いい話が聞きたい
遂に最後の一週間目が来た。
この教会とも日本ともお別れだ。
アキヤは今まで会った人々のことを思い出し、目を閉じて神像に祈る。
最後くらい、いい話が聞きたい。
禁断の愛で、後悔している人間にしか見えないこの教会に、そんないい話は転がり込んでこないと知りつつも、そう思うアキヤ。
「……長くても、短くてもいいので、いい話をどうか……」
この世のミステリーと人の禁断の愛が大好きなアキヤは、そう神に願った。
「最後は、嬉し涙で飾りたいのです」
アキヤの願いは、果たして届くのだろうか。
昼過ぎの微睡の中、客人は現れた。
今週は初めが女性で、最後が男性。
ニューハーフは真ん中とすると、ちょうど三人ずつにわかれていた。
「ごめんください」
「はい、ただいま」
沓と準のような偉そうな男性ではなく、物腰のいい男性が来た。
アキヤは歓喜している。
これはいい話が聞けるだろうと、アキヤは胸を高鳴らせた。
「懺悔できるって聞いたんですけど、話聞いてくれませんか?」
「はい。洗礼の儀式を受ければ、懺悔だけでなく、これからの人生、幸せなものになりますよ。貴方の人生は、どんなものだったか、洗礼の儀式の後にお話を聞きます」
アキヤはニコッと笑いかけて、丁寧に説明する。
「なるほど。そうなんですか。でも俺、今幸せなんで。話だけ聞いてもらってもいいですか?」
「え……。それなのに、見えるんですか?」
男性が照れ臭そうに笑って話す。
アキヤは今幸せな人間が来たことに驚いている。
これは神の悪戯か。
「何か、まずいことでも?」
「いいえ、そういうわけでは……。貴方が幸せで何よりです」
「……どうもです」
ペコッと頭を下げて、男性は軽く笑う。
「腰の低い男性とお話するのは初めてですね。貴方になら、先にお名前を聞いても良さそうです。私はアキヤ。ここの仮聖職者をしています」
「アキヤさん。俺は常岡英夜と言います。アキヤさんって、どう書くんですか?」
「ときおか……ひいよさんですか。……アキヤは、暁の夜と書きますよ」
「素敵な名前ですね。俺のことは、英夜って呼んでください」
「ひいよさん」
「はい」
「呼んでみただけですよ」
「……あ、はい。それで……俺の懺悔なんですけど」
「はい。何でしょうか……とその前に、椅子に座ってください」




