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愛こそ必要悪で正義 -sins-  作者: 社容尊悟
V 兄と妹

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勘の鋭い母親




 小学生の間は学校に行くふりをして、こっそりと抜け出し秘密基地に行って二人で遊んだ。

 不登校が続いていたことは、両親にすぐにばれる。

 担任からの電話がかかってくるから。

 何があったのかと母親が聞いて叱りつけても、二人は口を固く結んで答えなかった。

 言ったら殺される、と沓は脅えていて、それを知らない宮は口にするのが嫌だっただけ。

「どうして教えてくれないの……。母さん、二人に何か悪いことした?」

「ううん、違う……約束だから」

「約束? 沓は誰と約束したの?」

「言えない。言ったらダメなんだ」

「その人が困ることでもあるってことね。わかった。言いたくなったら、教えて。いつでも聞くから。もっと母さんたちを頼ってくれないと、いる意味なくなっちゃうからね」

 二人をぎゅっと抱き締める。

 二人の体が強張っていたことを感づく母親。

「……? あなたたち、何か怖い目に遭ったんじゃない?」

「……何でそんなことがわかるの?」

「ほら。何かあったら、母さんにちゃんと言いなさい。僅かに、体が拒否反応を起こしてるの。昔ね、誰かに嫌なことされた時、抱きつかれるのを拒否したわ。それは多分だけど、悪い人に触れられたから。心ではいい人だとわかっていても、触れられるのを嫌がる。人の心って複雑だからね。よくわからないけど、あなたたちもそう感じてる」

 母親の手に、ビクッと肩を震わせて目を閉じる宮。


「……宮、可哀想に。こんなに脅えて。怖かったね、辛かったね。でも、もう大丈夫だよ。母さんたちがついてるから。……人間が怖いなら、着ぐるみでも着ようかな」

「着ぐるみ? どんな?」

「宮が大好きなお魚さんの着ぐるみ。ないなら、作ってみるわ」

 母親はニコッと笑って、宮の緊張を解した。

 宮を笑顔にできるのは、沓ではなく母親。

 母親は大好きだが、同時に負けたくないとも思ったのだ。

 沓の恋心は母親から妹へシフトチェンジした。

 誰にも感づかれないように、ひっそりと恋心を育てていく。

 勘の鋭い母親も、沓の宮への想いは最後まで気づかなかったらしい。


「沓、あなたは? そろそろ言いたくなったんじゃない?」

「おれ?」

「あなたも何か怖いことがあったんでしょう。話してみなさい」

「ダメだ。言ったら……ダメなんだ」

 拳を握り締めて、沓は言いたい気持ちを抑え込んだ。

「……やっぱり、機は熟さないとダメなのかしらね……。ごめんね、沓。無理させてしまって。母さん、悪いことした。あなたが言いたくなるまで、ちゃんと待つことにするから」

 母親は沓に謝って、宮を連れていった。

「……本当は」

 言いたい。

 けど、欲しい言葉を言ってもらっていないから、言えなかった。

 たまには、約束は破ってもいいんだよと、言って欲しかった。

 いつもはちゃんと守るようにするから、今日だけは破らせて欲しかったのに。

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