不倫した男
もうすぐ一週間が経つ。
アキヤはそろそろこの教会と別れなくてはならない。
修行はこの日本だけで果たせるのではなく、世界中を飛び回ってありとあらゆる人の心を理解すること。
神よりも理解を深められるようにならなければ、終わらない。
長い旅路なのだ。
今日もまた、男性がやって来た。
アキヤの苦手な、強面の大男だ。
「懺悔しに来たのですか?」
「ああ……ちょっと、不倫をして」
「……いきなり核心に触れてきましたね。吐いちまったぜ、この男。何て素直な白状なんでしょう。言えと言う前に言われてしまいました」
「茶番はいい。さっさと終わらせたい」
「はあ……」
アキヤはやりにくいと感じている。
洗礼の儀式をささっと終わらせて、さっさと帰ってもらおうと考えた。
「今ここで汝の罪は洗い流されることになろう」
「終わりか。何だ、ものの数分もかからなかった。では失礼する」
男性は身を翻して、アキヤの制止の声を振り切り、本当にさっさと帰ってしまった。
「な……なな、何て人でしょう……」
これでは懺悔日記が書けない。
困ったアキヤは、神と相談した。
「どうしましょう。このままでは……あの方の懺悔は終わりませんよ……。幸せにもなれません。クレーマーになってしまいます……」
神の提案で、もう一度来てもらうことにした。
アキヤも時間稼ぎや他愛もない会話をしたりすることなく、話を聞くことに集中。
「短いですね、もう終わりですか?」
「懺悔したいことだけを話せばいいのだろう」
「それだと、貴方の人物像がよく見えてこないんですが……まあいいでしょう。今日ももうすぐ終わってしまいますし、短く纏めることにします」
「では、私はこれで」
「はい。貴方に幸せが訪れますように」
アキヤの祈りを無視して、男性はまたすぐに帰っていった。
「……はっ! あの方のお名前を聞くのを忘れていました!」
何度も手間をかけさせて男性はカンカンに怒っていた。
大事な取引先との話し合いがあるのに、そんなことで時間を取っていられるかと怒鳴られたが、名前を教えてくれた。
「もしやあの方は……」
優しいのではないか、という疑問が生じる。
神もそうだと言っていたので、アキヤはニコッと笑った。
「さて、準さんの懺悔日記を書きますか」
かたなひとしという男の、ちょっぴり切ないラブストーリーを誰かに届ける。




