家族への性愛を忘れるために
何事もなく、平穏な日々が続く。
自らを鍛える中学生生活は終わりを告げ、高校生になった春のこと。
小さくて守らなければいけない存在だった宮が、色っぽく女性らしい体つきになっていて、沓は宮の裸を見たい衝動に駆られた。
「兄ちゃん、どうかした?」
「く……」
服の上からでもわかる豊満なバストとヒップに目を逸らせず、沓は思わず洗面台に駆け込んだ。
顔を洗って、自分の目を覚ますために。
妹を性的な目で見ることは今までも多々あったが、もうまともに顔を見られないほど欲求不満なのだ。
高校生にもなると、男子の性欲は頂点に達するようになる。
これは列記とした健康な男子の感情。相手が悪いだけだ。
他の女子には見向きもしないのに、何故妹の宮にはこんな感情が湧き出るのか。
近くで見てきた一人の女の子の成長を、目の当たりにしているからなのか。
不思議で堪らなかった。
妹に対する煩悩を取り払う、そうしなければ道を踏み外してしまいそうだと沓は思考する。
やましい気持ちがあると、家庭も円満でなくなるかもしれない。
兄妹の色恋沙汰など、正気の沙汰だからだ。
母親も父親も優しいが、驚くだろう。
そうなったら、一巻の終わりだ。
終わって欲しくない、この生活は。
この生活も守りたい。
だから、宮を愛する気持ちを忘れるように、他の女性と付き合うことにした。
気を紛らわせようと、特に好きでもない女子に廊下に呼び出して告白してみたりもした。
ふられても傷つかないし、寧ろ相手が傷ついているようだった。
「筑井君は、好きでもない子に……告白するの?」
「ただ誰かと付き合ってみたかっただけだ」
「サイテー。告白される方の身にもなってよ」
頬を引っ叩かれ、女子は逃げるように立ち去った。
あまり生徒が通らない廊下なので、幸い人に見られることはなかった。
「……」
叩かれたのが何故か、沓はわからなかった。
その後も沓は事あるごとに女子に告白して、宮の代わりになる女子を探した。
容姿端麗で豊満な肉体を持った、女性らしい子を見ては声をかける。
もちろん、みんなに断られた。
一人は沓の告白を断った理由を詳らかに説明してくれた。
「だって、あたし、あんたのこと知らないし」
これが決定的な理由。
「顔はいい方なんじゃない? でもいきなり告白されて、はい、いいですよなんて言えるかっての。女は馬鹿だと思ってるんでしょうけど、あたしらもホイホイついてくもんじゃないんだから。そこんとこ、履き違えないでよね」




