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食いしん坊スライムはダンジョン最深部を目指す  作者: バナナ


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第16話 記録される魔物

最初に戻ってきたのは、痛みだった。

全身を岩で挟まれ、焼いた鉄を核へ押し当てられているように苦しい。身をよじろうとしても動かない。目も耳もないはずなのに、暗い。骨鎧守護者を倒したあと、安全小区画まで這い戻り、守護骨粉と黒殻膜と鉱殻板を身体へ巻きつけたところまでは覚えている。

進化のために残した保存水は二単位。進化中に吸収する栄養泥は一塊。目覚めた後の非常食として、保存肉一枚には手をつけず隔離した。入口には骨杭を三本、偽の水跡を二本。魔材殻が固まり始めた時には、もう核を一寸も動かせなかった。

十二時間の暗闇で、何度も外から石を引っかく音がした。一度は白い光が殻の継ぎ目をなぞり、残しておいた骨杭が折れた。逃げようにも、叫ぼうにも、身体そのものが眠っている。見つかったら食われるだけだ。その恐怖を抱えたまま、俺は意識を失った。

だから殻の内側へ細い亀裂が走った時、俺は喜ぶより先に悲鳴を上げた。

「ひっ、割れた! 俺が割れた!? いや、外が割れた? どっちでもいい、動け、俺!」

力を込めると、魔材殻が内側から弾けた。黒い破片と白い骨粉が飛び散り、青みを帯びた身体が床へ転がり出る。転がった勢いを止められず、壁へべちゃりと張りついた。

「痛っ……生きてる! 痛いってことは生きてる! たぶん!」

身体が軽い。いや、軽いだけではない。核から外皮までの距離を、前より細かく感じ取れる。右側だけを硬くし、左側だけを伸ばせる。水に触れていない縁まで、魔力が指先のように届いていた。

まず確認だ。浮かれて知らない力を振り回せば、骨鎧守護者との勝利まで事故死の前置きになる。


挿絵(By みてみん)


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