天使が悪魔になる方法
第三者として顕現することは許されても、仲良くなることはご法度なのだ。
人間の心を理解して、良き方向に導く存在。
人間のような感情を持つことは許されない。
人間と同じことをするのも、許されない。
それなのに、グーミーは破ってしまった。
たった一人の傷だらけの少年のために、一度悪魔になったのだ。
その少年は火事で大火傷を負い、今にも死にかけていた少年だった。
瓦礫の下に埋もれていて、動けそうになかった。
「大丈夫。私が助けます……」
「……誰……?」
「私は天使。貴方の命を助けるために、天界から舞い降りてきました」
「……?」
天使の言葉が、人間にわかるはずはなかった。
「貴方の命、散らしはしない」
「……ありがとう」
わからないのに、感覚でわかるのか、少年は力ない笑顔を見せた。
だが、心はこもっていて、温かい。
その笑顔だけで、グーミーは人間の少年に心奪われたのだ。
たった一つ。
されど一つの笑顔で、グーミーの心は掻き乱された。
グーミーは少年が回復するまで、ずっと病院に通い続けて彼の看病をした。
一日でも早く治るようにと、祈った。
「……優しいね」
「……そんなことないですよ。私は貴方が好きだから」
「九死に一生を得たって、お医者さんが言ってたんだ。でも、俺はあのまま……死んでいても良かった。だって、もう……父さんたちは死んだから」
少年は窓の外にいるグーミーから顔を逸らし、肩を震わせた。
「……少年……」
「ごめん。君は悪くないのに、こんなことを言って」
「そんなことありません。私は貴方の家族を助けられなかった。既に死んでいる人間の命を救うことは、できないんです……。でも、貴方の家族の命は、天界にありますよ。貴方が生きていて良かったと言っています」
「……何言ってるのか、わかんないな……。多分、俺を助けて、後悔してるんだよな。ごめんな。死にたがりなんか助けて……」
「違います。私は……」
「……もうすぐ、自殺するからさ」
「やめてください……そんなこと、誰も望んでいません」
少年は下を向いて更なる弱音を吐く。
グーミーの声は一切聞こえない。
「だって、生きてたってしょうがないだろ? 家もない、家族もない……一人ぼっちだ……。生きてれば楽しいことがいっぱいあるなんて、そんなの嘘っぱちだ……。体は痛いわ、心は痛いわ、悪いことばっかりでいいことなんて一つもない……」
少年は涙ぐんで、腕で涙を拭った。
グーミーは少年の涙を拭こうと、手を伸ばした。




