第二十一話 それを勇者が討伐?
勇者予備軍達はどうやら訓練の真っ只中にあるようで、今の内に対策をしようと思った。
さりげなく潜り込んで調べたところ、3人の魔王の名は『エイプニエル』『ホーマック』『ノイント』になっていた。
参ったな、全員知っているぞ。
特にエイプニエルはオレの友人の立ち位置で、脳筋管理と呼んでいる奴だ。
『エイプニエルの場合』
「ようっ、お前、勇者が召喚されたぞ。何やらかしたんだ」
「ちっ、人族共め。ちょっと国を1つ滅ぼしたぐらいで、派手な反応しやがって」
「そりゃダメだろ」
「そういうお前はいくつ滅ぼしたよ」
「ふふん、表に出るからそうなるんだ。この脳筋が」
「そういや、お前が直接滅ぼした訳じゃ無かったのか」
「人は堕落と退廃で容易く滅ぶものさ。オレはそいつを助長してやったに過ぎんさ」
簡単なものさ。
そうして自らで滅ぶ分には神託の圏外みたいでな、オレのせいにはならないみたいなのさ。
もちろん、甘い汁はたっぷり吸ったが、それぐらいじゃ討伐対象にはならないみたいなのさ。
だから滅ぶ寸前まで間引きをして、とっとと退散して後は悠々自適に滅ぶ国の様子を眺めていればいい。
そうして今までやって来たんだ。
「やれやれ。で、どうすりゃいい」
「滅びは嫌か」
「当たり前であろう。我はまだ生きていたい」
「ふむ、ならお前、オレの配下になるか? 」
「それは断ったはずだ」
「ところが状況は変わったんだ」
「どういう事だ」
「オレな、どういう訳だか異世界に行っちまってな、そこで何の因果か勇者召還されちまったんだ」
「は? 」
「つまり、今のオレは勇者でもあるのさ」
「はあああ? 」
まあそれが普通の反応だよな。
オレもまさかと思ったぐらいさ。
「勇者の配下。これ程に確実な隠れ蓑は他に無いと思うがな」
「本当に本当なのか? 」
「ああ、で、どうする? その気があるなら騒動が終わるまで、お前はオレの迷宮に避難しろ」
「それでいけるのか? 」
「魔王は実質的にトップの立ち位置。それが誰かの配下になれば意味を失う。そいつが勇者なら尚更の事だ。」
「何だってそんな事になってんだ」
「オレも知らんが、あるものは利用するだけだ」
「判った。早急に準備しよう」
「まあ、断るならお前を討伐しないといけないから、良かったよ」
「危ねぇ。うっかり滅ぶところだったぜ」
「よく言うぜ。力はお前のほうが上だろ」
「1437戦199勝なオレじゃ勝てねぇよ」
「もうそんなに遊んだのか。まあ、次勝てばめでたく200勝だな」
「負けたら滅びだろ。そんな賭け乗れるか」
はい、魔王消滅っと。
さて、次はホーマックかか。
そしてノイントもだな。
あいつら、やり過ぎたらヤバいとあれ程に言ってやったと言うのに。
全く、困った奴らだ。
『ホーマックの場合』
「おーい、ホーマック」
「あ、いらっしゃい」
「お前、魔王認定されているぞ」
「ああ、やっぱり」
「何をしたんだ」
「それがさ、不可抗力なんだ。そんなつもりは無かったのに、事故で王族が死んでしまって、それで逃げたんだけど、ダメだったみたいで」
「このままだと討伐されるぞ」
「でも、召喚されたばかりの勇者とか、敵じゃないっすよ」
「実はこのたび、オレも勇者になっちまってな。どうだ、オレと戦うか? 」
「そ、そんな」
「敵じゃないんだろ、くっくっくっ。さあ、来いよ」
「は、は、は、配下になりますぅぅぅ」
「なんだ殺し合わないのか。それでも良いんだけどよ」
「無理ですぅぅぅぅ」
『ノイントの場合』
「おい、ノイント」
「何か用か。今忙しいんだよ」
「お前、魔王認定されているぞ」
「それがどうした」
「既に勇者も召喚されている。滅ぶのは時間の問題だな」
「ふん、望むところだ」
「オレの配下になれば助かるぞ」
「煩いよ。てめぇの下になんか付けるかよ」
「なら、勇者に滅ぼされても良いんだな」
「ああ、そんな強い勇者となら是非戦ってみたいぜ」
「判った」
トスッ……
「な、に、が……」
「討伐完了。オレ実は勇者でな」
「そ、そ、ん、な……」
サクッ……
首確保っと。
そうして3人の指定魔王との対談は終わり、エイプニエルとホーマックが配下に加わったが、ノイントは残念な事になっちまった。
でもこれで神託の相手は居なくなった訳だが、勇者の用途はどうなるのかねぇ。
◇
(大変です)
(どうした、騒がしいぞ)
(3体の魔王全てが消滅しました)
(何じゃと)
(どうしましょうか。現在、修行中の勇者達は)
(ええい、こうなれば致し方無い。例の迷宮の討伐に切り替えぃ)
(最古の迷宮ですな)
(あれこそは諸悪の根源。その討伐は悲願じゃ)
(しかし、勇者だけでは)
(構わぬ。どのみち目的が消えたのじゃ。勇者のみで突撃させぃ)
(はっ、畏まりました)
◇
「ゼラート国、探索班より連絡です」
「どうした」
「勇者が全てこちらに向かっていると報告がありました」
「ほお、それは地上を進んでいるのか」
「恐らく迷宮都市からの侵入を試みているものかと」
「使者として来た訳ではないが、とりあえず迎賓エリアへ誘致しろ。オレが相対する」
「畏まりました」
やれやれ、何をとち狂ったか。
勇者だけでここを攻略?
