めんどくさいのは、どっち?
人をなでなでできて、宮は満足した様子。
「先生、偉い偉い。この調子で、みんなをなでなでするんだ! えっへん」
「小さい子に撫でられるのって、何だか変な気分……。ちょっと自分が情けなく思える……かも」
「すいません」
沓は宮の兄として、代わりに謝った。
担任は苦笑いをして、手を振った。
「いいのよ……お兄ちゃんも大変ね」
「いやそんなことは」
「ちょっとぐらい愚痴ったりしても、罰は当たらないもんだからね。先生も、姉にもよく愚痴られてたなあ。手のかかる妹だったって、散々言われてきたし」
「……へえ」
「何の話!? 宮を仲間外れにしたら、怒るよ!」
宮が割って入ってきて、二人の会話を中断させた。
「宮がめんどいって」
「ぷぷっ」
何が面白かったのか、沓の発言に、担任は吹き出した。
宮は沓の見解に不服を申し立てる。
響く声で、じたばたと暴れる。
「ええ~! 宮はめんどくさくなんか、ないもん! いい子だって、お母さんも言ってたし、お兄ちゃんの方がめんどくさいよ! だって、しゃべんないし、人に気をつかわせるタイプの子だもん! 宮の方がいい子!」
「あまり騒ぐな」
「むう……」
「いいよ、気にしないで。二人が来ることは、もう言ってあるから」
担任は二人を宥めて、石段の上を歩いていく。
沓と宮も後に続いて、担任の家をよく見渡していい家だと感じていた。
緑が茂っていて、日本の文化を象徴するような家。
経緯は多少手荒だったが、また来たいと二人に思わせていた。
担任は二人を客間に残してから、他の家族と話し合っていた。
「ちょっとお菓子取ってくるね。二人のこと、お願い」
「わかったわ」
「了解」
大家族の内の二人が、客間で沓と宮の相手をすることになった。
四人のいる空間に、侘しい沈黙が訪れた。
二人は何か話そうとする気配もない。
沈黙が苦手ではない沓ですら、耐えかねる重苦しく息苦しい空気だ。
蛇に睨まれた蛙のような気分だった。
「……」
「どうしたの、お兄ちゃん」
「知らない人と話すのか……」
「大丈夫だよ、心配ないから。だって、先生の家族だもん。みんな、いい人だよ」
「そうだよ、よくわかってるね、妹ちゃんは。いい子だね」
女の方がそれに反応して、宮を褒めて遣わした。




