お金でなんでも解決できるのか?
「これが……一万円……! 凄い……。手が臭くなったよ、お兄ちゃん。お金の臭いがする。玩具のお金じゃないよ、本物だよ! ありがとう、先生! 大事に使うね」
「い、いいのか、こんなにもらって……」
「いいよ。遠慮しないで」
「ちょっと……じゃないのか」
「ん? ちょっとだよ?」
担任は小首を傾げて、沓の呟きに反応した。
この家に住んでいるのだ。
金銭感覚が狂っていても、何らおかしくはない。
故にこの家の人間は、金さえあれば何でも解決できると思っているきらいがあった。
どれだけ金を積もうが、重い犯罪は消せないのだが。
担任は家の門を開けて、二人を招き入れた。
庭園や鹿おどしといった定番のもの。
招き猫や信楽のたぬき。
他にも見覚えのあるものがたくさん。
それらは全て日本のもので、丁寧に飾られていた。
「これはねえ、日本家屋っていうんだけど」
「日本カオク?」
「まだわからないか。筑井さん……宮ちゃんと呼ぼうかな。呼んでもいい?」
「うん! いいよ。先生にも宮って呼んで欲しい!」
「ありがと。宮ちゃんの家もね、古くから続く、由緒正しいお家なんだよ。先生のお家と同じではないけど、家紋というのが家に飾られているはず。いいお家に住めて、良かったね。お父さんもお母さんも、優しい?」
「うん! すっごく、優しいよ! お兄ちゃんもね、宮の面倒見てくれるんだよ。お勉強とか、宮よりもできて凄いんだよ。宮も追いつきたくて、頑張ってるんだ!」
宮は自分のことを話すように嬉しそうに、家族のことを誇らしげに話す。
「そう……宮ちゃんは沓くんに追いつきたいんだね。頑張ってね、先生応援してるからね。先生にもいい家族がいっぱいいるから、そういう話は嬉しいな」
「許可もらってない」
「あはは……筑井くんの方がいい?」
沓がこくりと頷くと、担任は言う通りに沓のことは筑井くんと呼んだ。
「宮ちゃんと筑井くんはあんまり似てないね」
「それ、何十回も聞いたよ」
「先生、そんなに言ってた? 今日が初めてな気がするんだけど」
「昔にいっぱい言われたの! みんなしてお兄ちゃんと宮のこと、からかうんだよ。似てない、似てないって。ひどいよ。似てなくても、兄妹だもん」
ぶすっと膨れっ面になって、宮は不機嫌になった。
担任の心無い一言で、昔を思い出してもやもやした気持ちを感じているのだろう。
「ごめんね。そんなつもりはなかったんだけど、悪いこと言ってしまって」
「いいよ、先生は。ちゃんと謝ったし、許してあげるから!」
母親によくされていたように、宮は担任の頭を撫でようとしていた。
身長差で担任の頭まで手が届かなかった。
なので、担任にしゃがむようにと宮はお願いした。




