラートは、予定が合う日はかなりの確率で来た。
「今日は何kgですか」
「最初から記録を見る気?」
「殿下の記録を知らないと、越せませんから」
「自分のを越してからにしたら」
「両方越します」
最大重量だけではなく、同じ重さを何回できたかまで勝負になった。
「今のは5回です。殿下は前回、4回でしたよね」
「ぼくが行ったあとに、その記録をそのときにもう一回聞いてあげるよ」
身体の使い方では、やはりコンラートが覚えるのが早い。俺が説明した修正を、次の1回でそのままやることもある。そのたびに少し腹が立つ。
一方で、重量の上げ方や休み方は俺が決めた。重い日が続けば軽くするし、明らかに疲れている日に記録更新は狙わない。
「まだできます」
「できるかどうかじゃなくて、今日はここまで」
「殿下はやるのに?」
「ぼくもやらない」
「なら、分かりました」
こいつは、俺だけ隠れて追加でやると思っているらしい。
今日はやらない。さすがに、きつい。
少なくとも、コンラートが帰った直後に重りを増やすようなことはしない。
身体強化魔法の訓練も、それとは別に続けた。
魔法を使えば、素の身体では扱えない力を出せる。けれど、だから素の身体を鍛えなくていいことにはならない。逆に、バーベルの数字が上がっても、魔法込みでどう動けるかは別の話だ。
2つは混ぜない。
混ぜなければ、どちらが伸びたのかも分かる。
そんなふうに、筋肉痛と空腹と記録の数字が生活の中へ馴染み始めた頃だった。
母上から、夕食の後に少し話があると言われた。
案内されたのは、公的な謁見をするような場所ではない。父上もいたから、仕事の話ではなさそうだと思った。
「レオン、座りなさい」
「はい、母上」
座ると、母上はすぐ本題へ入った。
「以前、リューネンベルク家のゾフィー嬢に会ったでしょう」
名前を聞いて、歓迎の夜会を思い出した。
明るい栗色の髪と、灰緑色の目。俺より少し小柄で、顔を覚えるのが得意ではないと話していた少女だ。
1度話しただけだが、覚えてはいる。
「はい」
「あなたは、あの方をどう思いましたか」
どう、と言われても困る。
「話しやすい方だと思いました」
嘘ではない。ただ、それ以上を求められている聞き方だというのは分かった。
母上は俺の返事を急かさず、少し間を置いた。
「では、将来あなたの妻になるかもしれない方として考えたことは?」
「……ありません」
本当にない。
父上がそこで口を開いた。
「今まで話していなかったからな。候補の1人として、こちらはリューネンベルク家をかなり有力に見ている」
なるほど。
驚きはしたが、意味が分からない話ではなかった。
リューネンベルク家は選帝侯家だ。皇帝選挙で正式な1票を持つ。母方ではウェストリア王家にもつながっていて、ゾフィーは今の国王の姪にあたる。父上と現選帝侯の関係も悪くない。
王太子の結婚相手として見れば、条件はかなり強い。
「リューネンベルクとは長く付き合いがある」
父上は言った。
「ただし、今の友好関係がそのまま将来も保証されるわけではない。婚姻で全てが決まるわけでもない。それでも、互いの家にとって関係を一段深くする意味はある」
「ウェストリアとの縁もありますね」
「そうだ」
そこはすぐ理解できた。
王太子である以上、俺の結婚が俺1人の好みだけでは決まらないことくらい、ずっと前から分かっている。王妃になる相手の家、外交上の位置、後継者、宮廷での立場。考えるものはいくらでもある。
政略結婚そのものに、今さら驚く理由はない。
問題は別だった。
ゾフィーは14歳くらいだ。
俺は15歳。
この世界だけで見れば、そろそろ婚約の話が具体的になっても不思議ではない。すぐ同居して子どもを作れという話でもない。
頭では分かる。
ただ、前世で35まで生きた感覚が残っている俺に、14歳前後の少女を恋愛相手として見ろと言われても、そこはどうしても感覚がついてこない。