そんなの無理に決まっているだろ。
まだまだ召喚して訓練の最中だったはずだし、そんな奴らに攻略出来るようなうちじゃないぞ。
幹部連中とその配下だけでも100人を超えているんだ。
幹部ってのはドラゴンの人化だぞ。
それらが元の姿に戻れば、ドラゴン100体になるんだぞ。
そんなのをどうやって倒すと言うんだ。
スキル? 甘いな。
迎賓エリアは基本的に、攻撃スキル禁止エリアだ。
やるなら自力でやらないといけないが、そんな底力があれば良いがな。
そもそも、ここは既に勇者所有になっているのに、それを勇者が討伐?
勇者と勇者の戦いを推奨するのは構わんが、そいつは3大国に通達しておくぞ。
なんせオレは既に1体倒している現役なのに比べ、あっちは未経験の見習い勇者だ。
そんなのが討伐に来るとかさ、もう国の陰謀としか思えないと思うよな。
まあ、その線で通達すれば、後はあれらが潰してくれるだろう。
そうして勇者召還の術式は永久に葬られると。
◇
──臨時3大国会議──
おかしな事になったようじゃ。
どのような話でしょう。
教えてください。
うむ、実はの、ワシのところに彼のダンジョンマスターから連絡が来ての、このたび、ゼラートの恩恵により勇者になったと申された。
それはまた、本当なのでしょうか
信じられません。
あやつはそのようなつまらぬ嘘を付くような奴ではない。
そもそも、その必要が無いからじゃが。
じゃあ、本当に。
どうなるのでしょう。
恐らくはゼラートの失敗じゃの。
何かしらの理由であやつが召喚になったのじゃろう。
それが証拠にあやつ、魔王の首1つを持参しての、討伐したと申しておった。
勇者と勇者の対決となれば、これは大義名分になりませんか?
そうですね。
ふっふっふっ、鋭いの。
実はの、その事を彼も申しておっての、勇者の集団は引き受けるから、後は好きに料理すると良いと言われての。
それはまた。
それなら可能です。
うむ、どうじゃ、一口乗るかの。
是非にも。
共に戦いましょう。
決まりじゃな。
全く、いまいましい国をようやっと葬れるの。
そうですね。
そもそも、他の世界から人を誘拐して尖兵に仕立て上げるなど、人の道に外れております。
あのような国がのそばっていては、世界の為になりません。
よう言うた。なればそなたに先鋒を任せようぞ。
存分な働きで地盤を固めるが宜しかろう。
ご配慮ありがたき。
必ずや盛大な成果を上げてご覧に入れます。
うむ、任せたぞ。
◇
そして2等分ですか。
いやいや、そこはきちんと分けるぞ。
犠牲は彼らの国に、儲けは3等分ですか。
それぐらいはしても良かろうぞ。
あやつは地盤を固めねばならぬ。
なれば華々しい成果が必要なのじゃ。
それを渡すのじゃから見返りは当然じゃろ。
狡猾ですね、くすくす。
お互い様じゃ。
それにしても彼の者が勇者とは。
あれでもあやつはこの世界の事を考えているようでの、今までの者達とは何かが違うようじゃ。
では人類の敵ではないと?
それは分からぬが、少なくとも魔王になるような輩とは違うと思うのじゃ。
私も会ってみたくなりました。
うむ、一度会うて判断するのも宜しかろう。
そうですね。




