担任からお小遣いをもらってしまう築井兄妹
「何かあった?」
「今日はお父さんが出張で家にいないから、お母さんが一人なの。きっと、寂しいって思ってる……だから、早く帰らないと。お母さん、一人ぼっちだよ」
「そっかあ……じゃあ、もっと早く切り上げれば大丈夫だね」
担任は異論を認めない。
二人の意見を聞いているふりをして、自分の意見を突き通す。
やめるという選択肢はなかったのだ。
あまりに強情な担任の意志に、二人は従わざるを得なかった。
だが、この担任が悪いのではない。
担任の身内が悪いのだ。
担任は言われたからやっていただけで、ほぼ無実の罪を着せられたに等しい。
犯罪の片棒を担がされていたのだ。自身の家族に。
少しばかり度が過ぎるフランクさだが、担任はただ、二人と仲良くなりたいだけだったのだと後になってわかることになる。
「強引だ……」
「それだけ会って欲しいんだよ」
「……めちゃくちゃなんだ、何もかも」
授業が終わって、放課後。
担任は二人に声をかけた。
「一緒に帰ろう! 先生のお家に行こうね。お菓子たくさんあるから、好きなだけ食べていいよ。でもお夕飯食べられるようにね」
担任はニコッと笑いかけて、二人を連れて家に行った。
担任の家は馬鹿でかい大きさの屋敷みたいな家だった。
沓も宮も大口開けて硬直している。
開いた口が塞がらないとはこのことかと沓は思っていた。
「でかい……」
「宮のお家よりもおっきい……。先生、お金持ちなんだね」
「そうなんだろうね。先生はね、旧家で育ったんだよ」
「キューカって何?」
「長く続いてきた家のことでね、先生の家は……一五〇年……それ以上かもしれない。それほどずっと本家のままで、誰も分家しなかったのね。だから先生の家族はいっぱいいるんだよね。みんな、ここに住んでいるの。毎日、賑やかで楽しいよ」
担任の説明を聞いて、宮は目をキラキラと輝かせた。
ビジョンが見えてきたのだろう。
「ほんと、楽しそう! 宮もここに住んでみたいなあ……お友達たくさんできるかも! そしたらお小遣いもたくさんもらえるし……欲しいものいっぱい買える!」
「友達に小遣いはもらえないぞ」
「まあまあ。せっかく来てくれたし、お小遣い、ちょっとだけあげるね。奮発しちゃおうかなー。二人共、手を出して」
担任は財布を取り出して、二人に言った。
「わあい! お小遣い!」
「ども」
沓は控えめに、宮は遠慮なく手を出して施しを受ける。
担任が出したのは札。
建物の模様があるコインではなく、偉人が印刷された札だった。