かわいいと思うことはある。きれいだと思うこともある。話してみて感じのいい子だと思うことだってある。
でも、それと恋愛は別だ。
前世の感覚をそのまま引っ張るなら、20代後半から30代前半くらいの女性の方が自然に目へ入る。
今の身体は15歳なのに、そこだけどうにもややこしい。
「嫌でしたか」
母上に聞かれ、考えから戻った。
「いえ。ゾフィー嬢が嫌ということではありません」
「では、何が気になります?」
「一度しか話していないので、妻にしたいかと聞かれても、まだ分からないです」
恋愛対象として見られない、をそのまま両親へ説明する必要はない。少なくとも今の答えとしては、こっちの方が大きい。
母上は父上を見てから、また俺へ視線を戻した。
「それなら、分からないままで構いません」
「構わないんですか」
「今夜、婚約を決めるために呼んだのではありません。条件が良いからといって、本人を知らなくてよいわけでもないでしょう」
父上も頷いた。
「候補として先方との話を始めるか、その入口にいるということだ。お前にも、誰のことか分からないまま話を進めるつもりはない」
「選帝侯の1票があるから、それだけで決めるという話でもないんですね」
「当然だ。1票は大きい。だが、婚姻した家が常に同じ票を投じると思う方が危うい」
その答えには納得した。
俺だって、結婚1つで2つの家が永久に同じ利害になるとは思っていない。むしろ、それぞれ別の領地と事情を持っているからこそ、関係を深くする意味がある。
「先方には、もう?」
「正式な話はまだだ」
そこは少し安心した。
何が安心なのか、自分でも完全には分からない。知らないうちに婚約が成立していなかったことか、考える時間があることか、その両方かもしれない。
「レオン」
母上の声が少し柔らかくなった。
「家のことも大切です。でも、あなたが長く一緒に暮らす相手です。もう1度会う機会があれば、条件ではなく、ゾフィー嬢自身を見なさい」
「はい」
それならできる。
むしろ、それをしないと判断のしようがない。
選帝侯の娘。ウェストリア王の姪。家同士の長い付き合い。
そういう肩書を並べれば、候補としての合理性は十分に見える。
けれど、結婚するのは肩書ではない。
かといって、今の俺に恋愛感情がないから候補から外す、というのも違う気がする。まだ1度会っただけで、しかも相手は14歳前後だ。今この瞬間に恋愛感情があるかどうかだけを最終判断にする方が無理がある。
政略結婚として考えることと、相手を1人の人間として知ろうとすることは両立する。
少なくとも、そこまでは分けて考えられた。
「父上、母上」
「なんだ」
「候補として考えることには反対しません。ただ、もう少し本人と話す機会はほしいです」
父上はすぐに答えた。
「分かった」
母上も、それ以上は押さなかった。
話はそこで終わらず、今後すぐに何かを決めるわけではないことや、相手の家との話も段階を踏むことを少し確認した。俺も、聞きたいところだけ聞いた。
部屋へ戻ってから、机の上に置いてあった訓練の記録を開いた。
次の予定は休養日になっている。
今日のうちに重りを触る理由はない。
紙には、最初の日からの数字が並んでいた。スクワット65、ベンチ40、デッドリフト80。その横には、普段使った重さと回数が続いている。
ゾフィーのことを考えようとしていたのに、数字を見ると次の訓練のことが頭へ出てくる。
これは仕方がない。
結婚の方は、次に会った時にちゃんと話せばいい。
筋肉は、休ませないと増えない。
翌日ではなく、その次の訓練日にコンラートが来た。
「今日はスクワットからですか」
「そう」
「前回より重くします?」
「回数が全部できたらね」
「では、できます」
「始める前から決めないで」
俺は記録帳をルーカスへ渡し、棒の固定を確かめた。
身体強化魔法は使わない。
まずは素の身体でやる。
太い鉄の棒を握るのは、最初ほど違和感がなくなってきた。




