第三十七話 それに混ざるんじゃダメなのかよ?
代理店に金を出した時に気付いたけど、大量の札束……減らそう。
なのであちらに手持ちの金を預けようと思った。
そうして総合事務局に大量の土産と札束を預け、余剰ポイントでの各種要望に答えるように指示を出しておいた。
かなりの要求が溜まっていたけど、あれですっきりとするだろう。
ポイントも大台に乗りかけていたからさ、ガンガン使って構わないさ。
どのみちもう世界間交易の目処も立ったし、その関係でコレクション用の札束の入手も楽になっている。
だからポイントに余剰が出来ているうえに、あちらの世界の分はサブシスで管理させているから、こちらの分は好きにしていいさ。
成人の日利用のツアー中な両親の恩恵で、こちらも異世界にミニ旅行中だ。
当然、あいつも便乗するんだけど、オレと小旅行って言い訳は拙いぞ。
なんせオレは今、留守番している事になっているんだからよ。
「マジかよ」
「相談しないお前が悪い」
「ヤバいな、どうすっかな」
「彼女と遊園地、これで決まりだろ、婚約者君」
「いや、あれはだな、あの場の勢いと言うか、だからまだ本決まりって訳じゃなくてな、春休みに説得に行くつもりでよ、大学卒業後ぐらいに延ばしてもらうつもりでよ」
「そして大学在学中に、冒険者ギルドを設立するんだな」
「その件だけどよ、あちこちで反応を見てみたんだけどよ、どうにも絵空事と思われていてな、イマイチ反応が鈍くてよ」
「ふむ、となると、体験ツアーでも組むか。主要メンバーで」
「既に草の根ギルドがあるんだし、それに混ざるんじゃダメなのかよ? 」
それはダメだとまだ分からんのか。
「国からの要望をキッパリと跳ね除けられるなら良いが」
「多少は仕方が無いだろ。規制緩和とかも必要だろうし」
「だからそういうのをお前の組織がやってな、他の組織が出る頃に混ざって出るんだよ。そうすりゃ緩和された規制を利用して、独自のサービス路線でやれるだろうが」
「そんなに国の介入が嫌なのか」
「なら、国にどうやって説明するつもりだ。それとも宣伝するか? 人類の敵が運営していますよと」
「そうか、それがあったな」
「大体、迷宮の仕組みはトップシークレットだろ。なのに国が関与したら情報公開も要求して来るに決まっているが、スキルの原理は魔力を使ったシステムとか言うと、精神を疑われるぞ」
「ああ、説明出来ないからか」
「迷宮のシステムの情報を公開しても、誰も実証出来ないから絵空事になる。となると真実の情報を寄越せと言われるが、それ以上いくら公開しても嘘の報告にされちまう。そうなればもう、その組織自体が不許可となりかねない。それぐらいなら国に蹂躙されるに任せて離脱して、草の根と合流して独自路線ってやるしか無いのさ」
「ああ、それでようやく分かったぜ」
おっかしいな、最近、知性的になっていたってのに、どうして元に戻ったんだろう。
『システム、こいつに何かやったか……マスターと確認。以前の仮処置が解除になっています。再度設定しますか? ……どうして解除になった……不明、不明』
おっかしいな。
誰かがシステムに介入でもしたかのように、金太への処置がクリアになっているぞ。
(お前、弱くなったな)
(おっかしいな)
(最近、来なかったからだな)
(ちょ、タンマ、便所)
(行ってこい)
(また止まるんだろうな……うえっ、何でだ。ヤバ、漏れ、る)
システムにも原因が分からないらしく、とりあえず全ての変更点の確認をさせた。
不明な存在の介入を許してしまった以上、何がどう変わったかの確認が必要だ。
だけどその結果は金太への処置のクリアのみであり、他には何も認められなかった。
「お前、アレ、切れてるぞ」
「あくまでも仮だからな」
「またやってくれねーか」
「脳筋に戻ったらギルドもやれないか。仕方が無いな」
「もう仮じゃなくても良いからさ」
「永久処置はダメだ」
「どうしてだよ。また戻るならもう、戻らないほうが良いぜ」
「結婚詐欺師かよ、てめぇは。永久処置したら子は作れないぞ」
「何でだよ」
「そういう欲求が消えるからだ。それとも若いのに試験管使うか?」
「それしか無いならな」
「相手の親はどう思うかな。愛情を疑われたら交際自体も禁止されちまうぞ」
「そうなったら仕方が無いさ」
「お前、あいつが好きじゃないのか? 」
「いやな、好きだったはずなのに、どうしてか今はそんな感じじゃなくてな」
くそぅ、誰だよ。
リアルのほうの調整にも介入したんだな。
オレの渾身の精神誘導、しかも多重同時を解きやがったな。
相当の精神疲労で成し遂げたと言うのに、やってくれたな。
それであいつからの視線を感じたのか。
もうオレは関係無い事になっているはずなのに、妙に視線を感じるから何か用があるのかと思っていたが、スキルが解除になったのなら、金太との記憶とは別にオレへの想いの復活になるだろう。
それもついでに介入して調整しろよな。
そんな片手落ち、オレが苦労するだけじゃねぇかよ。
「それで、どうなんだ」
「ちょいと待て」
『システム、仮設定だ……マスターと確認。指定範囲はどうしますか……生理機能、仮停止、知能増大、身体能力増大、5年だ……了解、再度設定します』
深い精神誘導にした金太に対し、システムが干渉する。
後は任せたとばかりに金太を放置して、久し振りに遊ぶ事にする。
「やあ、金太のお相手さん。続きはオレとだ」
「うっ、手加減を要求する」
「もちろんさ。軽く遊ぼうぜ」
「あ、ああ」
◇
(ああ、死ぬかと思った。あれで軽くと言われても困るんだが、まだまだ及んでないって事か。精進だな)
気が付いた金太に処置が終わったと告げると、勇んで対戦相手のほうに駆けていく。
ああ、そいつは今、休憩中だ。
(今日はもう勘弁してくれ)
(まあそれなら明日でも良いけどよ、何かあったのか)
(いや、大した事じゃねぇが、全ては明日だ)
(分かったぜ)
うろうろしていた金太がこちらにやって来て、オレと遊びたいなんて事を言う。
(あのバカ、よりにもよって相手が悪過ぎるだろ。死ぬなよ)
以前とは比べ物にならないぐらいになっているな。
うん、これなら脳筋管理の奴も楽しいのも分かるな。
この磨いていく感覚は、育てているって実感が沸くんだろ。
うんうん、分かる分かる。
さあ、オレもとことん磨いてやるからな。
「待て、ストップ、止まれぇぇ」
「腹が減ったか? 」
「それもあるが、もう限界だ」
「食後にまただな、了解」
「せめて明日にしてくれ」
「そっかぁ」
(そんなにガックリとされてもよ、オレはもう動く気力がねぇんだ。悪いな)
育てようと思った矢先、終わりと言われてつまらないな。
それでもあちこちうろうろして暇そうな奴と遊んでいくが、今日は脳筋管理が留守のようでイマイチ面白くない。
それでもそこいらの奴らと交渉していたが、総合執務室のほうから連絡が入り、遊びは中止になった。
(お前、連絡入れたのか? )
(すぐ連絡すると言ってくれて助かったぜ)
(お手柄だな)
(軽くと言われても、オレらには激しい戦いだしよ)
(お互い、もっとやらんとな)
(そうだなぁ)
仕事が溜まったから来てくれと言われ、そのまま執務に没頭する。
そこまでの量じゃないのに、なんで呼ばれたかな。
まあ、たまにだから良いが。




