第09話
朝から、どうにも落ち着かなかった。
机に向かっているあいだも、窓の外を馬が通ったわけでもないのに、何度か厩舎の方角を見そうになった。文字の勉強も魔法の練習も、今ではいつもの予定になっている。ただ今日は、その後ろにずっと待っていたものがある。
正式な馬術の稽古だ。
前世では競馬が好きだった。馬の走り方を見て、血統を調べ、調教の内容を気にして、今日はこの馬の状態がよさそうだとか、距離が合うだとか、そんなことを考えて何時間でも過ごせた。
だが、馬に乗ったことはない。たぶん、競馬場で観客席に座っている人間の大半はそうだろう。だからこそ、馬に乗れるというのは、現在の年齢に引っ張られる部分もあって、いつも以上に落ち着きがなくなる。
今日は朝から胸の奥が浮ついていた。
「殿下、そろそろお時間です」
ルーカスの声で顔を上げた。
「うん」
返事をして立ち上がる。椅子を引く音が、今日は少し大きく聞こえた。
部屋を出る前に母上のところへ寄ると、母上は長椅子に腰を下ろしていた。腹はもう、少し離れたところから見てもはっきり分かるほど大きい。俺が近づくと、母上は腹の上へ置いていた手を動かし、こちらへ差し出した。
「いよいよね」
「はい」
手を取ると、母上は笑った。
「楽しみにしていたものね」
「ずっとです」
そう答えると、自分でも声が少し弾んだのが分かった。
母上は何か言いかけるように俺を見て、それから俺の肩口へ手を伸ばした。乱れていたところでもあったのか、上着を軽く直される。
「先生のおっしゃることを、よく聞くのよ」
「はい」
「馬が好きでも、急がないこと」
それには、少しだけ返事が遅れた。
たぶん母上は、それに気づいた。口元をわずかに上げる。
「返事は?」
「……はい、母上」
今度はきちんと答えると、母上は満足したように手を離した。
廊下へ出る。後ろからついてくるルーカスは何も言わなかったが、階段を下りるころになって、俺の歩幅がいつもより大きいことに気づいたらしい。
「殿下。厩舎は逃げません」
振り返る。
ルーカスはいつもどおり真面目な顔をしていた。
「分かってる」
「はい」
それだけ言って、歩みを少し緩めた。
王宮の建物を出て外郭へ向かうにつれ、空気の匂いが変わっていった。乾いた土の匂いに藁と飼料が混じり、さらに近づけば革の匂いがする。厩舎の方から、蹄が床を打つ硬い音が響いた。
その音を聞いた瞬間、足がまた速くなりそうになった。
王宮厩舎には、牧場とは違う忙しさがあった。馬を引いて通る者がいて、別のところでは馬具を確かめている者がいる。こちらを見て頭を下げる者もいたが、仕事の手まで止める者ばかりではない。
俺はその方がありがたかった。
俺を見るために仕事を止めてもらいたいわけではない。ここは馬の世話をする人たちの仕事場なのだから。
「殿下」
低い声がした。
声の方を見ると、男が1人、こちらへ歩いてきた。年は40代の後半くらいだろうか。やや細身で、まっすぐ立っている。淡い茶色の髪には灰色が混じっていた。
俺の前まで来ると、男は丁寧に頭を下げた。
「オットー・レンツです。本日から殿下の初歩馬術を担当いたします」
「レオンハルトです。よろしくお願いします、先生」
俺がそう言うと、オットー先生は1度だけうなずいた。
「こちらこそ。まず1つだけ、始める前に申し上げます」
「はい」
「今日は、乗れるようになる日ではありません」
思わず瞬きをした。
先生は俺の顔を見たまま続ける。
「乗り始める日です」
似ているようで、ずいぶん違う。
「……はい」
「よろしい」
先生はそれ以上、説教めいたことは言わなかった。
案内された先には、すでに1頭の馬がいた。
目の前の馬は、俺がこれまで近くで見た馬の中では小柄な方だった。静かに立ち、こちらが近づいても首を大きく振ったりはしない。厩舎の者が手綱を持ち、その横に立っている。
