絶対の真理
アキヤは万年筆をペン回しのように回して、鼻の上に器用に乗せた。
「読み応えのない話でしたね。睡魔に襲われませんでした」
ふうとため息をついて、感想を述べる。
「先日はちょっぴり悲しいお話で、本日はちょっぴり切ないお話ですね。悲しいお話が続いていたので、私は安心しましたよ。禁断の愛と言っても、人が死ぬお話は聞いていてあまり心地のいいものではありません。みんなが救われて大団円になる話の方が、私は好きです。死んでしまった人はもう救いようがないですが、生きている人には救いの手を差し出しましょう。どうか、この先の人生が、実りある幸せな人生になりますように」
アキヤが今回、共感したのは、片名準ではなく、吾妻弐衣。
吾妻弐衣の容姿を想像しながら、アキヤは窓の外を見る。
「弐衣さん、ホントいい人でしたね。あの人は遊ばれてしまう人種ですけど、聖母のような方ですよ。本当に人間なのでしょうか? もしや、私の同類なのでは? 困っている時にしか現れないという点も、私の存在と似ていますし。いや、この教会のことですけれども」
アキヤは教会について触れる。
「この教会は、『罪を犯したと思っている人』にしか見えませんからね」
この教会が見える人間こそ、真に救われなければならない人間なのだ。
困っている人間にしか、見えない。
目に見えないものなのだ。
「さて、本日もお開きといたしましょうか」
アキヤは椅子を引いて、立ち上がる。
「愛こそ必要悪で正義。これは絶対の真理なのです」




