ピッツバーグ、ペンスルヴェイニア…3
「あれはボールパークかな」
フォート・ピット・ブリッジと対になるフォート・デュケイン・ブリッジを北に向かって渡りながら、右手の窓の外を眺めていたエルが、空に突き出した照明塔に気づいて訊ねた。
「ああ。そうなんじゃねぇのか」
意識せずにビリーは答え、しばらくしてふと思い出したように訊ねた。
「アンディ・ウォーホルって、あのいけすかねぇ気色悪ぃヤツか」
「そう」
「なんであんなのが有り難がられてんだ」
「さあ?」
冷ややかさの混じったエルの答えに、ビリーは少し意外なように眉を上げ、訊ねた。
「お前もわかんねぇのか。お前は絵とかそういうのが好きなんじゃないのか」
「好きだよ。だからわからない」
「そういうもんか」
「そういうもんさ」
エルの答え方に少し笑い、それからビリーは何の気なしに訊ねた。
「じゃ、誰がすげぇんだ」
「そうね、あたしがいいと思うのは、ひとまずアメリカに関係する画家だと――」
ビリーは口を挟んだ。
「関係するってのは、どういうことだ」
「ああ、アメリカにはいろいろな国からいろいろな人が集まるじゃない? 国籍がどこであれ、主にアメリカで活動している人ってこと」
「なるほどな。で、誰がいいんだ」
西に向けてゆるやかなカーヴを下りながらビリーは訊ね、エルは半ば恥ずかしそうに、半ば嬉しそうに、画家の名前を並べ始めた。
「うん、いっぱいいるんだけどね、ビル・トレイラー、エドワード・ヘンリー・ポタスト、フランク・W・ベンソン、フローリン・ステトハイマー、エレノア・アボット、アーロン・ダグラス、ヴァージニア・フランセス・スターレット、バルコム・グリーン、ヘッダ・スターン、メリー・ブレア、ウェイン・ティボー、リロイ・ネイマン、ミリアム・シュピロ、ネイサン・オリヴェイラ、ローレル・バーチ、キキ・スミス、ワンゲシ・ムトゥ――」
エルの熱心な回答は止まりそうになく、ビリーは途中から聞き取るのをやめ、適当な頃合いを見て適当な言葉を挟んだ。
「なるほどな、いろいろいるんだな」
「いろいろいるんだよ」
エルはビリーの無関心さに気づかずに深く頷き、ほどなくして車はカーネギー・サイエンス・センターに着いた。