「近づく前に、何か覚えていることはありますか」
先生に聞かれた。
試験のような聞き方ではなかった。俺は馬を見ながら答える。
「後ろに回らない。急に近づかない。触るときは、馬にぼくがいるって分かるようにする」
「十分です。大事なことですので、馬に近づくときは毎回意識してください」
先生はそう言って、馬の肩のあたりへ手を置いた。
馬の横へ寄る。近くで見ると、背はやはり高い。
小柄な馬、と言っても6歳の俺から見れば十分に大きい。鞍の位置は目線よりずっと上にある。
「まず乗ります。左から。今日は踏み台を使います」
木の踏み台が用意されていた。
前世の競馬映像では、騎手がひらりと乗るところばかり見ていた気がする。もっとも、騎手が6歳児と同じ条件なわけがない。でも、なんとなく乗るイメージは湧く。
踏み台に上がる。
「左手はここ。右手は鞍へ。手綱だけを引っ張って身体を上げない」
先生が1つずつ指示する。
「はい」
「左足を鐙へ。まだ上がらない」
言われたとおりに足を入れる。
「身体を少し近づけます。そう。では上へ。右脚は馬の背に当てないように越してください」
やってみる。
思ったより、身体が上がらない。
鐙へ足をかけた瞬間から、自分の重さが妙に意識された。腕にも脚にも力が入り、腰を上げたところで1度動きが止まりそうになる。
先生が身体を支えた。
「急がなくてよろしい」
2度目で身体を持ち上げ、右脚を向こうへ回す。
馬の背へまたがった。
その瞬間、世界が高くなった。
「お……」
声が出た。
歩いてもいない。ただ馬が立っているだけだ。それなのに、地面に立っていたときとは見えるものの位置がまるで違う。
柵が低い。
さっきまで俺より高いところにあった馬の首が、今はすぐ前へ伸びている。馬の背は思ったより幅があり、両脚が自然に下へ落ちるというより、左右へ開かされてから下がる感じがした。
そして、馬は止まっていても完全には止まっていない。
呼吸するたび、背中がわずかに動く。首を動かせば、その動きが鞍の下から伝わる。
「殿下」
先生の声で、前を見る。
「手に力が入っています」
自分の手を見ると、手綱を握った指が固くなっていた。
「まだ何もしてないのに」
思わず言うと、先生の口元が少しだけ動いた。
「何もしていないからこそ、余計な力が入ることもあります。手綱は離さず、握りつぶさず」
「はい」
指を緩める。
今度は緩めすぎた気がして、また握る。
「それで結構です。最初からちょうどよくはなりません」
先生は馬の反対側へ回り、俺の脚の位置を見た。
鐙の長さも確かめた。
「背を伸ばそうとして、胸を張りすぎないでください」
言われて初めて、自分が兵士みたいに背筋を固めていたことに気づいた。
力を抜く。
抜いたら、今度は腰が落ちた気がする。
「難しい」
「まだ歩いていませんから、今のうちに難しいと分かっておくのはよいことです」
先生は平然と言った。
俺は馬の耳の間から前を見た。
競馬では、騎手の一人称カメラの映像を見て、一人の騎手以外は画面がブレすぎていて見づらいなと思ったこともある。もっと姿勢を安定させことはできないのかと。
だが、今の俺は、ただ止まっている馬の上に乗るだけで四苦八苦している。手を固くしないことと背中を固くしないことを同時にやるだけで忙しい。
「では、歩きます」
先生が言った。
馬を引いている厩舎の者が、静かに前へ動く。
次の瞬間、俺の身体が後ろへ置いていかれた。
「わ」
馬はただ1歩、前へ出ただけだった。
落ちるほどではない。横には先生もいるし、馬を引く者もいる。
それでも、予想していた動きではなかった。
馬の背が前へ進み、沈み、また上がる。いや、上がるという言い方で合っているのかも分からない。4本の脚が順番に動くたび、鞍から伝わる揺れが少しずつ違う。
