表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
春に奏でる  作者: よっち
2/6

階段下の怪異 2



 次の日俺は学校を休んで綾さんを迎える為に母の実家である神社に向かった。叔父さんには粗方説明しておいたので大丈夫だろう。


約束の時間の少し前、綾さんとご両親、智輝の姿が見えた。……その後ろに大貴、悠、翔太の姿も…。


一応俺はこの神社の手伝いを昔からしている為、神官見習いとして置いてもらっている。神職としての仮面を外す事は出来ない!例え、どんなに気恥ずかしくても!頑張れ、俺!と神職スマイルを貼り付ける。


「此の度は遠い所お疲れ様でございます。当社の宮司には話を通してあります。どうぞこちらへ。」

白衣に浅黄色の袴で俺は神職の衣装を纏い出迎え境内へと案内する。

綾さん達が神妙な面持ちで境内へと向かうその後ろ、神妙な面持ちで大貴、悠、翔太が続く。

「後ろのお友達もお祓いを受けられるのですか?」

「いや!俺達は!…心配で一緒に来ただけだから…。」

「…では、こちらで休まれて下さい。お茶もお出ししますね。」

綾さん達の案内を他の人に頼み、俺は3人を社務所の裏、プライベートな所へと連れて行った。

「叔母さん、すみません。友達が来ているのでここで少し休ませてもらっても良いですか?」

「あらあら、まあまあ、奏ちゃんのお友達?もちろんよ。」

叔母さんは俺がぼっちだった事を知っているので殊の外、喜んでくれた。

「さあさあ、いらっしゃい。お茶がいいかしら?ジュースもあるのよ。頂き物のお菓子もあるわ。」

3人は恐縮しながらもいそいそとお菓子につられて行った。

「奏ちゃんはまだお仕事があるでしょう?頑張っていらっしゃいな。」

俺は3人を叔母さん任せて智輝達の元へ向かった。


智輝達のいる部屋へ戻るとまだ叔父さんは来ていなかった。

「遠い所お疲れ様です。今お茶を出しますね。少し緊張されているようですね。」

出来るだけ穏やかに見えるようにお茶を準備していると、

「…奏多だよな…?」

智輝が恐る恐る声をかけてくる。

にこりと笑って頷くと、

「止めろよ、いつも通りにしてくれよ。」

俺は少し困った顔を作り、

「今は仕事中ですので…。すみませんが彼にお茶のお手伝いをして頂いても宜しいですか?」

綾さん達へ伺うとコクコクと頷いたので、近くに来てもらい、智輝に小さい声で、

「悪いな、他の人の手前これで勘弁してくれ。」

「あ…、やっぱり奏多だ。別人みたいだな…。」

等とボソボソと智輝と話しながらお茶の準備をしていると叔父さんがやって来た。

「あぁ、奏多、ありがとう。そちらがお友達かい?」

叔父さんも俺のぼっちを心配してくれていたので心なしか嬉しそうだ。

「はい。今回は叔父さんのお力をお借りします。宜しくお願いします。」

お礼を言い俺は入り口付近で待機しようとしたが、

「いい。奏多、こちらに来なさい。初めての事でお友達も緊張しているだろうからお前がいた方が良いだろう。」

叔父さんが俺を隣に座らせてくれた。

「さて、はじめまして。私はこの神社の宮司をしております。今回は大変辛い経験をくれましたね。

奏多から話は伺っておりますが、ご本人ご家族様からもお話をお聞かせいただけますか?」

綾さんが恐る恐る話し出す。

「私にも分からないんです。ただ…、ある日を境に何処からか視線を感じるようになったんです。最初は気のせいだと思ったんですが少しずつ視線が近くなってきたような気がして…。1人でいる時も家族でいる時も智君といる時もここに誰かがいるんです。」

綾さんはここ、と言って頭のすぐ斜め横を指さした。

待って…、そんな近くに感じてたの…?もしかして結構やばかったのかもしれない…。

「もう…、怖くて怖くて…。」

綾さんは守るように自分を抱き締めた。横で智輝が痛ましい顔をして綾さんを抱き寄せる。


……智輝…、すげえな……。両親の前でこれが出来るとは…。これがリア充というやつか…?誰か…、いや…、大貴達がここにいてくれたらこの気持ちを分かち合えたのか…?

