リーダーが責任を取るのは当たり前
ホールでなら、後輩の面倒も見られる。
これが店長の器だと英夜は思っていた。
指揮しているのではなく、後輩ができないことを代わりにやっているだけなのに。
人のできないことをできるように伸ばせる教育力はないのだ。
全部代わりに引き受けてしまう、人を駄目にするタイプの人間。
だから彼は青い、青臭い人間なのだ。
「すみません、焦がしました!」
「……出汁できた! え……わ、わかった。俺が作るから! それ、捨てて」
後輩のミスも英夜がカバーして、何とか料理を出すことに成功した。
「……あ……」
「どうした?」
「……ミント添えるの、忘れてました……」
店長が訝しげな顔をして、見張っている。
「もう出してしまいましたか?」
「いやまだ残ってるけど。ミント添えればいいだけ? 他に忘れてることない? メニューの確認もよろしく」
英夜は後輩に言って、シャーベットにミントを添えた。
「お茶の用意ができていません」
「それは後からでもいいから」
「は、はい」
ホールはいつもバタバタしていて、慌ただしい。
ホール担当は、正社員登用を狙う人が多いので、毎回仕事が終わった後に店長からの評価を受けることになっている。
評価がA以上であれば、正社員になれる。
お得意様が去った後、店長が重々しい口を開いて評価を下す。
「Eだ」
「えっ……」
これには後輩が青ざめた。
チームワークをより必要とするホールでは、一人のミスがチームの足を引っ張ることになる。
もっと早く、もっと丁寧に提供することが鍵となる。
無駄な手間がかかり、スピーディにできていない。
何よりチームのリーダーである英夜もチームというものを理解していない。
代わりに何でもやればいいのではないと店長は言った。
「ですが、ここは……俺が代わりにやらないと、タイムロスします」
「そうだな。それがどうした。チームを組んだのは昨日今日の話ではないよな? え? それまでに教育できなかった君の責任だ。後輩にも最後まで一品を作らせる。できないことは君がやるんじゃない。最後まで作らせて、見守るのがリーダーだ。人を育てられない君は、今後チームのリーダーから降りてもらう。チャンスをやったが、君はこれまでみたいだからな」
店長の的確な意見に、英夜は言葉を失った。
英夜一人の責任となってしまったことに、後輩たちは異を唱えた。
「あ、あの。先輩は悪くないと思います……だって、私がミスをして……」
「ミスをしたのは君だけど、君はリーダーじゃない。リーダーが責任取るのは当たり前だよ。連帯責任はチームメンバー全員が同格だった場合にのみ適用される。チームメンバーの責任はリーダーの責任。本番でミスを連発するのは、教育がなっていないからだ」