「前を見て」
先生の声が飛ぶ。
俺は自分の手元を見ていた。
顔を上げる。
「背を固めない」
「はい」
「手を引かない」
「はい」
「脚でしがみつかない」
言われて、今度は脚に力が入っていることに気づく。
「……はい」
1つ直すと、別のところがおかしくなる。
背中を柔らかくしようとすると手が揺れる。手を安定させようとすると肩が固くなる。前を見ようとすると、脚がどこにあるのか分からなくなる。
馬はゆっくり歩いているだけだ。
本当に、ただ歩いているだけなのに。
調馬場の柵に沿うように1周するころには、最初の高揚感より、身体の中の忙しさの方が大きくなっていた。
「殿下、息を止めています」
「え?」
言われて息を吐いた。
自分でも気づいていなかった。
先生は俺を見上げている。
「全部を一度に直そうとしなくて結構です。まず、歩みに合わせること。馬が動いているのに、殿下だけ止まろうとしないでください」
「止まろうとしてる?」
「身体を固めるというのは、そういうことです」
なるほど、と頭では思う。
ではどうするか。
そこから先は、頭で答えが出なかった。
もう1周する。
馬の背に押されるたびに、それを力で抑えようとせず、腰を少し預けるようにしてみた。するとさっきより揺れが小さくなった気がした。
気がしただけかもしれない。
「今の方がよいです」
先生が言った。
その言葉で、急に分かりやすくなった。
同じようにしようとする。
次の数歩はうまくいった。
その次で手綱を気にした途端、また肩が固くなった。
「戻りました」
先生が言う。
「分かってます」
少し強く答えてしまった。
先生は怒らなかった。
「では、もう1度」
それだけだった。
悔しい。
馬が嫌だからではない。むしろ好きだから悔しかった。
もっと簡単にできるとは思っていなかった。思っていなかったはずなのに、心のどこかでは、馬のことを知っている分だけ、まったく知らない人間より少しはうまく始められると思っていたのだろう。
ところが、止まっている馬の上でさえ、何度も手や姿勢を直されている。
「殿下」
先生が声をかける。
「手」
また強くなっていた。
俺は息を吐き、指を緩めた。
何周かしたところで、1度止まった。
止めたのは俺ではない。馬を引いている厩舎の者が止めた。
「少し休みます」
先生はそう言って、俺の足元を見た。
「痛むところは?」
「ないです」
即答してから、考え直す。
「……脚がちょっと変です」
「変、とは?」
「疲れてる感じ」
「それなら今のところ問題ありません」
先生はうなずいた。
俺は鞍の上で脚をぶらぶらさせたくなったが、馬の上なのでやめた。
地面にいるルーカスが視界に入る。調馬場の外からこちらを見ていた。俺と目が合うと、少しだけ頭を下げた。
「どう?」
思わず聞く。
ルーカスは一瞬、答えを選ぶような顔をした。
「先ほどよりは、揺れておられないように見えます」
「先ほどは?」
「かなり揺れておられました」
正直だった。
先生が横で小さく息を吐いた。笑ったのかもしれない。
「先生」
「はい」
「次は、ぼくが歩かせるんですか?」
先生はすぐには答えず、俺の姿勢を見た。それから馬の口元と手綱を見る。
「入口だけ試しましょう。ただし、まだこちらで保持します」
「はい」
身体がまた前のめりになりそうになった。
「その前に」
先生の声で止まる。
「進ませたいからといって、上体まで前へ出さない」
「……はい」
先に読まれた。
先生は脚での合図を短く説明した。強く蹴るのではなく、今の俺ができる範囲で、ここで伝える。手は進むのを邪魔しない。
馬が止まっている。
俺は前を見る。
脚を使う。
動かない。
もう1度。
動かない。
