第十八話 何かあるのかな?
結局、昨日は買い物に出られなかった。
なので仕方なく、始業式が終わったら買いに行く事にしてある。
そういや、アジトの入り口前にまいていておいた金がまた減っていたので追加したのと、エンドレス化の調整をしておいた。
すなわち、1度だけの3階への誘致に切り替え、そこから戻れたら出られるようにしておいたんだ。
あんまり戻らないと騒ぎがでかくなるからと思ったが、もうなっているようだな。
警戒色のラインが引かれて立ち入り禁止になっていて、周囲を警備員らしき人がうろうろしていた。
黄色と黒は危険の印、24時間警備中ってか、困ったもんだ。
◇
登校日、早朝の時間帯。
親には朝は早く出ると伝えてあり、まだ暗いうちから家を出た。
それと言うのもこちらに戻ってから、買い物が趣味になってしまったんだ。
て言うか、土産だ。
もっとも、ネトゲ経由で渡せはするが、出来れば戻って渡したいと思っている。
そんな訳でその日の為にと様々な物資を収集に余念が無いんだ。
始業の今日もそれは同じで、通学路でも開いている店は軒並み狙った。
コンビニは言うに及ばず、タバコ屋も開いていれば対象にした。
それはもう、目に付く物は買えるだけ買った。
かつて苛めでの発散に酒やタバコに走ったが、それでもそこまで陰湿な苛めでは無かったし、反撃も考えていた。
投擲の真似事でミカン箱を穴だらけにしてみたり、実際にカバンに忍ばせたりもしていた。
まあそんな機会も無かった訳だが、転移先では役に立ったと言っておこう。
そんな訳でタバコも買いました。
向こうでもタバコはあったので一応は嗜んではいた。
まあそんな体質も消えちまったんだけどな。
それでも人だった名残りのように、たまには吸っていたものだ。
もっとも、特に美味くも感じず、その習慣性も無かったんだけど。
酒もタバコも愛飲者はそれなりに居るし、お土産にはなるだろう。
そう思って買い占めたんだけど。
そんな訳でオレの通学路にあった店は軒並み、買い占めの嵐が吹き荒れた。
そういやこの前もピザ屋だのチキン屋だの弁当屋だのと食料品を買いまくり、更に文房具やら雑貨に衣類、食器や工具に様々な資材など、外に出るたびに買いまくっていたな。
だから本屋巡りの時にも色々買ったから、恐らく相当な量になっているはずだ。
いつかは戻れると、それを願っての買い集めもいい加減にしないと、派手な在庫になっちまうな。
だけどなるべく大勢に渡そうと思うから、余計にたくさんになっちまうんだ。
だからまたアタッチメントを買いに行ったら、ついでに何かしら買うんだろうな。
◇
「はぁぁぁ、眠みぃ」
「徹夜で宿題をしたな」
「お前はどうなんだ」
「そりゃもちろん、中に導入して研究室でやったさ」
「そうか、そういう手もあったんだな」
「自由研究は本屋による蔵書の違いの統計だ」
「そんなの何時やったんだ」
「ふふん、ゲーム三昧と思ったか」
「ヤバいな。オレの研究、通るかな」
「どんな研究なんだ」
「体重の推移だ」
「すき焼きで太ったか」
「あんまり変わらなかった」
「まあいい。ほれ、それでも食っとけ」
「おっ、パンと珈琲か、サンキュ」
以前、本屋巡りをした時に、ついでにやったのが蔵書の研究。
店によってラインナップがかなり違うようで、この際だからと自由研究にしようと思ったんだ。
何故か店員がかなり協力してくれて、最近の傾向なんかも教えてくれたんだ。
その代わり、色々と注目されたけど。
◇
あいつは多少、目が覚めたらしく、始業式で眠りはしなかった。
いや、眠るどころじゃ無かったとも言うが。
校長の退屈で長々とした話に遂にあいつが欠伸を始めた頃、急に話の調子がおかしくなったんだ。
世界の悪についての話に切り替わり、その是正こそが名誉なのだと、変な話になっちまった。
折しも退屈な話で催眠状態にも近い状況になっており、あいつの頭を叩かなかったら洗脳もどきになっていた可能性もある。
オレは状態異常無効で効かないが、普通の人間だとヤバいぞ。
そうしてあいつも変な話だよなと言い、ひとまずは安心していたところ。
『送迎術式……対象術式確認……発動、勇者送致』
うお、身体が動かん。
これは何だ。
まさか、いや、校長はこっちの人間のはずだろ。
何かの企みか。
何処に送られるんだ。
くそ、どうすればいい。
母さん、父さん、折角会えたのに、ごめんな。
短い間だったけど、オレは嬉しかったぞ。
もう、会えないかも知れないけど、元気でな。
さようなら……
◇
(やれやれ、これで役目も終わりか)
「……であるからして、これからの時を大事にして、学校生活を送って欲しいと思う訳であり……」
(よし、気付いてないな。それにしてもこいつ、耄碌してないか? 全員消えたのに気付いてないのかよ)
◇
真っ白い空間……
「おい、ここはどこなんだ」
「てかよ、校長って何者だよ」
「どうなったのよ」
「どこよ、ここ」
おや、何かの気配が近付くな。
『皆の者、騒ぐでない』
どうやら黒幕の登場らしい。
てかさ、あいつこの世界の関係者だよな。
よーし、試してやるぜ。
油断しているとどうなっても知らないぞ。
《洗脳術……精神誘導》
勇者召還と言われてもな。
お前ら、ちゃんと人選してないだろ。
よりにもよって迷宮管理を誘致とか、間抜けにも程があるぞ。
どこの世界に送られるかは知らんが、勇者所有の迷宮とか、どうしようもないぞ。
だって勇者を魔王に認定ってやれるのかよ。
それぞれの願いを3つねぇ。
『ではゆっくりと考えて、担当の者達にそれぞれ申告するのじゃ。良いな』
よし、成功したな。
黒幕本人だと成功率が低そうなので、排除する方向に誘導したんだ。
え、何の成功率だって?
『決まったのですね』
「異界千里眼と異界転送術と逆行術式・極にしてくれ」
『よくそんなのを知っていますね』
お、あるのか。
となるともしや、オレの居た世界なのか?
ゼラート国に誘致されるのか?
「別に一覧に無くても良いんだろ」
「はい、設定します」
「よろしく」
ステータス確認……よし、バッチリだ。
◇
神様本人ならきっとクレームが付いた事だろうよ。
けど、配下にそんな事は関係ねぇ。
だからあっさりと事務処理になったんだ。
それにしても、あの神様ってのも大した存在じゃねぇな。
確かにスキルの授与能力は凄いが、攻撃など想定してないと見えて、油断しまくりだったもんな。
あっさりとオレの術に嵌りやがって、配下に任せてくれたしな。
これで保険確保だぜ。
そうしていよいよ送られた先は、見覚えのあるゼラートの王。
ああ、やはりそうなったのか。
それにしても、人数が少ないようだが、選抜になったのかな。
ああ、戦いに向かないスキルを選んだ奴らを省いたのか。
それと、どうしても嫌がる奴とかも省いたとしたら、今居る奴らは多少なりとも諦めたか希望したんだな。
まあ、スキルを選ぶって事は、行く事に承諾したとも言える訳だし。