叔父さんは微笑ましく、ご両親は頼りにしてるぞ、といった視線を2人に向けている。

……付き合った事がないどころか、ぼっちを邁進していた俺にとって、今…、何故か全力で走りたい気分だ。きっと大貴達もこの気持ちを分かってくれるはずだ…。

あぁ…置いてきたあの3人を恋しく思う日が来るとは…。



ご両親に聞いた話も同じ様な感じだった。最初は気の所為とか考え過ぎだと宥めていたが徐々に不安定になり恐慌状態に陥り始めた為、これはおかしいと病気に連れて行くつもりだったと。

「失礼ながら調べた所、こちらはお祓いやお浄めが有名だそうですね。どうぞ娘を宜しくお願いします。」

とご両親が深々と頭を下げると、智輝達も一緒に頭を下げた。


「奏多、君の方のからは何かあるかい?」

「綾さんに絡み付いていた糸と同じ様な物がクラスメイトの女性にも絡み付いてました。彼女も教室で怯えた様子を見せていました。その後今は学校を休んでいます。そしてその女性に会った後、綾さんにも同じ様な事が起こっています。その女性がおかしくなったきっかけは高校での肝試しでした。」

「肝試し?まさかあそこでやったのかい?」

「そう聞いております。」

「いや…、しかしあそこはそれ程危険な状態ではなかったはずだが……。」

「えぇ、私の見た限りでもそうでした。余程の何かがない限りは問題ないかと…。」

「では、その余程の何かがあったのかな?」

「そこは本人達に聞いてみないと何とも…。」

「……話せるかい…?」

人見知りな俺にあんな陽気な人達と話せるわけがない…。

「……。」

「俺が話を聞いてみます。」

智輝が助け舟を出してくれる。

「では君はそちらを調べてみてくれ。奏多、君には糸の元を辿ってもらうよ。」

「はい。のんびり辿っているみたいでまだ辿り着けて居ないようですが明日にはきっと…。」

叔父さんはコクリと頷くと、

「では依頼のお祓いに入りましょう。身代わりの人形も用意しましたので、今までの人形を頂けますか?」

綾さんがカバンから昨日俺が作った人形を丁寧に出すと、叔父さんが呆れた様に、

「…奏多…、いくらなんでもこれは……。よくこれで成功したね。」


…だってルーズリーフしかなかったんだから仕方なくねぇ…?



 一通りお祓いが終わり、大貴達とも合流した。綾さん一家はスッキリした顔で帰ったので、俺達5人は神社で俺が与えられている部屋に行った。

「はぁ〜…、改めて思ったけど奏多、お前すげえな。」

「あぁ、分かる。大人達と一緒に働いてしっかり神官さんやってんだな。」

「見習いだけどな。」

「でも俺納得したかも…。なんか奏多って雰囲気が違うっていうか、大人っていうか…。お前、落ち着いた雰囲気が良いって女子にも密かに人気らしいぞ。」


脳内で俺にも彼女が出来るかも…と、そわっとしたがすぐに気味悪がられる絵が想像出来てしまってへこんだ。それに俺は落ち着いているんじゃなくてぼっちだったからだし…。


「でも奏多、今回は本当にありがとうな。俺何もしてやれなかったからすげぇ助かった。俺協力するからなんでも言えよ。取りあえず俺は慎吾達からあの時何があったのか聞いてみるな。」

智輝が言うと

「俺も!俺も協力する!俺も肝試しの時の話彼奴等に聞いてみるな!」

悠や翔太も

「なら俺達は響子や瞳が今どうしてるのか探ってみるよ。」

「あぁ、そうだな。なんかこういうのって適材適所っていうか…。仲間みたいな感じで良いな!」

…仲間…。俺も仲間になるのか…。ぼっちじゃなくて良いのか…。

「情報収集は俺達に任せろ。奏多はその後を頼んだぞ。きっとお前にしか出来ないからな。」

任された事が嬉しくて、頼りにされたのが嬉しくて俺は大きく頷いた。




 翌日の昼休み、弁当を持って人のいない所を探して化学準備室へと辿り着くと大貴が口を開いた。

「例の肝試しの件だけどな、一緒に行った奴らやその周りの奴らに聞いてきたぞ。」

大貴の交友範囲の広さと行動の速さに恐れ慄く。

(こいつも陽キャだもんな……。)