「強さを増す前に、位置を確かめます」
先生が俺の脚を見た。
「少し後ろへずれています。ここ」
直される。
「もう1度」
脚で合図する。
馬は動かなかった。
俺は唇を噛みそうになって、やめた。
「今の、してますよね?」
「しています」
「馬には分かってない?」
「少なくとも、今の合図では進みませんでした」
「もっと強くしたら」
「強くする前に、同じ場所で同じようにできるようにしましょう」
ぴしゃりと止められた。
声は低く、普通だった。
それだけに、言い返すところがない。
先生は馬を引いている者と短く目を合わせた。
「もう1度、殿下」
位置を考える。
背中を固めない。
手を引かない。
脚を置く場所を探す。
今度は、自分でもさっきより正しい気がした。
合図する。
馬が1歩、前へ出た。
「動いた!」
思わず声が大きくなった。
そのせいで肩に力が入り、次の1歩でまた身体が遅れた。
「前を見て」
「はい!」
それでも笑ってしまった。
自分だけで動かしたわけではない。先生もいるし、厩舎の者もすぐそばにいる。馬だって初心者を乗せることに慣れているのだろう。
けれど、今の1歩には俺の合図が混ざっていた。
たったそれだけで、さっきまでの悔しさが少し遠くなった。
「もう1度止まります」
先生が言う。
今度は停止の合図だった。
これも言葉にすれば簡単だ。身体を前へ流し続けず、手綱を必要な分だけ使う。ただし引っ張り続けない。
必要な分だけ。
それが難しい。
俺は手綱を引いた。
馬の歩みは変わらない。
もう少し。
先生の手がすぐ近くに来た。
「引き続けない」
慌てて緩める。
「今度は全部戻りました」
「……どれくらい?」
「最初の引き方では弱く、その後は長すぎました。もう少しだけ強く、短くです」
「強さだけじゃないんだ」
「はい。引いたままにしないことも大切です」
もう1度試す。
今度は馬の歩みが遅くなったところで、厩舎の者が合わせて止めた。
「今のは?」
「先ほどよりよいです」
「ぼくが止めた?」
「殿下の合図だけで完全に、とは言いません」
先生はそう言った。
俺は少しだけ口を尖らせたくなった。
でも、たぶんそれでいい。
できていないものを、できたと言われても仕方がない。
「もう1回」
「はい。ただし、次は曲がります」
気持ちがすぐに上向いた。
「曲がる?」
「緩やかに」
先生は手綱の使い方と視線の向け方を教えた。曲がりたい方を見る。手だけで無理に頭を向けようとしない。馬を引く者の補助はまだ外さない。
俺はうなずいた。
馬が歩き出す。
調馬場の端へ近づいたところで、曲がる方を見る。
手綱。
脚。
姿勢。
全部を考えた瞬間、何からやるのか分からなくなった。
馬は厩舎の者に導かれて、何事もなく曲がった。
俺はたぶん、ほとんど何もしていない。
「先生」
「はい」
「今のは、ぼくじゃないですよね」
「そうですね」
容赦がない。
「もう1回」
「どうぞ」
次は、先に見る方向を決めた。
身体を固めないようにしながら、手綱を少し使う。
馬の首がわずかに向いた。
そのとき嬉しくなって、手に力が入りすぎた。
「手を戻して」
すぐに先生の声が来る。
緩める。
曲がり終わったときには、何が自分の合図で何が補助だったのか、よく分からなかった。
それでも、1回目よりは自分が馬とつながっていた気がした。
そこからまた常歩を続けた。
最初のうちは、1周するごとに何か1つ見つかった。
腰の力を抜きすぎても駄目だ。手を静かにしようとして腕そのものを固めても駄目。足元を見れば前が見えなくなる。当たり前のことなのに、馬の背ではそれぞれが別の仕事になった。
やがて、それぞれを考えること自体が疲れてきた。
脚の付け根が重い。
背中も、まっすぐにしているつもりなのに少しずつ丸くなる。
