愛を知ることは辛いこと
「どんな目だ?」
「わかんないの? にぶ!」
夕子に指摘されても、沓は今どんな顔をしているのか、わからなかった。
それから数週間ほど経って、夕子から携帯に連絡が入る。
別れようというメールだった。
メールの内容は『あんたが妹に向ける目は、あたしのものとは違う。明らかに異質なものだから。あたしのことは好きでも、あの子のことは愛してるなんでしょ? あたしにはそう見えた。違ってないはずよ』というもの。
夕子の勘は間違っていない。
女性は人の感情に敏感なのだろうか。
夕子と別れて、他の何人かの女性と付き合ったが、全てうまくいかなかった。
どうしても、沓の心には宮が寄り添っていて、離れようとしてくれない。
寝ぼけた沓が宮の布団に入り込んで、宮の唇に自分の唇を重ねようとした。
寸前で止まったのは、宮が目を覚ましたから。
「兄ちゃん……どうしたの。眠れないの……?」
「あ……いや、違う……」
覚醒した沓は戸惑って、宮の布団から出ていく。
純粋な宮の唇を奪おうとした、下心丸出しの自分に赤面した。
「いいよ。一緒に寝よ」
「……」
宮はぐっすり眠っていたが、いい匂いがする上、宮の柔らかい体が腕や背中に当たって沓は眠れなかった。
お陰で寝不足になる。
それから来る日も来る日も妹に夜這いをしかけて、夜を共に過ごした。
これは病気なのではないかと気づいても、もう遅かった。
沓は宮を求めて、宮も沓を求めるようになった。
「兄ちゃん……」
「宮……」
「もっと触って……もっと……」
「……」
「私は兄ちゃんが好き。大好き。母さん、父さんよりも好き……」
「俺もお前が……」
妹の布団で、二人して愛を囁くようになり、いつしかベッドは愛の巣になった。
こうなる前に、中毒症状に陥らないように、境界は引いておくべきだった。
どちらにとってもなくてはならない存在になって、離れるのが怖くなった。
「ずっとお前を守る。ずっと」
「うん。ずっと守って。私だけの王子様でいてね」
外出する際も、二人は一時も離れないようにした。
手洗いだけは男女で別のところに行かなければならなかったが、用を足しているその時間が惜しい。
誰から見ても気持ちの悪い仲になっていく。
だが、どうすることもできない。
好きで好きで、どうしようもないのだ。
こんな苦しい胸の痛みを、誰とも共有することができなくて、二人は孤独感に打ちひしがれた。
この悩みは、誰にも相談することができなかった。




