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愛こそ必要悪で正義 -sins-  作者: 社容尊悟
Ⅶ 人間と動物

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正しいのは自分だと勘違いしている男

 十中八九、おかしいと言われるに決まっていた。

 で、結局、アルバイト先でも断られた。

 店員も店長も英夜の言動に呆れを感じていた。

「……これが恋人?」

「はい。俺の恋人、亀のカナーンです。恋人なら、いても問題ないですよね」

「仕事の邪魔になるから、どっかにやっておけ」

「邪魔にはなりませんよ。カナーンはいい子ですから」

「常識を考えろよ、え? ここは厨房で、ホール。お客様にお出しする食事を作るところ。それなのに、常岡君、君は……。ペット持ち込み禁止だって言ってるのに」

「ですから恋人を」

「動物が嫌いなお客様だっているんだ! とっとと連れて帰れ、バカモン!」

 英夜は店長に怒鳴られ、目を瞑った。

「す、すみません……」

 英夜はカナーンを連れて帰り、家に置いていった。

 英夜には、カナーンが寂しがっているのが、手に取るようにわかった。

 カナーンも英夜と一緒にいたいと思っているとテレパシーで感じ取った。


「ごめん、カナーン。俺が店長になったら、別の部屋でもいいからペット持ち込み可にするからな。ちゃんと水槽も飼って、泳ぎやすくて住み心地のいい場所にするから」

 しかし英夜の行っているアルバイト先は、アルバイトの人間が店長にはなれない。

 店長は正社員なのだ。

 そんなことも知らずに、英夜は何でもうまくいくと勘違いしていた。

 カナーンは英夜の女神で、幸運を運んでくれると本気で信じていたのだ。

 アルバイト先に持って行けば、みんなが幸せになれるとも思っていたので、店長に怒られて半ば納得がいかなかった。

 英夜は機嫌を損ねていた。


「……カナーン。このまま、バイトサボっていいかな」

 英夜は床に寝転んで、カナーンに話しかける。

「だって、俺……あの店長嫌いだし。会いたくないんだよなあ。馬が合わないっていうか、何て言うか……。怒ってばっかりだし、俺の他にも嫌いな奴絶対いる」

 愚痴を零していると、段々とヒートアップしてくる。

 今までため込んでいたストレスを、恋人のカナーンに吐き出すのだ。

「あの店長。絶対高卒だよ。俺は大学も出て、こうやって一人暮らし頑張ってる。バイトだけど、ちゃんと自分で自分を養ってる。偉いよな? 俺は偉いって、カナーンもそう思うだろ。でも俺のこと馬鹿だって罵るんだ。今日もバカモンとかって言ってたし。何様だよあいつ。ちょっと立場が上だからって、調子に乗んなよな」

 英夜も人間らしく、文句を垂れたり愚痴を言ったりしたいのだ。

 愚痴を零せる友人がいないので、こうして独り言のように垂れ流している。

 誰だって、不満はある。

 英夜はそう思う。

「常識を考えろって言ったってさ、人によって常識が違うだろ? しかもあの言い方はない。店長の器がないと思うんだよなあ。あいつ、何で店長になれたんだろ。不思議だよな、カナーン。俺の方が店長に相応しいと思うんだけど」

 そんな願望を口にしても、実力的には店長が上なのだ。

 若いから気づかない、自分の欠点。

 英夜はそれに見向きもしなかった。

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