懺悔日記の最後を飾ろう
「では、私と出会ったことは……いいことじゃなかったんですか?」
「……」
「私が貴方に恋したのは、間違いだったと、そう言いたいんですね?」
言葉の意味は通じなくても、ニュアンスは伝わっているのだろう。
少年は口をつぐんで、グーミーの顔をじっと見ていた。
「声が届かなくても、想いが通じなくても、私は貴方を好きになって良かったと思いますよ。人一人の命を救えて、満足しています。こんな私でも、できることがあるんですから」
涙こそ流さないものの、切ない想いをずっと抱え込んでいたグーミー。
決して許されない禁断の愛。
聞こえない、届かない想い。
想っていても、掻き消される声。
誤解を生じ、相手を怒らせてしまう。
「……説教? だったら、ごめんだよ……」
「どうか、生きてください。今は辛いでしょうが、これから先はきっといいことが待ち受けています。私が保証します。どうか、幸せになってください」
グーミーは少年の頬にキスをした。
少年は頬に手を当てて、びっくりしていた。
「……君……どうして……」
悲しげに微笑んで、グーミーは少年の目の前から完全に消え失せた。
天界からの追放と共に、魔界に連行され、悪魔になったのだ。
そこからのグーミーの悪魔生は熾烈を極めた。
過酷な試練に耐え、悪魔として生きながら天使に戻る方法を模索していた。
天使には戻れなかったが、堕天使としてならまた天界に置いてやってもいいという条件で、グーミーは天界に戻った。
待っていたのは、裏切り者への制裁。
それらを見かねた神が、グーミーを地上に落とし、修行させることにした。
そして修行を終えた暁には、天使に昇格し、皆に認められる天使になれる……ということだ。
せっかく天界に戻れたのに、また魔界に行くことになってもいいとアキヤは言う。
「私も人間みたいに恋愛をしてみたいんです。片想いではなく、両想いで」
「普通ではないですけどね……」
「どんな形であれ……愛はいいものなんですよ」
「そうですね。俺もそう思います。暁夜さんの好きになった少年、今どうしてますかね」
「きっと幸せになっていると思いますよ」
アキヤがそう信じていれば、少年は幸せになっているのだろう。
未だ天界の力を持っているアキヤには、その力がある。
人の幸せを祈る力が。
英夜はチャペルで待っていると言っていたので、アキヤは彼を置いていった。
自室に行き、最後の懺悔日記を記す。
今日が、懺悔日記の命日になる。
懺悔日記を書くのは、とても楽しかった。
だが、人の愛を書くのはこれで最後。
「私は……天使を卒業します」
万年筆を取り、紙に書き出した。