ちょっぴり羨ましいとか思いつつ続きを待つ。

「夜中の12時に忍び込んで肝試ししたってさ。最初は皆浮かれてたんだけど、プレハブに着いたあたりから響子の様子がおかしくなってきて、瞳に当たってきたそうだ。慎吾から離れろとか媚びてんじゃねえよとか…。響子は慎吾が好きだったらしくて慎吾と仲がよかった瞳に対してケンカ腰に当たり散らしたらしい。でも普段は全然そんな素振りも見せないで、どちらかと言うと慎吾と瞳を応援してたっぽいから皆も戸惑って仲裁したり宥めたりしてたって。」

ここで智輝が手を上げて、

「補足。プレハブに着いた時、マジでケンカっぽくなって、瞳が響子を突き飛ばして響子は膝を擦りむいたらしい。その後急に震えながら瞳に暴言を吐いたり暴れたりしたってさ。」

……智輝も…?。仕事早いんですけど…。

悠からも、

「俺達からも。現在響子は家から全く出てないらしい。家族が病院に連れて行こうとすると手が付けられない位暴れるらしい。響子の両親が学校と慎吾達に対してイジメやら何やらを訴えていて参ってるらしいぞ。」

翔太が、

「瞳についても聞いてきた。あの後奏多の言う通り何かに怯えていたらしい。誰かが見てるとか眠れないとかかなり追い詰められていたってさ。今は家にいてやっぱ外には出ない生活を送ってるらしい。病院に行って睡眠薬もらってなんとか眠れている状態らしい。」


…皆…、すげぇ…。昨日の今日だよ?!情報収集能力高すぎねぇ?


俺が恐れ慄いていると、

「後は奏多だぞ。」

ひぇ…、俺にもこんな能力求められんの?

「……えっと…、糸の先に辿り着いたから放課後行ってみようと思う。」

「おぉ!すげぇ!さすが奏多だな!」

「じゃあ放課後に行こうな!俺達なんか注意する事とかあるか?」

「え…?皆行くの?」

俺がキョトンとして聞き返すと、皆もキョトンとして、

「え…?当たり前だろ?1人で行く気してたの?」

「で…でも危ないかも知れないぞ!」

「だから皆で行くんだろ?」

「あぁ、奏多に何かあったら俺達が抱えて逃げてやる。そして叔父さんの所に連れて行ってやるから安心しろよ!」

「で…でも怖い思いするかも知れないだろ?!」

そして巻き込んだ俺と距離を取ろうとして俺はまたぼっちに逆戻りになるんだ…。

「だから皆でいくんだよ!」

「……なら皆には守りを持ってもらう。そして危ない時には自分の身を第一に考えて欲しい。それでも良いなら…。」

「任せろ!」

「奏多のお守りかぁ…。効くんだろうなぁ。」

「早く放課後なればいいな!」

智輝だけは神妙な顔で、

「宜しく頼む。」

と言ってくれた。


…怖い思いをすればきっと俺を見る目が変わるだろう。化け物を見る様に距離を置くだろう。俺は怪異よりもそれが何よりも怖いんだ…。

そんな事ないと思えるほど皆を信用出来ていないんだ。そんな俺にも笑ってくれる奴らに後ろめたさを感じながら笑った。




 放課後になり皆が意気揚々と俺の席へ。

「早く行こうぜ!」

皆に引っ張られるように校門を出る。

「ちょっと待って!今皆に守り作るから。」

学校近くにある図書館に向かいフリールームへ行くとありがたい事に誰もいない。今の内にと思い机に神社からもらってきた御神水で作った墨を入れた持ち歩き用の筆と和紙を並べる。


目を閉じて精神を統一する。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



目を閉じた途端奏多の雰囲気がガラッと変わった。

いつも物静かで静謐な雰囲気を纏った奴だが今は”無“だ。いきなり奏多の周りの空気が動かなくなり静けさに襲われる。キーンと耳鳴りがして耳がおかしくなりそうだ。その後、目を開けた奏多は奏多ではなかった。奏多の形をした別の何かだった。近寄りがたく犯しがたい神聖な何か。

その何かが和紙に不思議な文字なのか絵なのかを書き込み始める。俺以外にも大貴も悠も翔太も奏多の変化を感じ身動きが出来ないでいる。奏多の一挙手一投足、呼吸までも目を離せずにいるとカタンと筆を置いた音が響く。誰かがハッと息を飲み空気が動いた。奏多がゆっくり目を閉じ、再び目を空けた時にはいつもの奏多だった。

