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愛こそ必要悪で正義 -sins-  作者: 社容尊悟
Ⅶ 人間と動物

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自己過信

 英夜は店長にみんなの前で責められて、項垂れた。

「でも……みんなの前で責めるのは良くないと思います」

「俺に口答えする気か? 新人の分際で! 恥を知れ!」

「あっ、す、すみません……」

「全く、そっちの方も教育ができていないみたいだな、君は。クビにされたいのか?」

 至極真っ当な意見を言われても、店長は聞く耳を持たなかった。

「そうやって怒鳴っていればいいと思ってんだろ、あんたは」

「は? 上司の俺に向かってタメ口か?」

「あんたなんか上司でも何でもない。うるさいおっさんだよ。偉そうにしてればみんながついてくるとか思ってる、歳寄り! 恥ずかしいのはあんたの方だ! クズ!」

 英夜は言いたい放題言って、店長を怒らせた。

「何だと、このクソガキが……!」

「ああ、辞めてやる! こんなクズのいるバイト先なんて、クソのゴミ溜めみたいなとこだ! ネットにも広めてやる! ここの店長はクズでどうしようもない人間だって! そうなったら困るのはあんただろ? どうだ、思い知れ俺の力を!」

 英夜は笑いながら、勝ち逃げをしていった。




 だが、英夜の書き込みはそれほどネット中に広まらなかった。

 影響力のある有名人の書き込みではなく、一般人の書き込みなのだ。

 憂さ晴らしに書いたのだろうというコメントもあった。

 当たっている、と英夜は心中で思った。

「カナーン……俺……って、たいしたことないのかな」

 隣で歩いているカナーンの甲羅を撫でて、英夜は話し続ける。

「俺にはもっと力があると思ってた。俺の言葉一つで、一気に味方を増やせるって。あのクソがいる店を潰せるって。でも……俺にはそんな力、ないんだな」

 ネットの人間は、スキャンダルや悪い噂には敏感なはずだ。

 だが、たった一人が何か言ったところで、どうにでもなるわけじゃない。

 世界は広い。

 英夜の持てる能力だけでは、足りないのだ。

 英夜は自分の力のなさを痛感した。

 力がないことがわかって、良かったのだ。

 このままそれを理解せずに人生を歩んでいけば、一生自分の力を過信して自惚れている、恥ずかしい人間になっていたから。

「……暫く、職探しだな……」

 英夜は分厚い電話帳のような本を取り出して、就きたい職を探す。

 できることは料理しかない。

 料亭にでも雇ってもらえれば、いいのだが。

「……遂にニートデビューか……」

 ハァと英夜はため息をつく。

 カナーンが鳴き声を披露した。

「カナーン……。わかってくれるのは、お前だけだよ」

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