1度うまく合った揺れに、次の数歩では合わせられない。
さっき通じたはずの合図も、今度は曖昧になる。
俺はそれが嫌だった。
できないことより、1度できたことができなくなるのが嫌だ。
「もう1度、止めます」
先生が言った。
「はい」
俺は手綱を使った。
強すぎた。
自分でも分かった。
慌てて緩める。
そのせいで身体が前へ揺れた。
馬は結局、補助されて止まった。
「もう1回やります」
俺はすぐに言った。
先生は返事をしなかった。
俺ではなく、脚と手元を見ている。
「先生?」
「今日はここまでにしましょう」
一瞬、意味が分からなかった。
「まだ乗れます」
「乗っていることはできます」
「じゃあ」
「ですが、先ほどから殿下の合図は粗くなっています」
言われて、反射的に手綱を持つ手を整えた。
先生はそれを見た。
「今だけ直しても、疲れていることは変わりません」
「そんなに疲れてないです」
口にしてから、脚が重いことを思い出した。
先生はたぶん、それも分かっている。
「疲れてから同じ動きを繰り返すと、よくない動きを覚えます。馬にも余計な合図を出すことになる。今日は、よいところで終わります」
俺は馬の耳を見た。
耳が少し動いた。
まだ乗りたい。
さっきよりうまくできる気もする。もう1度やれば、今度は止められるかもしれない。
けれど、そう思っているのに、背中を伸ばし続けることがさっきより面倒になっているのも分かった。
手綱を持つ指にも、妙な疲れがある。
「……次は、もっと長く乗れますか」
先生は少し考えてから答えた。
「今日より上手に身体を使えれば、結果として長くなるかもしれません」
「長く乗る練習じゃない?」
「長く乗ることを目的にはしません」
やはり先生は、俺が欲しい答えをそのままくれない。
「分かりました」
俺はそう言った。
馬から下りるのも、乗るときと同じように先生の指示を受けた。止まっていることを確かめ、足を外し、身体を支えながら脚を越す。
地面へ足がついた瞬間、膝が少し頼りなくなった。
「うわ」
転ぶほどではない。
けれど、自分の脚で立っているだけなのに、さっきまでとは感覚が違う。
先生が腕を支えた。
「それも疲労です」
「……はい」
否定できなかった。
ルーカスが近づいてきた。
「殿下、お加減は?」
「平気。脚がちょっと変なだけ」
答えながら、馬を見上げる。
さっきまであそこにいたのかと思うと、急に高く見えた。
馬は俺が下りたことなど気にしていない様子で立っている。
俺はその首筋へ近づき、許されてから手を触れた。温かい。毛の下にある大きな身体は、乗っているあいだずっと動き続けていた。
「ありがとう」
馬に言った。
返事はない。
ただ耳がこちらを向いた。
先生はその様子を少し離れて見ていた。
「先生」
「はい」
「次も、この馬ですか」
「その時の状態を見て決めます」
「そうですか」
少し残念だったが、次も同じ馬だと約束してもらう必要はないのだろう。
俺はもう1度、馬の首へ手を置いた。
ゴルデネ・ライゼのことが頭に浮かんだ。
あの馬の背に乗りたい。
前からそう思っていた。
でも、今日までは「あの馬の背に乗りたい」と思うばかりで、そこへ行くまでに何を覚えなければならないのかを、ほとんど知らなかった。
今日やったのは、ゆっくり歩く馬の上で姿勢を保って、合図を少し試しただけだ。それでも思い通りにならないことがいくつもあった。
少し腹立たしくて、それ以上に面白かった。
「先生」
「はい」
「次は、いつですか」
先生はルーカスの方を見た。
ルーカスが予定を確かめるように手元へ目を落とす。
その間にも、俺は馬から手を離せなかった。
さっきうまく合った数歩の感覚を思い出そうとする。
もう、はっきりとは思い出せない。
だから、また乗りたかった。