俺達はその事に酷く安堵し、知らず詰めていた息を吐いた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 皆に守りを渡し鶴の元へと向かう。

皆に守りを渡すと両手で受け取ってくれたがそんなに大したことのない気休めを有難がってくれるなんてなんて良い奴等だ。


言葉少な目に俺の案内で糸の元である家へと辿り着いた。

「ここにいる。」

表札は”阿部“となっている。

「阿部って事はやっぱり瞳さんのお宅かな?考えなしに来ちゃったけどどうしよう…。」

大貴が

「任せろ!」

と言ってチャイムを鳴らす。


なんて事…。この躊躇いの無さが交友関係の広さの理由か…?俺には真似出来ない。尊敬しかねぇ。

大貴マジですげぇ……。


暫くするとインターフォンから母親だろうか、

「どなたですか?」

答えがある。

「俺達瞳さんのクラスメイトです。ずっと休んでるから心配で来ちゃいました。」

「……瞳は今体調が悪くて会えないの。ごめんなさいね。」

「知ってます。でも来ました。俺達に出来ることが何かあるんじゃないかって。会わせてもらえませんか?」

暫く考える時間があったが、ガチャッと玄関のドアが開いた。疲れた顔をした母親らしき人が俺達を見て、

「あまり刺激しないでね。」

藁にも縋りたかったのだろう。不安そうに言った。


部屋から出て来ないのだと言って瞳さんの部屋の前まで来るもやはり鍵がかかっていて開かない。

「瞳、お友達が来てくれてるの。開けて頂戴。」

返事はない。すると大貴が、

「おい!瞳!お前の置かれた状況を何とか出来るかもしれないぞ!騙されたと思って俺達を信じてみろ!」

と言ってドンドンとドアを叩き始めた。俺達も母親もギョッとして、

「おいおい…、大貴…止めろよ。女の子相手だぞ。もっと慎重に紳士っぽくやろうぜ。」

「止めてください!刺激しないように言ったじゃないですか!」

と皆で止めるも、大貴はドアを叩くのを止めない。

「ここで引き下がったらこいつはずっとこのままだぞ?せっかく高校入ったのに楽しい事もこれからなのに部屋に引きこもってどうするんだ!おい!瞳!俺達がやってみてダメだったら別の方法を考えてやる!だからここを開けろ!じゃないと何も出来ないぞ!お前が怖がっている”目“を何とかしてやる!」

勢い良くドアが開く。そこには目の下にくっきりと隈が出来、泣きつかれたのだろうボサボサの髪にひび割れた唇、充血した目の瞳さんがいた。

「私を信じてくれるの?何とか出来るの?助けてくれるの?」

もうとっくに限界を超えていたのだろう。俺達を見て母親を見てわあわあと声を上げ泣き出した。


俺は保身の為にこんなにも追い詰められていたクラスメイトを見て見ぬふりをしてたんだ…。罪悪感に襲われる。


「何が出来るかは分からない。でも助けになれるように皆で来た。」

ニカッと笑い大貴が言う。

やべぇ…、大貴の男前が上限突破してる。

「取りあえず、部屋に入ってもいいか?」

「でも…、部屋汚いし…。」

「そんなの分かってる。それどころじゃなかったんだろ?」

大貴の男前が…、以下略。

大貴がチラッと俺を見る。俺は頷き、瞳さんと部屋を見た。

瞳さんには教室で見た時よりもさらにグルグルに糸が巻き付いていた。部屋も悪意と恐怖で淀んでいた。

俺は取りあえず部屋に入り窓を開けた。窓のすぐ下に俺が折った鶴がいた。お疲れさんの気持ちを持って鶴を回収してから大きくかしわ手を打った。


パーン、パーン、パーン…。


かしわ手を打つたびに部屋の淀みが消えていく。3回目のかしわ手が終わり、その余韻も消えた所で瞳さんに向き直る。皆のお守りを作った時に一緒に作っていた人形を瞳さんの胸元へ押しつける。

