第二十九話 どうして着替えなかったの?
少々用がありましたので、11日に2話上げて昨日は休みました。
これで平均的毎日更新に(苦しい言い訳)
現地に着いて駅構内で別行動となる。
それと言うのも、着いて来ないで欲しいと言われた為であり、それに素直に従った為でもある。
もちろん、頼んだのは女性陣だったので素直に従ったのであり、金太が言うなら無視していたところだ。
その理由は定かでは無いが、恐らくは家の職業のせいだろう。
金太は仕方が無いとしても、本来は男にあんまり関わりの無い職業のようだし。
そんな訳で別行動となり、ひとまずは目的地の見学から開始した。
施設自体はそこまで大きなものではないので、迷宮化には苦労は無さそうだ。
ただ、問題は中の仕組みが余りにも迷宮に向いてないって事だろうか。
かつてはもっと複雑に入り組んでいたんだろうが、観光目的の為にかなり改造されているようだ。
となると、初期投資がかなり必要になるが、さすがにサブシス用のコアもそういくつもある訳じゃない。
元々、あれは将来、国が増えたりサブシスでも許容限度を超えた時の為の予備の役割で作っていたものだ。
もちろんそう簡単に作れるものではないが、長きに亘っての管理生活の中で拵えたものなのでまだ少しは余裕がある。
だけど、あのアジトのようにまたぞろ何かのトラブルでも起こらない保障は無い。
となると、次善の策を使うか。
アジトのサブシスで制御させるという方法がまずひとつ。
後は単なる転移拠点にして、アジトの迷宮部分に転移させるという方法。
もしくはアジトをこちらに移設して、あそこは廃棄するという方法。
どれにすべきかだが、どうにもな。
ちょっとこの城は迷宮に向かないな。
今更、他と言っても困るが、さてどうするか。
迷宮敷設の前段階の、アースソナーで調べてみると活断層がやけに多い。
確かに迷宮はひとつの構造物だから、中で地割れとかにはならないが、こんな場所で図体のでかい迷宮を据えたりしたら、そのまま沈降下しないとも限らない。
確かに周囲に根を張るように据えるから、そう簡単にどうこうなりはしないが、その周囲が脆ければ意味が無い。
砂地に植木鉢を置くように、揺らせば植木鉢は砂地に沈んで行くだろう。
いくら周囲に突っ支い棒を置いたとしても、それごと潜っていくだろう。
ううむ、どうすっかな。
サイトで調べてみると、隣の県の北のほうには活断層が無いので、隣の県に移動する。
◇
開き直って街中にこっそり据えてみた。
規模的には小さいんだけど、アジトの迷宮への転移方式だ。
いわゆるあちらの世界の転移拠点のような物を市街地に拵えた訳だ。
もちろん、その土地は確保してある。
さすがに都会だからと、金塊を大量に処分して用意はしていたんだけど、たまたま理想の場所近くに事務所ビルがあったんだ。
好都合とばかりに精神誘導を使ったら、それはそれは快く移転してくれました。
しかも、移転先の山奥の土地代金程度の金で良かったので、そっくり余ったんだけどな。
もっとも、これは治安的に言うなら駆除と言ったほうが良いんだけど、隣県の山の中への移転という誘導、解けたら不思議に思うかな?
でも、土地と家屋は既に売却済みだから、後で返してくれとは言えないぞ。
言うなら迷宮の肥やしにするだけだ。
これをそのまま協会のビルにしてしまえば、敷地内から迷宮探索がやれるようになる。
その代理人は現在、精神誘導の中にあるので、本人が望んでやっているつもりになっている。
元々、自由業の人だから、これは有効活用になるのかな。
精々、金太が組織を作るまで、下準備を頼むな。
そうして一通り終わったので、サブシスに連絡して接続させておいた。
もっとも、今はビル地下の転移拠点は封鎖してはあるが。
もっと時間が掛かるからと思ったら、数日で終わって良かったな。
さてと、あいつらはどの辺りかな。
金太で調べると意外と近かったので、そのまま歩いて行く事にした。
大阪じゃなかったらしい。
まあ、舞妓がどうのこうの言っていたから、そうかなとも思っていたが、新大阪で降りるからてっきりと……違っていたらしい。
「えっ、なんでここに居るの」
「カモのてんぷら、大失敗」
「そういうの、止めたほうが良いわよ」
「爺さんだし」
「見た目にそぐわないと言っているの。まあいいわ、来たのならお入りなさいな」
「けど、あれ、よく分かったな」
「カモのフライでカモフラの事? 分かるわよ、それぐらい」
「ううむ、同じ感性なのか」
「ちょ、止めてよ」
中に案内されて、そのまま客室かと思いきや、そのまま奥座敷に連れて行かれる。
そうして何故か、見学と言うか体験と言うか。
「どうしてこんな事に」
「そんな格好で来るからよ。どうして着替えなかったの? 」
ああ、女の服を着たままだった。
しまったな、この服、着替えるのが凄く面倒だからつい、このまま動いちまったんだよな。
「着替え大変」
「ああ、1人じゃ脱げないのね。納得だけど、あんたの母親も奇特な趣味と言うか」
「迷惑しているぞ」
「そりゃそうだろうけど」
おや、母親かな?
「ようこそおいでやしたな」
「お邪魔しています」
「まあ、ゆっくりしていけばええどすよ」
「はい」
(あんた、なんでそんな高い声で返事すんのよ。うちの母さん、勘違いしているわよ、きっと)
(いや、ついな。家では言われるんだよ、母さんに。だからつい、いつもの癖でやっちまうんだ)
(そのうちそれが当たり前になったりして)
(それは困るな)
最初は見学という事で、そのまま見ていると彼女の母親を若くしたような人が入ってくる。
お姉さんかな?
そうして歌のようなものを歌いだす。
歌のようなものと言うのは、普通の歌じゃないからだ。
なんて言うのかな、こういうの。
詩吟? 父さんが風呂でうなってるアレ?
うん、ちょっとあれに似ているな。
正式名称は知らないけど。
「かえるの歌が聞こえてくるよ」
「それってさ、芸妓の事よね」
「ううむ、まさか分かるとは」
「ウチの歌が蛙だって? 」
「ああ、そうじゃないのよ。ゲーコゲーコよ」
「正解」
「親父ギャグどしたか」
「年だしな」
「そないに若い子に年の事を言われたら、ウチはどうすればええの? 」
「ああ、もうアンタは黙っといて」
「面目ない」
いかんな、どうにも癖になっちまって、ひょいと出ちまうぞ。
言葉遊びの一環で、コンタと色々言って遊んでいたのがすっかり癖になっているみたいだ。
なんせ日本語は習得が難しいらしいから、一通り覚えたところで言葉遊びで習得させようと思ったんだ。
だから音が似ている言葉を使って遊んでいたら、すっかりそれが馴染んでしまったんだ。
拙いな、何とか治さないと。




