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愛こそ必要悪で正義 -sins-  作者: 社容尊悟
V 兄と妹

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愛を知ることは辛いこと

「どんな目だ?」

「わかんないの? にぶ!」

 夕子に指摘されても、沓は今どんな顔をしているのか、わからなかった。

 それから数週間ほど経って、夕子から携帯に連絡が入る。

 別れようというメールだった。

 メールの内容は『あんたが妹に向ける目は、あたしのものとは違う。明らかに異質なものだから。あたしのことは好きでも、あの子のことは愛してるなんでしょ? あたしにはそう見えた。違ってないはずよ』というもの。

 夕子の勘は間違っていない。

 女性は人の感情に敏感なのだろうか。

 夕子と別れて、他の何人かの女性と付き合ったが、全てうまくいかなかった。

 どうしても、沓の心には宮が寄り添っていて、離れようとしてくれない。

 寝ぼけた沓が宮の布団に入り込んで、宮の唇に自分の唇を重ねようとした。

 寸前で止まったのは、宮が目を覚ましたから。


「兄ちゃん……どうしたの。眠れないの……?」

「あ……いや、違う……」

 覚醒した沓は戸惑って、宮の布団から出ていく。

 純粋な宮の唇を奪おうとした、下心丸出しの自分に赤面した。

「いいよ。一緒に寝よ」

「……」

 宮はぐっすり眠っていたが、いい匂いがする上、宮の柔らかい体が腕や背中に当たって沓は眠れなかった。

 お陰で寝不足になる。

 それから来る日も来る日も妹に夜這いをしかけて、夜を共に過ごした。

 これは病気なのではないかと気づいても、もう遅かった。

 沓は宮を求めて、宮も沓を求めるようになった。

「兄ちゃん……」

「宮……」

「もっと触って……もっと……」

「……」

「私は兄ちゃんが好き。大好き。母さん、父さんよりも好き……」

「俺もお前が……」

 妹の布団で、二人して愛を囁くようになり、いつしかベッドは愛の巣になった。

 こうなる前に、中毒症状に陥らないように、境界は引いておくべきだった。

 どちらにとってもなくてはならない存在になって、離れるのが怖くなった。

「ずっとお前を守る。ずっと」

「うん。ずっと守って。私だけの王子様でいてね」

 外出する際も、二人は一時も離れないようにした。

 手洗いだけは男女で別のところに行かなければならなかったが、用を足しているその時間が惜しい。

 誰から見ても気持ちの悪い仲になっていく。

 だが、どうすることもできない。

 好きで好きで、どうしようもないのだ。

 こんな苦しい胸の痛みを、誰とも共有することができなくて、二人は孤独感に打ちひしがれた。

 この悩みは、誰にも相談することができなかった。

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