「あ、…あ…あぁぁぁぁ…!!」

途端に瞳さんが震えだし人形を取ろうとするのを大貴と悠が止める。

「外せ!これを外せぇぇぇ!!」

泣き喚く瞳さんを見て母親が泣きながら、

「止めて!!何するの?!あんた達瞳から離れなさい!!」

母親を智輝と翔太が押さえる。

「警察呼ぶわよ!今すぐこの手を離しなさい!」

「おばさん、ごめんね。もう少し待って。」

翔太が申し訳なさそうに声をかけている内に、瞳さんの様子が変わってきた。

「何これ…。何したの?あいつがいなくなった…」

瞳さんの様子が変わったのを感じたのか、母親が

「瞳!あなた大丈夫なの?」

智輝と翔太が母親から手を離すと瞳さんへと駆け寄り抱き締める。大貴と悠も瞳さんから手を離し距離を取る。ひとしきり2人が落ち着くのを待つ間、俺は瞳さんへと絡み付いていた糸を辿るために和紙で鶴を折る。腹を膨らませるために息を吹き入れて掌に乗せるとスーと飛び立っていった。念の為もう1羽折り息を吹き入れる。

飛び立った鶴の行方を皆で見ていると

「あの…、娘に何をしたのでしょうか?」

瞳さんも

「何があったの?あいつが居なくなったんだけど…。あんなに纏わりついて離れなかったのにあいつの気配がしない。」

震えながら泣き出した。

「もちろんちゃんと話すよ。でももう少し落ち着いてからの方が良いだろう?俺達は外で待ってるから落ち着いたら声かけてよ。」 


…大貴の…以下略。



見知らぬ俺達だけでリビングで待つ訳にはいかないからと俺達は一旦玄関を出て外で2人が落ち着くのを待った。

「相変わらず奏多、すげぇな。」

「一発かよ…。」

「でもこれをどう説明するかが問題だぞ。」

「だよな。現状俺達女性を押さえつけたんだから警察呼ばれたら反論の余地はねえぞ…。」

「だよな…。最悪叔父さんの名前を出せば叔父さんが何とかしてくれるって言ってくれたんだ。

うちの神社、警察にも有名なんだ。説明のつかない事件とかどう考えてもオカルト案件な場合にうちの神社に依頼が来るから…。」

「……マジか…。ホントすげぇな…。」

「取りあえず俺に出来るのは真摯に説明する事位かな…。」

「でも奏多…お前、その力の事隠しておきたかったんだろ?」

「確かに…。でもこんな状態になってる人を見捨てるわけにはいかないよ…。」

「そんなにすごい力なのに隠したかったのか?」

「う〜ん…、やっぱり人と違うものを人は排除したがるじゃない?」

俺は何でもない事のように言うと、少し間があってから、

「奏多、今は多様性の時代だぜ。お前の力はすげぇ。人を助けた。それを排除しようとする奴は俺らが排除してやるから気にするな。」

「そうだぞ。何を言われてもお前のお陰で助かった奴がいる。それが事実だ。」


皆の気持ちが嬉しくて、笑ってしまった。


「ありがとう。」




 少ししてドアが開きおばさんに呼ばれた。リビングに案内されると先程よりも身なりを整えた瞳さんもいた。

「説明してもらう前に、お礼を言わせて。

本当にありがとう。私、もう怖くない。あんなに震えるぐらい怖かったのに…。私に何があったの?」

おばさんがお茶を出してくれて、

「私からもありがとう。こんなに落ち着いたこの子を見るのは久し振りで…。」

おばさんが再び泣き出す。

「でもやっぱり何があったのか、あなた達が何をしたのか教えて頂戴。」

「もちろんです。ただまだ分かってない事が多いので聞いた話や憶測も含みますのでそこはご理解下さい。瞳さんももしも事実と違っていたら教えて下さい。」

お2人の顔を見ながら理解を求めると2人とも頷いてくれた。

「今回の事、始まりは学校での肝試しだったのではないですか?そこで瞳さんは1人の女子生徒と諍いがあった。その後その女子生徒は学校に来なくなった。さらにその後瞳さんは誰かに見られているような恐怖を感じるようになってきた。」

