罠にかかる宮
「えへへ。そうでしょ! 宮はいい子なんだよ」
「いい子のクちゃんには、ご褒美が必要だね。おじさんと一緒にいいものを見に行こう」
男の方が宮をどこかへ連れていった。
女は手を振って、沓を見張っているからと言った。
「見張る?」
「何? もしかして……意味がわかるって言うの? あんた」
「何でおれを見張る必要があるんだ」
「ここは迷うし、みんな怪我しちゃうから見張っておかないとだめでしょう」
有無を言わせぬきつい口調で、女は言った。
「……」
女は二人がどこへ行ったか教えた。
「独房よ」
「独房って……それは受刑者を入れておく牢屋のことだろ」
「そんなことも知ってるの。最近の小学生は頭いいわねえ~」
「何で宮がそんなところに入れられるんだ」
「いい子にはご褒美が待ってるんだって。あの人、あたしのダンナ。妹ちゃんのこと、気に入ったみたい。これからいいことするつもりよ」
「いいことって」
「さあ? 好きな服着てもらうとか? そこらへんはよく知らない」
沓は女に二人の行き先を詳しく聞き出した。
初めて来た場所で右も左もわからないのに、聞いてだけで全部理解できたのだ。
驚異の空間把握能力に、女は唖然とした。
「……あんた、凄いんだね。信じらんないよ」
「別に凄くない」
沓の頭の回転の速さは、英才教育の賜物だった。両親のお陰だ。
沓は家の中を歩き、迷わずに独房と言われた部屋に辿り着いた。
色々な人と出くわしたが、声をかけられることなく、目的地まで一直線。
歩いてきた道は直線ではなかった。
独房と言われてもわからない、格子戸の部屋だった。
沓は鉄格子だと思っていた。
「宮……無事でいろよ」
沓が戸を開けようとしても、びくともしない。
がっちりと鍵がかかっている。
耳を押し当てても、声は聞こえない。
沓の耳は音一つ受信しない。
「……」
何をしているのか、わからずじまい。
沓はどうにかして戸を開けようと、戸ごと壊す道具を探した。
これだけたくさんのものが飾ってあるのだ。
どれか一つくらい戸を壊せる道具はあるはずだ。
そして沓はスコップを見つけて、格子戸をぶち壊して中に入った。
「宮!」
「……! 見張ってるって言ったくせによ、あの女……」
畳で横たわる宮が、目を閉じてぐったりと眠っていた。
涙の痕が見える。
薬か何かを注射されて、無理やり眠らされたのだろう。
服を脱がされ、裸に剥かれ、カッターナイフで切りつけられている。
血痕が、畳につく。
沓は同じ年頃の女子の裸を、初めて目の当たりにした。




