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愛こそ必要悪で正義 -sins-  作者: 社容尊悟
VI 既婚者と未婚者

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不倫した男


 もうすぐ一週間が経つ。

 アキヤはそろそろこの教会と別れなくてはならない。

 修行はこの日本だけで果たせるのではなく、世界中を飛び回ってありとあらゆる人の心を理解すること。

 神よりも理解を深められるようにならなければ、終わらない。

 長い旅路なのだ。

 今日もまた、男性がやって来た。

 アキヤの苦手な、強面の大男だ。

「懺悔しに来たのですか?」

「ああ……ちょっと、不倫をして」

「……いきなり核心に触れてきましたね。吐いちまったぜ、この男。何て素直な白状なんでしょう。言えと言う前に言われてしまいました」

「茶番はいい。さっさと終わらせたい」

「はあ……」

 アキヤはやりにくいと感じている。

 洗礼の儀式をささっと終わらせて、さっさと帰ってもらおうと考えた。

「今ここで汝の罪は洗い流されることになろう」

「終わりか。何だ、ものの数分もかからなかった。では失礼する」

 男性は身を翻して、アキヤの制止の声を振り切り、本当にさっさと帰ってしまった。


「な……なな、何て人でしょう……」

 これでは懺悔日記が書けない。

 困ったアキヤは、神と相談した。

「どうしましょう。このままでは……あの方の懺悔は終わりませんよ……。幸せにもなれません。クレーマーになってしまいます……」

 神の提案で、もう一度来てもらうことにした。

 アキヤも時間稼ぎや他愛もない会話をしたりすることなく、話を聞くことに集中。

「短いですね、もう終わりですか?」

「懺悔したいことだけを話せばいいのだろう」

「それだと、貴方の人物像がよく見えてこないんですが……まあいいでしょう。今日ももうすぐ終わってしまいますし、短く纏めることにします」

「では、私はこれで」

「はい。貴方に幸せが訪れますように」

 アキヤの祈りを無視して、男性はまたすぐに帰っていった。

「……はっ! あの方のお名前を聞くのを忘れていました!」

 何度も手間をかけさせて男性はカンカンに怒っていた。

 大事な取引先との話し合いがあるのに、そんなことで時間を取っていられるかと怒鳴られたが、名前を教えてくれた。

「もしやあの方は……」

 優しいのではないか、という疑問が生じる。

 神もそうだと言っていたので、アキヤはニコッと笑った。

「さて、準さんの懺悔日記を書きますか」

 かたなひとしという男の、ちょっぴり切ないラブストーリーを誰かに届ける。

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