瞳さんを見ると頷いた。

「合ってます。」

「1つお聞きしたい事があります。瞳さんは少し前、同じ中学だった綾さんと会って話したと思いますがその時何を思いましたか?」

「綾ちゃん?何で知ってるの?」

「綾は俺の彼女なんだ。」

「あぁ…、そう言えば言ってたかも…。あの時私あまり精神状態良くなくてあんまり覚えてないんだ。ただ幸せそうで羨ましいって思った。何で今綾ちゃんの話?」

瞳さんは心底不思議そうに答えてくれた。

やっぱり明確な悪意はなかったんだ。

「綾も君と同じ様に視線を感じてた。同じ様に恐怖で部屋に閉じこもるようになってた。そして綾に絡み付いていた糸を辿ってここに辿り着いたんだ。」

「えっ?待って!糸って何?絡み付いていたって何?どういう事?」

「君が感じていた恐怖。君にも糸が絡みついていた。」

瞳さんは心底分からなそうに、そして得体のしれない者を見るようにこちらを見る。

「信じなれないかもしれないが本当の事だ。その証拠に今君に絡まっていた糸を外した途端恐怖を感じなくなっただろう?」

「そうだけど…。確かにあいつの視線は感じなくなったけど…。」

途端にハッとしたように瞳さんが、

「待って…!そしたら綾ちゃんに糸を送ってたのが私だって事?!私綾ちゃん好きよ?!憎んだりなんてしてない!」

智輝がその言葉を聞いてホッとしたように緊張を解いた。

「そうです。瞳さんは綾さんを憎んだりしてない。でも綾さんに悪意の糸を送り込んでいたのも本当の事です。だから僕達はここに辿り着いた。」

智輝から会話を引き継いで俺が続ける。

「同じ様に瞳さんに悪意の糸を送り込んでいた人物にも悪意はないのかもしれません。」

ハッとしたように瞳さんが俺を見る。

「まさか…、あの子?響子ちゃん?」

「それはまだ分からないです。今瞳さんに絡まっていた糸を辿っている最中ですから。辿り着いた先に響子さんがいるのか違う人がいるのかはまだ分かりません。大切なのはその人物も瞳さんと同じく悪意がないかも知れないって事です。」

「悪意がなくてもあんな事が出来るの?」

「だって瞳さんにも悪意はなかったんでしょう?ただ自分が辛い時に綾さんが幸せそうで羨ましいなって思っただけでしょう?」

「そうだけど…」

と瞳さんは不本意そうに頷いた。

「問題となった根本は肝試しです。あそこには悪意や憎悪が吹き溜まっていた場所です。何かきっかけがあってきっとその人物もあなたも些細な感情を増幅されてしまったのかもしれない。羨ましいとか妬ましいとか…、普段は心の奥底にあって、自分でも自覚してないような感情。これをあそこの場で増幅されたのかも知れない。」

瞳さんが黙り込むと、今度は母親から

「それであなた達は何をしたの?」

「瞳さんに絡み付いていた糸をこの人形に移しました。身代わりですね。皆さんには見えてないかも知れませんが今この人形は糸が絡まってます。それこそ雁字搦めになる程に。」

「その紙が壊れたらどうなるの?」

顔を引きつらせた母親が問う。

「再び瞳さんに絡みつきます。」

「っそんな!!」

「だから近いうちにその人物の元へと行ってみます。その人形ならば物理的に破いたりしなければある程度保つでしょう。心配ならば確かな神社を紹介します。」

2人は迷う仕草を見せながら頷いてくれた。

「暫くは瞳さんの体力が落ちている事でしょうからゆっくり静養する事をおすすめですしますよ。

体力が戻って来た頃には全て解決してる事でしょう。また学校に来て下さいね。」

ニコッと笑いながら安心させるように言う。

瞳さんはホッとしたように、おばさんはハッとしたように、

「あの…今回のお代はどうしたら良いでしょうか?」

俺達はびっくりして、

「こちらが押しかけたのにお金なんて請求しません!!」

「むしろ乱暴な事をして警察呼ばれないかヒヤヒヤしてるよ!」

「お前が元気になってまた学校来たらそれでいいんじゃねぇか?」

「そうそう、今回の事は完全に俺達の興味本位から始まったことだからな!」

「だから瞳、お前ちゃんと体労ってまた学校来いよ!」


相変わらず大貴の男前が上限突破している…。

もしかしてこいつモテるんじゃねえ…?


2人に丁寧に見送られて俺達は瞳さん宅から帰った。

「なぁ奏多、今度はいつ行くんだ?」

「明日かな?きっと明日には辿り着いているはずだから。土曜日だしちょうど良い。」

すると皆目をキラキラさせながら

「明日どこで待ち合わせる?」

俺はびっくりして、

「明日も来るのか?」

「当たり前だろ!」

「また1人で行く気してたのか?」

「お前人見知りなのにどうやって家に入れてもらうんだよ…。」

「俺達に任せろ!また上手いこと入れてもらうから!」

「…危ないかもよ……?」

皆がキョトンとして、

「お守りがあるから大丈夫だよ!」

声を揃えて言われた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