第三十四話 酒を飲んで毒耐性?
「お前、始業式、サボってたろ」
ああ、ちょうど競技の時間が迫ってて、仕方が無いから抜けたんだが、バレていたか。
「ああ、ちょっと屋上でモクってた」
「お前、そんな物、いつ始めたんだ」
「苛めのストレス発散で始めてな、ついでに酒もその頃に覚えた」
「身体に悪いらしいが、どうなんだ」
「ふふん、オレの耐性を抜けるかよ」
「それって意外と便利と言うか、オレもそうなのかよ? 」
「鍛えもせずに耐性が磨かれると思うなよ。毒耐性が欲しいなら毒を飲んで慣らす必要がある。つまりヤニも酒も毒の部類、
ならばその耐性は磨くしかない」
「ならよ、酒をひたすら飲めば良いのか」
「甘いな。そんな一般的な事で磨かれると思うなよ。解毒剤片手に毒を飲み、死ぬまでに解毒させるのを繰り返すんだ」
「うげぇぇ、そこまですんのかよ」
やれやれ、本当に甘いな。
酒を飲んで毒耐性?
それなら世の勤め人には毒耐性持ちが多いって事になるぞ。
そんな殺し屋必須のスキルを、巷の存在が持っていて堪るかよ。
精々が農薬製造の職員が仕事の関係で覚えるか、塗装工がシンナーを常時吸っていてそれで覚えるかぐらいだな。
それでも身の危険が関係するから、死ぬまでに毒耐性(微)ぐらいが関の山だろう。
長い年月で暇にあかせて、全ての耐性を確保して磨いたオレと一緒にするなよな。
◇
彼女の実家での話を聞くと、どうやら相手に気に入られたらしい。
そこで結婚を前提とした付き合いの話になっちまい、あれよあれよという間に、婚約になってしまったらしい。
そこに本人達の意思は求められなかったというから、過干渉な両親というのが見て取れる。
すなわちそんな親だからこそ、子は引っ込み思案になってしまったのだろう。
自らの意見を必要とされず、何でも親が出張ってくる。
そうなればもう、成すがままに動くより道は無い。
お前の為、将来の為と、そんな風に言われて逆らうなど、あの年になってはもう無理だ。
幼い頃からそういう風に洗脳された子は、親の言うままに動く絡繰人形でしかない。
それを見かねて橋崎が、東の学校へ誘致したのかも知れないな。
幼馴染が人形など、どんな悪夢かと思うよな。
親が死んだ後、彼女に残されるのは待機しかない。
もう訪れない命令を、ひたすら待ち続ける人生しかない。
そんな子に仕立て上げた事も知らず、親は子の未来を夢想して逝くのだろうが、赴く先は地獄だろうな。
それでも東の生活で少しはましになったのだろうが、実家では相変わらずの生活か。
なのに休みのたびに帰省していたと言うのも、恐らくは親の命令なのだろう。
絡繰人形を人間に戻すのはお前の役目だぞ、金太。
てかさぁ、元はオレに敷かれたレールだったが、悪かったな、押し付けて。
相当に相手の親は面倒な手合いのようだが、金太じゃ丸め込まれるのがオチだな。
まあ、何かあったら助けるからよ、その立ち位置で頑張ってくれよな。
もうオレには女と子を成すなど、やれない事なんだからよ。
新学期が始まってすぐさまテスト。
本当にもう、テストは学生の宿命だが、そんなに試験の必要が本当にあるのかどうか。
ちなみに迷宮内の学校での試験は年に1度だけだ。
そこでクリアすれば繰り上がり、理解が及んでなければ同年をもう1度になる。
つまり、年に1度にする事によって、広範囲な内容となり、必然的に一夜漬けを防ぐ事になる。
本当に理解していなければ上には昇れないので、皆は必然的に身に付けようとする。
だから生徒は皆、真面目に勉強に励んでいるんだが、こちらの世界を参考にしたとはいえ、こっちの学生より優秀そうに見えるのは不思議だな。
青は藍より出でて藍より青し、って事なのかねぇ。
◇
寒くなったのでコンタも定位置で襟巻き状態になっている。
それがどうにも教師に不人気のようで、困ったものである。
「それは違反だぞ」
「襟巻きが校則違反とは、寡聞にして聞かないが」
