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愛こそ必要悪で正義 -sins-  作者: 社容尊悟
V 兄と妹

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芽生えた悪感情

「……」

 ズクン、と心臓の音が鳴った。

 嫌な、でも心地良い音だ。

 今までに感じたことのない悦楽をくれる、新たな門出を祝うような音。

 妹を傷つけられ、裸にされているのに、沓は興奮してしまった。

 母親に淡い恋心のようなものを抱いた時から、沓の近親への興味が深まっていたのだ。

 歪んだ愛情を持ってしまった。

 小学生なのに、こんな感情を抱いてしまった沓は唇を噛んで、妹を奪還するために一人の男と戦った。

 結局は負けて、大怪我を負うことになったが、男に殺されることはなかった。


「金ならいくらでもやる。だが、このことを誰かに言ったら殺す……! 見つけ出して、必ず殺してやる。あの女にも喋ったら、絶対に殺す。俺の趣味は、誰にも邪魔させない……俺だけのカワイコちゃんへのご褒美だ。ひゃははは」

 沓はその男のことを狂っているとは馬鹿にできなかった。

 妹に並々ならぬ煩わしい想いを抱いてしまったからだ。

 自分も異常であることに気づいている。

 気持ちが悪いのも、気づいていた。

 動けるようになるまで、数時間はかかった。

 宮に自分の服を着せる。

 まだ傷が痛むが、沓は宮をおぶっていく。

 部屋を出ると、担任の他の家族、恐らく双子の姉に心配された。


「どうしたの、その怪我……!」

 沓は白々しいと思った。

「滑って転んで」

「でもその傷は……」

 明らかに嘘だとわかる言い訳をされて、その人は眉尻を下げて沓たちを心配した。

「わかったわ。何があったか、言いたくないんだね。こっちへ来て。治療しましょう」

 優しくされても、沓は警戒した。

 さっきの男のように、外面は優しいだけかもしれない。

 ぐずぐずしている沓を見て、痺れを切らした担任の姉は、沓に言った。

「なら、私が行ってあげる。救急箱と包帯を持って。手当しましょう」

 担任の姉は宣言通り救急箱と包帯を持って、沓を縁側に座らせた。

「ちょうどあなたぐらいの歳かな。私の妹もね、こうやってよく怪我してたものよ。その度に包帯巻いたり、傷の消毒したり。毎日のように傷作って。もう大変だった」

「へえ」

 毎日していたとあって、包帯を巻くのは上手で手際が良かった。

「消毒しないと、傷が化膿することもあるから、気を付けるんだよ。黴菌がいっぱい入っちゃったら、病院行かないといけないからね」

「……うん」

「はい、できた! 次は妹さんね。あら、服が……」

「……お、おれが無理やり……」

「ダメ。そんなことで、嘘つかなくていいんだよ。深くは聞いて欲しくないんでしょう? だったら聞かないから。でもどうしても言いたくなったら、嘘じゃなくて本当のことを言わないとね。嘘吐きは泥棒の始まりってね。私みたいな人には言わなくていいよ。あなたが信じられる大事な人に言ったらいいから」

 担任の姉は微笑んで、沓に嘘をつかせないように口を閉ざさせた。

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