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愛こそ必要悪で正義 -sins-  作者: 社容尊悟
Ⅶ 人間と動物

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カナーンのために


 常岡英夜という男はまだまだ青い人間だ。

 勉学やスポーツに没頭するよりも、釣りが好きで動物が好きな一人暮らしの青年。

 他人のことよりもペットのことが気になる、ごく稀な人種だ。

 みんなが他人のことを気にかけていても、英夜はペットに餌をあげたり、散歩に連れていったりしていた。

 亀のカナーンが特に彼の気を引いていた。

「カナーン。今日はどこへ行こうか。カナーンは池が好き?」

 道端で言葉を解さないペットに話しかける姿は歪というか、おかしい。

 人には無関心だから、英夜は他人がどう思おうが関係ないのだ。

 カナーンと海水浴もし、デートには毎日出かけた。

 まともな仕事はしていない。

 厨房で料理を作るアルバイトで食い繋いでいるだけで、殆どの時間をカナーンと遊ぶ時間に費やしている。

 そんな駄目人間の英夜を見る目は、家族でもあまり好ましくないものだ。

 きちんと働いて金を稼いで、いい女性を見つけて家庭を持ち、立派な人間になって欲しいというのが親の理想。

 理想とは大きくかけ離れて、英夜はオタク傾向に走ってしまったのだ。

 親に反対されても、したいことをするのが英夜という男だ。

 カナーンのためならば、どんなことでもしたいと思っている。


「カナーン。世界で一番好きな俺のペット」

 カナーンの名前を呼ぶ度に、愛を感じるのだと彼は言った。

 ペットと言葉を交わすことはできないが、飼い主の愛情はわかってくれるのだろう。

 人間の言葉を理解できる動物もいるので、もしかしたら亀も人間の言葉を理解できる動物だったりして。

 そうだったらいいのにと英夜は語っていた。

 カナーンと愛の生活を続けていても、いずれ終わりが来る。


 一人暮らしでアルバイトをしているだけだと、自分の生活費が足りない。

 カナーンの餌代だけでも月に数万くらいはするのだ。

 出かけても金はかからないが、食事を与えていくと膨大な出費に悩まされる。

 そうして飼い主が困り果てると、ペットが捨てられるのだ。

 捨てられるペットも迷惑しているだろうが、処分する人間も迷惑している。

 飼うと決めたのなら、しっかり責任を持って世話をしないといけない。

 しかし英夜はペット命の男なので、そんな事態になっても、カナーンを捨てることはない。

 カナーンも英夜のことは大好きだろう。

 言葉を交わさないから、ストレスがたまらず、動物を好きになるのかもしれない。

 人間を好きになると、色々と不具合が生じてきて衝突もするだろう。

 英夜が人間に興味がなくなったのは、そのせいかもしれない。


「……ああ、バイトの時間になっちゃったよ、カナーン。バイト先ペット持ち込み禁止だって言われててさ。カナーンを連れて行きたいのは山々なんだけど……。ダメなんだってさ。酷いよなあ、店長」

 英夜はカナーンを天高く持ち上げて、同意を求める。

「……あ、そうだ」

 英夜はいいことを思いついた。

「ペットじゃなくて、恋人っていうことにすれば……問題ないんじゃ?」

 それは大問題だ。

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