「贅沢品がいかんと言っておる」
「何が贅沢なのか分からんな」
「とにかくそれは没収だっ、いたたた」
「そりゃ生きているキツネを掴もうとすれば、誰でも噛まれるだろ」
「そんなものは違反だ。学校にペットなど、それも野生動物など絶対に認めん」
「ペットと野生動物は全く意味が違うぞ。それにこいつはオレの家族だし、そいつを誘拐するつもりなら覚悟がある」
「教師に逆らうのか」
「当たり前だろ。教師だろうと誰だろうと、不条理には逆らうのが当然だ。それとも、目上の者の命令に絶対服従するロボットを製造するのがこの学校の真の狙いなのか? そんな学校など工場って名前に変更しろよ。そんな非人道的な教育など、まともな代物とは到底思えん。反社会的な活動をする学校とか、どっかの国の出先機関かよ」
(うわぁ、言い切ったね)
(あのセンコー、元々その気があったけど、誰も言えなかったんだよな)
(ああ、嫌だ嫌だ、赤い教師など洒落にもならん)
(けどあれで改善になると良いわね)
(あいつがそこまで言うとはな。かつてとはえらい違いだぜ)
(そういや、苛められていたんだよね)
(もうそんな事をする奴は居ないだろ)
話は校長のところまで届き、服従ロボット製造工場の話で相手がひるみ、内容を聞いてやり過ぎを悟ったのか、急に下手になる。
それでも誤魔化せると思ったのか、口頭での約束もどきで終わらせようとするので、精神誘導で確約させておいた。
あれで約束通りあいつをクビにしないと、本人の首が物理的に絞まるかも知れないぞ。
オレとしては何も手を下さないが、精神の奥底に刻まれた誓約は彼自身を縛るから、完全に破棄したら無意識のうちに首を吊るかも知れない。
どのみち教師も校長も交換部品のようなもの。
壊れたらまた新しい部品が配属されてくる。
だから別に壊しても構わないよな。
だって不良部品なんだしさ。
タヌキとキツネの攻防。
新聞部がそんな見出しで新聞を配布した。
タヌキと言うのが校長で、キツネはどうやらオレらしい。
てか、コンタを首に巻いているからだよな。
それにしても悪かったな。
平和な世界だから自動防御は必要無いって言っちまって。
まさか急に掴みに来るとは思わなくてよ、怖かったろうな。
だから思わず噛んでしまったんだろう。
あんな奴、どうなっても構わんが、下手にどうにかなったらコンタのせいにされちまう。
保険機関に出張られたら厄介だから、嫌々ながらも解毒と回復はしておいたが、もう少しでアジト送りにするところだったぞ。
てかさ、迷宮内はオレの領域なんだし、アイテム類は使えないか?
その可能性はあるな。
折角なので件の教師を深い精神誘導で誘致して、色々な実験に付き合ってもらった。
その結果、迷宮内ならば使えると分かったので、これからの事が楽になった。
早速にも京都のビル自体を迷宮の領域化をさせ、あそこで売って使えば使えるという状態にした。
代理人は精力的に各所に働きかけているようで、もうじき形になるかも知れない。
金太の動きがどうにも遅いので、このまま代理人を仮初のトップに据えて活動開始にしても構わないかも知れない。
ただなぁ、元が治安を悪化させる団体の一員だったから風聞が悪いかも知れないが、冒険者もそんなに上等な職業って訳でも無いし、特に問題は無いとは思う。
『冒険者協会』
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会員の形ですが、当社に所属する事になりますので、様々なアフターサービスが利用になれます。
特にライセンスカードにはある特殊な機能が付属しておりまして、それを活用すれば有効な迷宮探索を可能とするでしょう。
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ちなみに当社所有の迷宮には、当社所属の冒険者しか入れません。
これ、もう出しても良いかなぁ。




