負けない男になる
他人とした約束を、沓は守り続けたのだ。
母親の教えに、他人とした約束を破ってもいいなんて言葉はなかった。
母親が大好きだから、沓は守り続けてしまったのだ。
自分の気持ちを押し殺してまで。
馬鹿正直に信じるから、誰の助けも借りられなくなる。
二人が中学生になると、沓と宮は別々の学校に行くことになった。
沓は地元の公立中学校へ、宮は男性教師のいない女子校の私立中学へ行った。
今までずっと一緒だった分、宮はかなり寂しそうにしていた。
「お兄ちゃん……」
「……ごめんな」
傍で守ることはできなくなってしまった。
入学早々、噂を聞いた男子たちが、沓の周りに集まってくる。
「お前の妹、女子校に通ってるんだよな、どんな顔?」
「お前に関係ないだろ」
「教えろよー」
「お前らみたいな奴が妹に近づいたら、妹が怖がる」
「何だよそれ……ああ、あれ?」
「シスコン! 妹を取られたくないからって、嘘ついてやがる」
「お前、中学生にもなってシスコンかよ! ハハハ! ウケる!」
「ちっ。軟弱な奴」
「んだと、コラ! シスコン野郎! キモいオタク!」
「何だと?」
沓が立ち上がって、男子の胸倉を掴んだ。
「おう、こえー。何だよ、喧嘩でもしようってのか?」
「誰がシスコンだ……。コンプレックスなんかじゃない……。俺はただ純粋に、あいつのことを想って……。お前らなんかに……俺の気持ちがわかるわけない」
「妹ラブなお前の気持ちなんかわかってもキモいだけだしな」
ハッと鼻で笑った男子生徒の顔を、グーで殴った。
「いってえ! 何しやがんだ、こいつっ」
掴み合いになって、喧嘩が勃発した。
喧嘩に巻き込まれたくない生徒たちは遠巻きに見ているだけで、誰かが止めに入ることはなかった。
また、沓は喧嘩で負けた。
顔を腫らして、制服のボタンも引き千切られてボロボロの負け犬の姿になった。
勉強ばかりができて、体は鍛えていないのだ。
それなのに、感情で突っ走って痛い目を何度も見てきた。
これでは妹の宮を守ることができない。
沓はもっと強くならなければならないと思った。
そして、沓は運動部に入って体を鍛えようと決意したのだ。
妹を守るため、屈強な大男になって奴らを見返す。
喧嘩にも負けない強い男になろう。




